第一次偶像戦争 【516】 [我那覇響]
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第一次偶像戦争 【516】 [我那覇響]

2019-09-20 22:55

     「コハル。おはよう。」
    うん。いつもと同じ声。
     「あ……おはようございます~。」
    うん。いつもと同じコハル。
     「朝食どうする?
      希望が無ければフレンチトーストでも作るけど。」
    コハルはまだちょっと頭をゆらゆらさせていて。
    予定さえなければまだ寝てる時間だから仕方ないか。……夜も起きてたんだし。
     「フレンチトーストで大丈夫です~。
      ありがとうございます~。」
    会話は成り立ってるけど、瞳はまだトロンとしてるし
    相変わらず頭はふわふわと泳いでいた。
     「眠いなら先にお風呂に入ってくるか?」
     「あ~……そうですね~。
      先に入ってきます~。」
    コハルはそのまま滑り台の様にヒョウの背中から降りると
    パジャマを直し、自分に一礼した後、崖の方へと向かっていった。
    夜に何をしていたか、コハルの方から言ってくれるかな……?
    離れていく背中を眺めても、コハルは振り返らない。
    そのまま崖の端まで来たところで、コハルは真っ白いバスタブを呼び出し
    お湯を入れ、パジャマを脱ぎ始めた。
    むぅ……。
    コハルがダメならヒョウの方は。
    頭のある林の方へと移動し、ヒョウの顔を横から覗き込むも
    ヒョウは瞳を閉じたまま降り注ぐ朝の光を気持ちよさそうに受け止めているだけで。
    ……むむ~……。
    …………
    ……やっぱり気になるぞ。
    何をやったかだけじゃなく
    何で自分に話さないのかも加わったから、気になる度が一気に倍になった。
    これからガチの殺し合いをするっていうのに、こんなのを残しておいていいもの?
    ……やっぱちょっと良くないよね……。
    ……別にアイツを自分より強いとは思ってないけど
    ナメた状態で勝てる相手じゃない事も確か。
    ……だから次は本気で行く。ちゃんと自分の戦い方をする。
    今まではずっと初日の延長に近い戦い方だった。それしか見せて無いし
    麗華相手だと頭に血が上るのが先で、それしか出来ないと思わせてる。
    でも本当は違う。ちゃんと考えてた。
    ここはこうすれば良いんじゃないかとか
    こういう時はあのスペルをとか、ずっと考えながらやってた。
    麗華の動きだってずっと見てたから、何となく次の行動が読める様になってる。
    初日の様にはいかない。もう上手く乗せられて冷静さを失う事なんて無い。
    それに、もうそろそろ時期が悪くなってくる。
    今のところ他からどうのこうのはないけど
    再来週辺りからは絶対に動きが出てくる筈。
    麗華との決着をつけるチャンスはもう数えるぐらいしかない。
    麗華はあと一回か二回ぐらいは猶予があると思ってるだろうな。
    そこを今日!……でも、油断してるところをなんて趣味じゃ無いから
    ちゃんと戦う前に今日こそ殺すって宣言してやるぞ。
    そこまでやったんなら、もう不意打ちじゃ無いよね。
    そんでもって、本気で捕縛スペルを使うまでやる気だとも
    逃げたらずっと負け犬だと言ってやるとも言ってやるぞ。
    逃げも言い訳もさせない状態で勝つ。
    絶対に!
    絶対に勝つ!
    …………
    ……始まっちゃえば何とかなるかな?コハルが何やったかとか知らなくても。
    ……う~ん、ならあえて全部終わった後に話してっていう風にするのがいい?
    …………
    ……始まっちゃえば……戦いの事を考えてれば……。
    ……ただ、麗華の所へ行くまで結構時間かかるんだよね……。
    気になることがあると寝る事も出来ないし……。
    う~ん……。
    ……やっぱり聞こう。ただ深くは聞かない。内緒なら内緒でいい。
    ……と割り切る。無理矢理。何とかして。
    何とか……。
    ……何とか……。
    ……どうやって?
    …………
    ……とりあえずフレンチトーストを作らないと……。
    林の方に歩き出そうとした時、ヒョウの瞳が開いて
    その視線が自分に向いている事に気がついた。
    寝ている姿勢はそのままのヒョウと、じっと目が合う。
     「……何?」
    自分がそう言うと、ヒョウはまた瞼を閉じてしまう。
    そのまま睨みつけてもヒョウは自分に気付いていないか
    まるでそこに居ない様に様に無反応で。
    10秒ぐらい睨み続けた後、自分は地面を踏みつけるようにして林の中に入る。
    何だあれ!本当に何なんだ!
    自分が別の事考えてる時は自分の方を見てたのに
    こっちから聞いてみたら無反応とか失礼だぞ!
    こうなったら、閉じた瞼を両手で掴んで無理矢理開けて
    今し方思った事を耳の傍で叫んでやるぞ!
    そう思って。そう想像して。
    けど、想像の中のヒョウはそれでも無反応だった。多分実際にやっても同じだと思う。
    …………
    ……
    うぎゃー!もうホント何なんだ!
    コハルもヒョウも、自分をどうしたいんだ!?
    ちゃんと言ってくれないと分からないぞ!
    自分の中で膨らむ圧と熱。ヒョウが無視した事で出口を塞がれてしまい
    加速度的に感情が反応しちゃってる。
    踏みつけるような足取りは酷くなるも、もう目的の場所まで着いてしまって。
    林の中に作った炊事場。そこに着いた所で後ろをふり返ってみる。
    木々の向こうに見えるヒョウはそのまま。コハルの姿は隠れて見えなかった。
    …………
    ……
    ……とにかくフレンチトーストを焼こう。
    なんか物凄い大きな肉を食べたいけど、フレンチトーストは焼こう。
    …………
    ……やる。やれる。決着をつける。今日。これから。
    ちゃんとそこは忘れてない。
    一番大事な事は、ちゃんと分かってる。

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