第一次偶像戦争 【558】 [水瀬伊織]
閉じる
閉じる

新しい記事を投稿しました。シェアして読者に伝えましょう

×

第一次偶像戦争 【558】 [水瀬伊織]

2019-12-14 22:44

     「ボクも初めて聞きました。
      結構動きがあったんですね。」
    裏で蠢く思惑と行動。それを他所に、表の会話は進んでいく。
    それにしても、何が「動きがあったんですね」よ。
    そんな言葉添えるんなら、もうちょっと興味がある様な声色で言いなさいよ。
     「おーけーおーけー。状況を整理しましょう。
      私の所から奪われたお酒は、もう結構な人数に行き渡ってるって事ね。」
    日高舞がその事実を知らなかったのは、やっぱり動いてなかったからかしら?
    眷属組は頑張ってた様だけど、下手に他のプレインズウォーカーの
    領土に入るわけにもいかないでしょうし、平和的に話を聞くにしても
    酒を盗まれた事実は隠しておきたいでしょうから
    日高舞の眷属が戦闘以外で他と接触する事自体の異常さも考えると、無理に近いのよね。
    一番接触したい対象である北斗と小鳥は完全に雲隠れ。
    二人の眷属達も知り得てる限りでも結構な数
    他のプレインズウォーカーの所に居るっていう事を考えれば
    情報すら得られない八方塞がりになってたっぽいわね。
     「それで合ってるわ。
      そしてもう戻らないボトルもあるわよね?貴音。」
    私は貴音から向けられた刃をそのまま返し、突き刺す。
    でも、ここまでは貴音も想像してるわよね。
     「……えぇ、承知の上で頂きましたから。」
    予想通り、貴音は慌てることも無く私の言葉を受け止める。
    こっちはまぁいいとして、問題は……
     「ほう……。」
    言ったり来たり、日高舞の視線は内にある感情の現れかしら?
    ……そう判断するのは早計ね。ていうか、この人今演じてない?色々。
    本能で生きてる様に見えて計算高いし、その計算高さの基本となる部分も
    単純に一番快楽を得られそうな事に向けてのって訳でもない。
    読めそうで読めないし、読めたとしてもどうしようもないって
    無害なタイプでも付き合うのに疲れそうなのに
    この女は物凄い周りを巻き込む超有害物件なのよね。
    ……ホント、何でこの場に居るんだろう……。
    十中八九、恐らく初めてであろう退場者が出て
    そこから連鎖的に増えそうな状況を感じ取ったから、物言いに来たんでしょうが……。
    ……ホント面倒を持ち込んでくれるわ。
     「日高舞の酒と分かって飲んだのね。」
    圧。明確な。
    で、アンタはどうするのよ?貴音。
     「はい。
      大変美味なお酒でしょうから、堪えることが出来ませんでした。
      伊織と違い、今のわたくしの生活だとかさばりますし
      お土産を貰わなかったのを今でも少し後悔しております。」
    微妙な持ち上げと私へのパス。そして日高舞と敵対するという覚悟。
    ……これ死なば諸共って感じが強くなってきた?
    それとも時間稼ぎ自体が目的?
    多少魔力は回復するでしょうが、逃げるレベルまで行ける?
    ていうか、逃げられると思ってる?相手日高舞よ?私だって逃がすつもりはないわよ?
     「他人のお酒をお土産ねぇ……。」
    もっともな言葉。誰だってそう思う。
     「私はお土産レベルを超えるぐらい貰ってますよ。」
    で、そこ。全く関係なかった筈の麗華の介入。
     (ホント?)
     (嘘。)
    一言。落ち着いた声で。
    こうやって会話出来てるだけでもマシと言えばそう。
    ただ、今猛烈に麗華の顔を見たくなった。
    発言から考えて見ても不自然じゃないけど、表情を完全にとらえるには
    私の位置からでは、ずいと体を前に出して覗き込まいといけない。
    だから私に出来ることは、少し驚きを混ぜた表情を作って、その横顔を見る事だけ。
    麗華の横顔。
    いつもと変わらない、落ち着いた表情。
    戦闘が起こるかもしれないのに。
    サチコは助けてくれないかもしれないのに。
    まだ私と、戦闘が始まったらどうするか、全く、何一つ決めていないのに。
    日高舞が動く。麗華に視線を向けてくる。
    瞳。
    その中にある暗い炎が揺れる。
    この場。
    この空間。
    ……私は存在してる?
    貴音も、美希も、この場に居る?
    沸いてくる少しの安堵。
    それを理解した瞬間、怒りと苛立ちが他の感情全てを押しつぶす。
    律子ならそうは思わない。
    勝つ気がある者なら、そう思ってはいけない。
    なのに、私は……。
     「詳しく話を聞かせて貰っても?」
     「律子から沢山預かってるというだけですよ。」
    麗華と日高舞の会話。
     (サチコが動かなかった場合、アンタの領土まで引く?)
    急かされた以上に、自分の中の感情を誤魔化すための言葉。
     (そうね。ハッタリが通じてるならお酒を回収するまで殺しはしないでしょうし。)
    麗華の言葉を聞いて、内にある苛立ちが怒りを圧倒し始める。
     (……アンタやる気なの?)
    私はアンタと手を組んでるんでしょ?それを無視する様な事をする?目の前で。
     (やるわ。共倒れするもアレだし、伊織は頃合いを見て逃げて。)
     (逃げる訳無いでしょ!)
    私は勝つ気なの、この戦争に。
    それなのにここで逃げてどうするのよ。
    アンタと二人。これ以上無いチャンスなのに、私が戦わないでどうするのよ!
     (大体、共倒れって何よ!負ける気!?)
     (サチコちゃんが動かなかった場合、勝つ見込みは薄いでしょ?)
    理解してるのに進んでいく。その姿が私の神経をなおいっそう逆なでする。
     (サチコが動くかどうかを試す!?
      殺されはしないだろうから負けを覚悟で動く!?
      アンタ私を舐めてない!?
      私はね!ハイエナして勝とう何て思ってないわ!)
    そういう勝ち方もあるだろうし、策謀を巡らせて争わせるみたいなのも否定しない。
    ただ、今ここで真っ直ぐな戦いを、それで得られるであろう真っ直ぐな勝ちを
    やりもしないで捨てる程、自分の強さへの誇りを失ってもない。
     「飲んだ?」
     「飲みました。大部分は残ってますが。」
    日高舞の瞳の黒い炎に宿る色。黒の下で蠢く感情は何か。
     (……分かった。ただ、ヤバい時は逃げた方がいいわよ。
      戦闘になったら私は勝ち負けで動かないと思うから。)
     (どういう事よ。)
     (強くなりたいのよ。)
    強く。
     (本気で戦うんでしょ!?何が違うのよ!?)
     (……なんだろ?私にも分かんないわ。)
    分からない!?分かってない!?
    じゃあ、アンタのその表情は
    半分以下しか見えないけどしているであろう表情は何なのよ。
    諦めでもなんでもない、その表情は!
     「よかった。ボクが飲む分はあるみたいですね。」
    サチコの言葉。
    これは

    広告
    コメントを書く
    コメントをするには、
    ログインして下さい。