第一次偶像戦争 【576】 [東豪寺麗華]
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第一次偶像戦争 【576】 [東豪寺麗華]

2020-01-20 22:11

    日高舞の上に開いた穴に吸い込まれた伊織の姿は、すぐに見えなくなる。
    視線が下がって、目が合う者。この状況を作り出した者。
    楽しそうな瞳。それを隠そうともしない表情。
     「ちょっとうちの子達に戦闘が始まるって伝えますね。」
     「どうぞ。わざわざ断る必要も無いでしょうに、丁寧ね。」
    丁寧か。
     「そりゃ、目の前に爆弾がありますから、丁寧にもなりますよ。」
    この人の事だから、さっきの伊織との会話もバレてる可能性があるわね。
     「ひどい言われだわ~。舞ちゃん泣いちゃう。」
    いきなり乱入してきて戦場ぐちゃぐちゃにしておいてよく言うわ。
    まぁ、それは私のすぐ前に居る子も一緒だけど。
     (これから戦闘が始まるわ。
      私達はここから動かない様だから、伊織も広範囲系スペルは使わないでしょうし
      そっちまで被害は行かないと思うけど、一応気を付けておいて。)
    ていうか、動かないのよね?
     「上で戦闘始まりますけど、動かないんですよね?」
     「私は動いてもいいけど、なんかここで貴音ちゃんと美希ちゃんを動かすと
      囚人移送とか、奴隷買った帰りみたいな感じになっちゃうわよね。」
    酷い言葉というのは元の世界のあの社会での感想ね。
    そういう現実は、元の世界でも。次元を超えれば、どこにでも普通にある絵。
     「じゃあ待ちましょうか。
      ただ、アズキちゃんはその位置だとちょっとマズい事になりそうだから
      これからどうするにせよ、動いた方がいいと思うわ。」
    舞さんの更に奥に居るアズキちゃんは、私の言葉を聞いて少し安心したのか
    眼を閉じ、浅く息を吐いた。
     「……そうですねよ……。」
    閉じた瞳がわずかに開く。その視線は下を向いたままで。
     「まぁ、なんかあったら守ってあげるわよ。
      とりあえず美希ちゃんの傍に居たらいいんじゃないかしら?
      もちろん、帰ってもいいわよ。」
    帰っていいとはいったけど、星井美希を置いて帰れる訳は無いわよね。
    ショウマ君だって、無事かどうか分からないし。
     「それじゃあ、美希ちゃんの所に行きますね。」
    アズキちゃんは大きな樹の傍から、トットットと着物の袖を躍らせながら
    こちらにやってきて。
     「美希ちゃんもそれでいい?」
     「……アズキがそうしたいならすればいいの。」
    完全にふてくされてるわね。まぁ、今後を考えるとそりゃそうか。
    これで全力を出し切ってたならまた話は違うでしょうけど
    実力を出せず消化不良のまま、日高舞の相手強制は、なかなかね。
    ……星井美希的には先の心配よりも今日の消化不良の方が重いかな?
    ……私ならどうだろう?やっぱり日高舞の相手強制の方が重く感じるんだろうか?
    ……今の私なら……
    ……さっきも喧嘩を売る様な発言をした訳だけど
    あれはサチコちゃんがこちらに居るという状況込みでの事だし……。
    ……それでも、今の私なら……。
     (万が一、巻き込まれるような事があった場合
      俺達はどうすればいいです?)
    マキオの声。全員を代表してって事でしょうね。
     (個人的な注文は無いわね。悪く取られる事を恐れないで言うと
      貴方達の好きにしなさいで終わるわ。
      ……もしかして、ノノが反応してる?)
    あり得る。十分に。
     (無い事は無い……というレベルでしょうか。)
    今のところ明確な意思が向けられてる訳では無いのね。
     (……伊織が上がったのはアズ君の所のミチルちゃんがこっちに向かってるから。
      建前は迎撃だけど、本当の所はアズ君を釣るつもりよ。)
     (となると……。)
     (そっちに動く可能性はあるわね。)
    それを許さない動きを伊織は出来る。
    ……ただ、伊織も伊織で調子が良いとは言えない。
    ……伊織と組んでこうやって一緒に動いて分かったけど
    私と伊織の二人は、決して相性がいいという訳ではない。
    他者へ依存度が高いというか、ソロだと意味がない私の能力は
    どうしても他の誰かが居る。現状の最大パフォーマンスを出そうとすれば
    眷属の子たちを全員連れて行かないといけない。
    それに対し、伊織の強みは、やろうと思えばいくらでも面制圧が出来るという事。
    広い範囲に持続的にダメージを振りまけるという事。
    それをやろうとした時に、殺したくない者の存在は邪魔になる。
    具体的には、眷属の子達の存在があることで調整しなければならなかったり
    躊躇してしまう事態に陥る。
    面倒見が良く、情に厚い性格が、足を引っ張る世界もあるのよね。
    ……そして、幼いころから染みついた失礼のない様にと考えてしまう、動いしまう癖。
    物心つく前から社交界っていうのも考え物ね。
    うちは両親がアレだったからまだマシだけど、伊織の所は徹底してたでしょうし……。
    …………
    ……一応、敵。
    ……いえ、日高舞は明確に敵。
    それでも、伊織が遠慮がちになってしまうのは、日高舞が強いから?
    リスクを回避する方に動いてるから?
    敵だけれども、戦ってはいないから?
    ……それとも、私と組んでるから?下手に動いたら私に危害が及ぶ危険性があるから?
    …………
    ……もう時間は無いわね。
    頭上の伊織は強く魔力を展開し、遠くに感じた魔力は急速に近づいてきてる。
    さて、どうなるか……。
    ……伊織、勝ちさないよ……。

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