第一次偶像戦争 【554】 [水瀬伊織]
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第一次偶像戦争 【554】 [水瀬伊織]

2019-12-06 22:22

    どうでもいい日高舞とサチコとの会話と、強者同士が面と向かっているという緊張感。
    貴音と美希からも目が離せないし、その裏で起こっているミチルの動向にも
    注視しなければならない。
    面倒な様で、そこまで手間でも無いけれども
    私が実際に動いている訳でも無いから、妙なストレスが積み上がっていく。
    ……正確には『動いてる訳でもない』じゃなくて『動けない』ね。
    片方は力で無理矢理、もう片方は自分の意思で任せると言ったから。
    そんな状況で、私の中に別種のストレスが同時に蓄積されていってる。
    ……ストレスねぇ……。
    ……私の目の前で起こってる事はまだしも、ミチルの方は何というか
    もどかしいというか……授業参観に来てる親ってこんな気持ちかしら?
    ……もう想像するしか無いわよね。そういうイベントって。
    これから先の私の人生では、もうほぼ確実に起こらないでしょうし
    もう過ぎ去ってしまった私が子供側の時にも起こらなかったんだから。
    ……で今の気持ちは……。
    ……残念かな?
    だってもう時間が無くなってしまったもの。授業参観はどうでもいいけど。
     (麗華達に言っちゃうけどいいかしら?)
    あえてギリギリというポイントを共通認識として定義しなかった。
    ミヤコがどこまでなら間に合うと考えているかを試したかったし
    どう動くかも見てみたかった。
    結果は今の所、努力はしたという感じ。
    自ら直接ミチルの前に出る様な事をしなかったのはリスクが大きいと見たせいかしら?
    確かに今のミチル相手だとミヤコが得物を使ったとしても五分五分。
    ミチルにデータに無い動きが入ってきたらそこから更に勝率は下がっていく。
    現状だって、ここまで動いてくるとは思わなかった。
    想定はしていたものの、こんなに器用な立ち回りをされたら
    全方位を重爆するみたいな規模の話になってくる。
    単純にただの眷属を殺すだけならそれも出来なくはないでしょうが、大赤字確定。
    そしてただの眷属ではなく、今のミチルとなると、大赤字どころじゃない。
    元から眷属組でも相当強い存在な上に、貴音の体を食べたことでブーストが入って
    今のミチルは間違いなくプレインズウォーカーの領域に片足突っ込んでる。
    そんな相手に逃げ場のない全方位重爆とかやろうとすると
    今後の兵器の運用にも響いてくるレベルの物量が必要になる。
    大量に兵器を保有しているとはいえ、それは無限じゃない。
    資源的な面でも、生産拠点、保管してる艦や基地の防衛的な面でも
    しっかりと費用対効果を計算に入れないといけない段階に入ってる。
    遠距離からの圧殺も、近距離での戦闘も両方難しい状態。
    ……少なくとも私はそう見てる。
     (……分かりました。
      私は戦闘から情報収集に移行する感じですか?)
     (それでお願い。
      ……またすぐリベンジできるチャンスは来るわよ。)
    アズを取りこぼした直後の私が言うのもなんだけど。
     (……はい。次は必ず……。)
    ……AIだろうとなんだろうと、何かを試みた場合、失敗するのは当たり前で
    今回がそのうちの一つだったというだけ。
    それだけなのに割り切れてない辺り、ミヤコも色々と変わってきてるわね。
    成長とは必ずしも言い切れない変化。それを受け入れるか拒絶するかは
    後でミヤコ自身が決めたらいい事。
    ……そう……ミヤコも成長してるのよね。
    でも、ここまで。
    この分じゃ私の知らない何かっていうのは、まだミヤコは持っていない様ね。
    どうもゲンブは私に隠してる何かがあるみたいだから
    そういった面での成長みたいなのは、やはりゲンブのほうが一日の長があるかしら。
    ……まぁ、刺激的な毎日だし、戦争が終わるころには……
    ……いえ、今日この失敗を得て、明日から何か動くかもしれないわね。ミヤコの中で。
    ……私も負けてられないわね。
     「ホントいけずねぇ……。
      ……まぁいいわ。あんまり待たせてるのも悪いし本題に行きましょうか。」
    流していたテレビの画面がCMから
    いきなり映画の重い場面に切り替わったかの様に、唐突に入れ替わる場の空気。
    時間。
    内容。
    舞さんの事だからそれ程長くはかからないでしょうが先に言っておいた方がいいわね。
    こちら側からのアクションも決めておきたいし。
     「その前に……ちょっといいかしら?」
    声。
    出しただけ。
    伝えなければならないし、間違ってない。後悔も無い。
    でも何だろう。この急に全身の肌が縮み上がる様な感覚は。
    ただでさえ混乱してる場を更に乱す事への不安?
    それとも、ただ単に弱者である私が言葉を発するという恐怖?
    それか……。
    麗華と目が合う。
    両腕に右足を封じられながらも、ちゃんと目的を果たした者。
    ……正体は今度こそ失敗できないというプレッシャーかもしれないわね……。
    ……負けたくないのよ。アンタにも。誰にも。
     「どうぞ、伊織ちゃん。」
    舌なめずりするような日高舞の声。
    まだ何も出していないのに、もう料理の匂いを嗅ぎつけてる。
    この情報単独ではは日高舞を納得させるようなものではないけれど……。
    …………
     「……貴音の体を食べたミチルがこっちに飛んできてるわ。」

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