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第一次偶像戦争 【587】 [日高舞]
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第一次偶像戦争 【587】 [日高舞]

2020-02-12 22:11

    生木が焼けた匂いに交じる、雷が通ったあと特有の鼻の奥をひっかく様なオゾンの匂い。
    それが引っ張ってくる私の中にある沢山の絵。
    その絵の中の大半に居る者。
    あの酒泥棒は今どこで何をしてるのかしら?
    あんな事をした訳だから、私と戦う意思はあるって事でしょうし
    今も虎視眈々と私を殺す為の準備をしてたり?
    そんな事全く考えずに、毎日私から盗んだお酒をたらふく飲んで
    パートナーとヤッて、そのまま体を重ねた状態で
    いつの間にか寝てるみたいな生活してたら恨むわよ。
    まぁ、そんな事考えてる私は、一度小鳥に負けてるのに
    毎日修行とかしてる訳じゃないから、当てつけどころか、言う資格がないんだけど。
     「飛ばした方がいいですか?」
    森の木々の向こうに見える粘っこい糸引く溶岩の光。
    それを眺めながら、サチコちゃんはそう言って。
     「あのバカの事だから、気絶してる時に焼かれても勝手に回復しそうだけど
      飛ばしておいた方がよさそうね。
      どっちにしろ間違いなく面倒になるから、気が重いわ。」
    考えたくもないのか、麗華ちゃんは
    陰鬱な表情を浮かべながらサチコちゃんの質問に答える。
     「お優しいんですね。」
     「涼君の反応が怖いだけよ。
      別に気にしないならここで消えて貰っても構わないわ。」
     「なるほど。それでしたらボクも同意見です。」
    サチコちゃんはそう言い残し、そのまま森を抜けて崖の方へと飛んで行ってしまった。
     「恋のライバルには消えて欲しい感じ?」
    茶化す様に聞いてみたけれども私の「消えて」と
    麗華ちゃんの言った「消えて」は多分同じ意味ではない。
    麗華ちゃんの「消えて」は強い方。
    死の先にある完全な無。
     「その舞台にさえ立ててませんよ。私も、あのバカも。」
     「そう?」
    「なら私は?」と口から出そうになったものの
    陰鬱な表情のまま、どこか遠く別の場所でも見ているかの様な麗華ちゃんを見て
    これ以上変に刺激するのもアレと思い、私は好奇心と共に咽の奥に呑み込む。
    中途半端な気持ちで色恋沙汰に首突っ込むとろくな事にならないわ。
    それに、もっと面白そうなものがこっちに来てる様だしね。
    ゆっくりと近づいてくる魔力が二つ。
    その後ろで空間が揺れた。
    響ちゃんが飛ばされた様ね。結局話す事も出来なかったか~。
    塔に入っちゃったらこちらから向こうへの一方通行の会話しか出来ないし
    響ちゃんとは実質、終わるまでお別れになる。
    まぁ、帰りにでも寄って、能力の名前の件を伝えておこうかしら。
    そういや、能力の名前を決めるっていうのはここにいる全員知ってる?
    前に貴音ちゃんと会った時は言いそびれたのよね。
    今回はちゃんと聞いて伝えておかないと。
    ……さて。
     「お疲れ様。」
    そう声をかけた二人は、身なりこそ双方共に綺麗だけれども
    魔力的な面では、片方はボロボロという表現すらまだマシというレベルだった。
     「お帰り。上手くいったみたいね。」
     「何とかね。
      で、コイツだけど……。」
    伊織ちゃんの視線が隣のアズ君をちらりと見た後、私を捕らえる。
     「わざわざ私の為に捕まえてきてくれたの?
      舞ちゃん感激!」
     「……邪魔する気が無かったのなら響と一緒に送ればよかったわ。」
    伊織ちゃんは吐き捨てる様にそう言って。
     「ん~、まぁ、正直行こうか迷ってたし
      捕縛するのなら、その前に声ぐらいはかけたと思うわ。」
    アズ君は伊織ちゃのんお【Volcanic Geyser】から出てきた辺りでもう降参した様だし
    そこで伊織ちゃんがすぐに動かなかったから、即座に送る事は無さそうに見えた。
    私が邪魔してくるかどうか試していたのかもしれないけど
    結果的に連れてきてくれてよかったわ。
    あんな面白そうな戦いを見てるだけとか、中々辛かったのよ。私も。
     「美希と貴音の分は補填は、日高舞が死ぬまで日高舞以外を狙えないだったわよね。」
     「そうね。貴音ちゃんと美希ちゃんに課すペナルティはそれ
      あとさっきぶつ切りになっちゃって言いそびれたけど
      麗華ちゃん側から他に何か要求があれば見当するわよ。
      貴音ちゃんと美希ちゃんに全く関係無い事でも全然オッケー。
      まぁ、あんまり期待されても困るけど。
      あと、私の楽しみを減らすようなのも無理。引き延ばしでギリギリね。」
    死ぬはずだった者が生き残って再び立ちはだかってくる可能性があるという点と
    勝ちを奪われたという点。ターゲット固定じゃちょっと足りないわよね。
     「で、それにコイツも混ぜたいと。」
     「アタリ。」
    そう言ってにんまりと笑う私に伊織ちゃんは完全に呆れた様で
    嫌という表情を全く隠さず、ため息も漏らす。
    ……伊織ちゃんと戦えるのはいつかしらね。
    一気火力を集中させてくる大規模な戦いか、きちんと物量を分配した持久戦か
    はたまた麗華ちゃんと連携しての戦闘か、他の子達が来てるときに急遽参戦してくるか。
    伊織ちゃんは選べる幅があるからそういう面でも楽しみだわ。

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