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第一次偶像戦争 【589】 [ミク]
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第一次偶像戦争 【589】 [ミク]

2020-02-16 21:12

     「お待ちしておりました。どうぞ、こちらへ。」
    森を抜けた直後、柵の向こうからかけられる声。
    月の光の下でミク達を待っていたのは
    黒のスーツに暗めの赤のスカーフを巻いた女の子。
    やっぱ、こっちの動きは把握してるよね……問題はどこからかだけど……。
     「今日はミヤコちゃんにゃ?」
    やっぱり、今はそれどころじゃない。
     「えぇ、ゲンブは今交戦中ですので、私が。」
    じゃあシュウコちゃんの相手をしてるのはゲンブ君なのかな?
     「分かった。それじゃあ、案内お願いにゃ。」
    疑問は心の中だけ。口に出そうとも思わなかった。
    行けば分かる事。ならここで聞くのは時間の無駄。
    もし気が変わったとしても、移動しながら聞けること。
    今、ミクの中にあるのは、緊張に、はやる様な心。
    そして、ほんのわずかな引っ掛かり。
     「この場にゲートを開くこともできますが、如何なさいますか?」
    ここで。今すぐ。
     「……じゃあ、ここでお願いするにゃ。」
     「畏まりました。では……。」
    ミヤコちゃんの魔力が紡がれ始める。
    …………
    ……
    ……あーっ!もうっ!
     「何で本当に行くのって聞かないにゃ!?」
    隣に居るシロウ君に向けて怒鳴るように言った言葉は
    そのまま夜の闇に消えていった。
     「えっ?だってミクねーちゃんは行きたいんでしょ?」
    あっけらかんと。
     「行きたいけど、それが正しい訳じゃないでしょ!
      そういう時は最後まで行くかどうか聞くもんじゃないの!?」
    ミクが間違ったことをしてるってさっき伝えたし!
     「別に正しくなかろうと行きたいなら行けばいいんじゃね?
      ていうか、引き留めて欲しいの?
      フェンス越えないのも、勢いでここに来ちゃって後悔してるから?」
    引き留めて?欲しい?
     「そんな訳ないにゃ!」
    ミクの言葉にシロウ君はより一層怪訝な表情をして。
     「それじゃあ、さっさと行こうぜ。
      ここで立ってても仕方ないし。ミヤコねーちゃん困ってんじゃん。」
    ッ~~!
     「押さえる者が居ないと、物事がどんどん変な方向に転がるでしょ!」
    自分でも無茶苦茶なことを言ってるってわかってる。
     「俺にそれをやれって事?」
    シロウ君の表情はもう怪訝じゃなく、困惑に変わっていて。
     「じゃあなんで来たの!?」
     「いや、だからさっきも言ったけど
      一人で行かせられる訳ないからに決まってんじゃん。」
     「なんで!?」
     「いや、何でって、そりゃ死なせたくないからじゃね?」
     「ミクが死ぬと思ってるの!?」
    シロウ君の視線が切れる。フェンスの向こう
    ゲートの薄い水色の光がボンヤリと闇を照らす方に、シロウ君の視線が動く。
     「相手はシュウコねーちゃんなんだよね?」
    僅かに目を細めながらシロウ君はミヤコちゃんにそう問うて。
     「えぇ、シュウコさんで間違いありません。」
     「なら負ける可能性も十分にあんじゃん。」
    シロウ君の視線が戻ってくる。
    困惑の色が抜けて、今、シロウ君の顔には憮然としたものがのっかっていた。
    筋の通ってない理不尽な理由で親に言いくるめられる子供のそれと全く一緒だった。
    それに凄く腹が立って。
    多分、シロウ君にそんな表情をさせているミク自身に。
    でも……
     「負けるからついてくるの!?
      ミクが勝てる相手だったらついてこないの!?」
    正しくないほうに、悪いほうに転がろうとしているミクは
    もうミク自身ですら止められなくなっていて。
     「ん~……どうだろ?
      ……多分ついて行くとは思う。」
     「馬鹿にして!お使いも出来ない子供じゃあるまいし!」
     「いや、そりゃ極論じゃん。
      それに、見て学ぶ事もあるだろうし
      俺の方のメリットみたいなのも全部無視すんの?」
     「減らず口を叩かないで!」
     「ミクねーちゃんはオレに来て欲しくないの?」
    来て欲しく。
    …………
     「……来て欲しくない……にゃ……。」
    勝ち
    負け
    でも、それよりも
    いつも偉そうに言ってる癖に、間違った選択をして
    更にそれ以上の醜態を晒してしまうかもしれないから。
    醜い心の内を、知られるかもしれないから。
     「そう。分かった。
      でも、俺が行きたいからついて行くわ。」
     「は?」
     「俺もミクねーちゃんも互いに行動を強制する権利なんで無いじゃん。
      それに、ぬみねーちゃんの所の戦力って事を考えると
      ここで勝手に死なれても困るし。」
    それを出されると、もう嫌とか……
     「もう知らないにゃ!」
     「うん。向こうに着いたら俺の事気にしなくていいから。」
    そう。
    負けて死ぬ。
    間違った行動の罰を、負けて死んで終わりに出来ない。
    それで終わらせられるのなら、どれだけ楽なんだろう。
    勝って、手に入れて、満足出来る勝負なら、どれだけ救われるんだろう。
    今からやる戦いは、どれとも違う。
    ただ単に、当てつけ。
    勝っても、何の意味も無い。
    負けたら……
    ……もしミクが負けたのなら……
    …………
     「待たせてごめんにゃ。
      それじゃ行くね。」
    フェンスを軽く跳び越えて、青白く光るゲートの前に立って。
    そこに映る絵を見ないように、目を閉じて浅く息を吐く。
    ……うん。
    やっぱり行く。
    戦う。
    目を開ける。
    ミクの左足が輝くゲートに触れた。

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