第一次偶像戦争 【530】 [東豪寺麗華]
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第一次偶像戦争 【530】 [東豪寺麗華]

2019-10-18 22:22

    それはあまりにも唐突で
    それは全く想像もしてなくて
    だからか、その場にいた全員が固まっていた
    私と四条貴音は元より
    こちらに向かっていた伊織も
    私を攻撃してきていた星井美希も、攻撃の手を止めていた
     「お久しぶりです。
      お元気でしたか?」
    殺し合いの最中、淡々と続けられる言葉
    そしてその対象は
    その瞳が映している者は
     「……何で来たの?」
    怒りや悔しさはもうなかった
    今あるのはなんだろう?
    絶望な様で
    それよりももっと無味乾燥な
    これが虚無だろうか
     「あれ?来てはいけませんでしたか?」
    薄い紫の紫陽花色をした跳ねっ毛が揺れる
    あざとさに満ちた困った表情が浮かぶ

    魔力が
    あの馬鹿の魔力が
     「ッ……。」
    もう声が出せる様に
    追い打ちを
    四条貴音の体が離れた今、短勁型の空鳴拳で

    拳に纏わりついて
    でもこの状況
    私の精神に潜ってる暇は
     「動いた方を殺すと言ったら……止めてくれます?」
    静かに
    そして芯まで凍り付かせる言葉
     「はい。それじゃあお話をしましょうか。
      さっきの質問も答えないといけませんし。」
    お話
    ……お話……
    …………
    ……
     「どうしました?
      あぁ、戦闘をしないのであれば動いても構いませんよ。」
    優しい言葉。きっと微笑みも添えられてる
    ……私は……
    ……私の求めた力は……
    私が強くなろうとしたのは
    拳に纏わり付いてた黒が引く
    戦わない?
    戦えない?
    私は……
    戦闘状態の張り詰めた魔力のまま、私は拳を引く
    息を吐いて
    息を吸って
    心を決めた後、今もなお感じる虚無を見据える
    ほらやっぱり
    微笑んでる
    沸く
    見た瞬間に火は灯り
    理解した瞬間に、煮え、溢れていた
    魔力
    【色】
    【四色】から
    もっと
     「麗華ぁああああああああ!!!!!!」
    後ろ
    ああもう
    本当にこの馬鹿は
     「響さんごきげんよう。
      申し訳ありませんが、少し黙っていてくれませんか?」
    崩さぬ表情。そしてさっきよりも強い言葉
     「うるさい!大体なんでサチコが来てるんだ!
      これは自分と麗華の戦いだぞ!」
    もう半分以上魔力を失ってるのに肉体が戻っただけでこの有様
    別に肉体が戻ろうが、また潰す事に問題はないけど
    この大きさを考えない声と
    全く持ってどうでもいいし意味もない言葉を聞かないといけないのは面倒この上ない
     「もう結着はついてましたよね?
      それに他の方々も介入してきている様ですが。」
    ちらりと私を見てきて。
    ……明らかにさっき私はサチコちゃんに敵意を向けた
    それなのにその事を全く意に介していないのはどういうことだろう?
    私と四条貴音には戦うなと圧力をかけてきたのに
     「ついてない!
      それに貴音は勝手にやってきたんだ!
      自分とは何にも関係ないぞ!」
    実質守られておいてこの言いよう
    もう全員が去って、私とこの馬鹿だけになった後、決着をつけたとしても
    絶対に納得しない。させられない
    重い布が上から覆いかぶさってきたように
    自分の中の感情が肩に、全身に重しをかけてくる
    ほんのついさっきまであって、私を支配していた感情は
    もう何もなかったかの様に消え去っていた
    今はあの馬鹿が生み出した陰鬱な重さと……
     「……ボクがやっても?」
    目が合う
    そして私への問い
    私への
     「……どうぞ。」
    微笑み。私に
    四条貴音の黒が疼く
    それを押さえ込む様に、私の魔力と意思が四条貴音の方へと向けられる
     「ぎッ……ぁあアああああああああああ!!」
    一瞬の膠着。その直後の叫び
    その声に反応して、四条貴音の黒がサチコちゃんの方へと動く
    まぁ、させないけど
    黒と共にサチコちゃんへ襲いかかろうとしていた体を遮るように入る回し蹴り
    両腕があれば殴りつけられるのに、もどかしい
    まぁ、思いきり顔面に入ったし
    保留していた【Putrefy】も使えたからよしとしましょう
     「その手も治しましょうか?」
    迫り来る星井美希の銃弾を軽く手で受けながらサチコちゃんはそう言って
     「いいわ。自分でやるから。」
    多分、あと少しで左手は解呪できる。
     「分かりました。それでは。」
    先に発動した【Terror】と同時にサチコちゃんが描いていた魔法陣が完成する
    こんな強いスペルを、この速度で二つも……
    ……やはりこの子はバケモノ。でも、気になってるのはそこじゃない
    さっから……いや、最初から、サチコちゃんの言葉は私にだけ向けられていた
    流石に警告は違うけれども、それ以外は四条貴音も含めての私達ではなく
    私だけを狙いすまし、言葉を投げてきていた
    視線に宿る光の有無が露骨すぎた。私以外には本当に興味の光が見えなかった
    どうしてだろうか
    私の疑問をよそに、発動する【Cruel Ultimatum
    それに合わせる様に、飛んできていた銃弾の方向から星井美希の魔力の塊が現れ
    反対側で止まっていた伊織も動き出す
    星井美希の方は明らかに邪魔をしに来てるのにサチコちゃんは意に介さず
    Cruel Ultimatum】の魔方陣からうまれた黒い球体を見て、満足そうに微笑んだ
    サチコちゃんの生み出した黒い塊は地面に落ちると
    花が咲くように割れ、鋭く長い指先を広げる
    影のように地面を這う指先は馬鹿だけじゃなく四条貴音のにもその鋭い爪を向け
    足元から肌の上をのぼり、その全身を黒く染めていく
     「捕縛スペルだけでも麗華さんがやります?」
    テレポートを使った多角的な銃弾の攻撃もサチコちゃんは難なく受け止める
     「遠慮しておくわ。最後までどうぞ。」
    私も、私に向けても飛んでくるようになった銃弾を躱しながら答えて。
    伊織ともやりあってるし、外野がどんどん騒がしくなってきた
     「……本当にいいんです?
      ヤケになってたりしてません?」
    サチコちゃんの顔にあざとい笑みとかは全くなくて。
     「私が捕縛したら全部に納得する様な相手だったらよかったんだけどね。」
    まぁ、結局半分以上削ったものの、そっから先はサチコちゃんな訳だし
    今はもうこの馬鹿でなくても物言いがつく状況
     「……いいんですね?」
     「……ええ。」
    もう相手にしたくないし、それに……
    視線。瞳
    真摯な色。真っ直ぐな光
    ……本当になんだろう?
    何なんだろう?

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