第一次偶像戦争 【592】 [ミク]
閉じる
閉じる

新しい記事を投稿しました。シェアして読者に伝えましょう

×

第一次偶像戦争 【592】 [ミク]

2020-02-22 22:02

    土の濃い煙が場に満ちてる。熱も空気に全然残ってるから
    ゲートを超えた瞬間から、シャワー浴びたい、お風呂入りたいって
    反射的に思ってしまった。匂いも凄いし。
    でも、そんなこと言ってられないよね。
    ミクはここに、殺し合いにきたんだから。
     「すげえ事になってんな~。」
    シロウ君の呑気で無駄に大きい声も、こんなカフェオレの中みたいな場所じゃ
    響く前に消えてしまう様に思えた。
     「これ、吹き飛ばしちゃっていいにゃ?」
    土にマナを感じないし、暫く待ってれば落ち着くと思うけど。
    ちらりと見たミヤコちゃんの姿が隠れる。近くにあった光が消えて
    輪郭程度は分っていたシロウ君とミヤコちゃんは
    ざらついて、むせ返る暗がりのなかに隠れてしまう。
    きっとミヤコちゃんがゲートを閉じたんだろう。
    これはさっさと吹き飛ばさないと、全身土まみれどころか
    足が埋まるぐらいまで降ってきそう。
     「どうぞ。ミクさんは戦闘前ですし、よろしければ私がやりますが。」
    ミヤコちゃんの声の通りがさっきと違う。
    これ、魔力感知が働いてるからミヤコちゃんの声だって確信が持てるけど
    そうでなかったら警戒するか、逆に独りの不安から飛びついちゃいそう。
     「ウォーミングアップもしないとだから、ミクがやるにゃ。」
    ヴンとミクの魔力が周囲に展開される。
    さてと、どうやって処理しよっかにゃ。
    色々思いつくけど、どれぐらいの範囲にこの土煙が待ってるか分からないし
    雨とかつかっちゃうと地面がグシャグシャになるから
    ここはもう、超広範囲の竜巻か何かでざっと吹き飛ばして
    それでもアレなら地面の色が変わる程度に雨でも降らそうかな。
     「強い風が吹くから、二人共気を付けて。」
    一応の断り。といっても、いくら強かろうと
    魔力のほぼ無い風なんて大した問題じゃ無いだろうけど
     「おっけー。」
     「了解しました。」
    相変わらず声が聞きづらい。でも、了解したという事は伝わった。
    領域に描かれる小さな魔法陣。
    それが輝いた瞬間、ミクの周囲の空気が一気に動く。
    渦巻き、吹き上げる風が、甲高い風きりの音を鳴らしながら
    茶色い空気を巻き上げていく。
    肌に当たる小石が鬱陶しい。あと、目に入り込もうとしてくる砂も。

    感触が変わる。
    肌に当たる風は鋭くなり、動いた事で焼け付く様だった熱も消えて無くなる。

    ゲリラ豪雨の時の雲の様に、真っ黒な塊が浮かんで、動いて。
    光が差し込む。
    周囲
    凸凹の地面を囲う様に、とても大きな溝が見えた。
    振り返ると、ほんの数メートル後ろにその溝は繋がっていて。
     「すげー事になってんなー。」
     「それさっきも聞いたにゃ。」
    でも、ミクもそう思う。
    ……さて。
     「シュウコちゃんは地下?」
    地面を流れるマナの流れがおかしい。こんな事が出来るのは……。
     「今の所、私達はそう判断してます。」
     「わかったにゃ。
      それじゃ、テレパスいってみるから、二人も気を付けておいて。」
    深く息を吐く。必要なんてないのに。
    そして、吸って
     (あーあー。テレパスのテスト中。
      次大きな声行くから聞こえてるなら気を付けて。)
    かなり強い奴。
    これから先、殺し合いをするんだから、これは宣戦布告になるわけだし
    ハッキリと、強く、当人以外にも伝えるつもりで行くべき。
    恥だろうと、ただの当てつけだろうと。ここまで来たんだから。
     (シュウコちゃん!出てくるにゃ!)
    って言って出てくるような子じゃないよね。
    ミクだってシュウコちゃんの立場だったら絶対無視するし。
     (あーあー。聞こえとるよー。
      で、何でミクちゃんなん?
      戦ってる相手は伊織ちゃんか伊織ちゃんとこの子やと思ってたけど。)
    返事。
    こっちから声かけといてアレだけど、なんか腹立つ。
    本当に理不尽でどうしようもないって分かってるけど、どうしても癪に障る。
     「どこまで喋っていいの?
      伊織ちゃんの所の誰かが相手してたこととか
      ミクを連れてきたことも喋っちゃっていいの?」
     「ミクさんの発言に関しては、制限等は無いとの事なので、ご自由にどうぞ。」
     「わかったにゃ。
      シュウコちゃんの相手してたのはゲンブ君で合ってる?」
     「はい。それで合っております。」
    ミヤコちゃんが答えたって事は、今ミクが知りえている情報だけじゃなくて
    新たに得られた情報にも、そういった制限はないって事でいいんだよね。
    まぁ、ミクがここでシュウコちゃんを倒しちゃえば何の問題も無いか。
     (さっきまで相手してたのはゲンブ君にゃ。
      で、こっから先はミクがシュウコちゃんの相手をするにゃ。)
     (なんで?
      ミクちゃん伊織ちゃんとこについたの?)
    もっともな言葉。でも、やっぱり気に障る。
    ミクがこんなにも、殺したくてたまらないのに
    ミクの事なんかどうでもいいような、その言葉が、声色が、とにかく気にくわない。
     (ミクの窺い知らない所でシュウコちゃんを殺しちゃう事に気が引けたんじゃない?)
    挑発。
     (あたしの生死ってミクちゃんに関係あるの?)
    無意識に眉間による皺。あと一言二言言葉をかわした時には牙もむいてそう。
     (あるにゃ!)
     (へ~、そうだったんだ。知らなかった。)
    手。
    近くに殴れるものがなくて良かった。あったら多分思いきりぶん殴ってる。
     (で、ミクちゃんが相手するのはいいとして
      出てこいってどういう事?)
     (そのまんまにゃ!出てきてミクと戦うにゃ!)
     (それ、あたしに何かメリットあるの?)
    くうううううう!
     (今の今まで殺し合いやってたんでしょ!
      理不尽な状況に巻き込まれてるから、地面の下に引きこもってるんでしょ!
      そのまま地面の下で潰れて終わりじゃあれだからって
      上に出てくるチャンスを与えてあげてるだけにゃ!)
     (なーんだ。別にあたしにメリットがある訳じゃ無いんだ。
      てことは、ミクちゃん倒してもゲンブ君の攻撃がまた始まる感じ?)
    その言葉を聞いた瞬間、右足が地面を思いきり踏みつける。
    ドンという音と共に地面が割れ、崩れ
    背後の大きな溝に、ザラザラと落ちていく音が聞こえた。
     「俺、もう後ろ引っ込んでるから。
      ミヤコねーちゃんも行こうぜ。とばっちり食らう前に。」
     「うるさい!」
    何がとばっちりにゃ!
     「……それでは、失礼します。」
    ミクを置いて飛んで行く二人。
    いいにゃ。別に。最初からサシで決着つける気だったし!
     (やるならやるでいいけどさ。何かあたしにもメリットがほしぃーん。)
    人を舐め腐った様な声に、思わず頭をかきむしりたくなる。
    ホント!ホント!合わない!ミクとは!
    マジで!もう!無茶苦茶に嫌い!この女!

    広告
    コメントを書く
    コメントをするには、
    ログインして下さい。