第一次偶像戦争 【593】 [ミク]
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第一次偶像戦争 【593】 [ミク]

2020-02-24 20:24

     (もう分かったにゃ!
      こんな地面たたき割って引きずり出してやるにゃ!)
    ミクの右手に集う魔力。
    空間の揺れと輝きと共に現れる、ミクの身長よりも長い柄と
    デフォルメした猫ちゃんの顔を模った巨大な斧刃。
    ミクは呼び出したラセラトリスの柄を右手と左手でしっかりと握り
    刃から石突まで一気に魔力を流す。
    次はスペル。【Creeping Mold】で土地のマナを弱らせて、そこから一気に
     (ミクさん少々お待ちを。)
    ミヤコちゃんの声。ミクだけに伝わるに調整されてるテレパス。
     (何?)
    物凄く苛立ってる心の内を出さない様に気を付けたけど
    声の端に残ったバリの処理は間に合わなくて。
     (失礼な質問だと承知の上でお聞きしますが
      勝てると考えておられるのですよね?)
    断りを入れてくれたけれども、ミヤコちゃんの言葉に
    理性という圧を上からかけて、無理矢理抑え込んでいる苛立ちの水面が跳ねる。
     (勿論そのつもりだけど!)
    語気が強くなる。分かっててもそうなる。
    そんな感情のままに生きてる自分を嫌悪して
    その感情がまた苛立ちの海に落ちて、溶けて、水面を上げ、揺らす、悪循環。
     (分かりました。
      それでは私が一度シュウコさんと交渉してみても構いませんか?
      シュウコさん自ら地上に出て来て貰う事をあまり重要視しないのでしたら
      先程ミクさんが宣言した通りに動いて貰っても。)
    地面。下。マナの流れ。
    息を吐く。落ち着いて、冷静に考えて、正しく判断して。
    ……伊織ちゃんの所のミサイルにも耐えるぐらいだし
    Creeping Mold】があるとはいえ
    ラセラトリスを握ったミクの攻撃でもすぐ割って引きずり出してみたいなのは厳しい。
    割って、削って、掘り出しての繰り返しになるのは間違い無い。
    ……それなら……。
     (分かった。それじゃあ、お願いするにゃ。)
    腹立つけど、シュウコちゃんとはもう少し会話もしておきたい。
    完全な当てつけだけど、どうして妬まれてるのかぐらいは伝えておいた方がいい。
    ミクの自己満足だとしても。
     (ありがとうございます。
      それでは……。)
    一瞬の静寂。緊張。
     (お久しぶりですシュウコさん。ミヤコです。
      今の戦闘についてのお話があるのですが、構いませんでしょうか?)
    感情の色の無いミヤコちゃんの声が通る。
    ……さて、どうなるにゃ。
     (ええよええよ。何ぃ~?)
    相変わらず相手を小馬鹿にしたような声。
    会話してるのはミヤコちゃんだけれども、何故か腹が立つ。
    真面目に話してる相手に、この態度。
    これって真剣に話をしてる相手には、返す方も真剣になって返すべきみたいな
    独善的な押しつけをミクがしてるって事だよね。
    ……でも、やっぱりこの態度は……。
    ……ミクの器が小さいと言われればそうだけど、やっぱり認められないにゃ!
     (メリットとは少し違いますが
      出てきてミクさんと戦って下さるのであれば
      私共からの追撃は無しとさせて頂きます。)
    ……むぅ。
    ……ミクが勝てば問題ない事……。
    シュウコちゃんを引きずり出しても、そのまま逃げる可能性はあったし
    逃げる事を封じてくれるのなら、ミクにも有利に働く?
    ……伊織ちゃんの事だから、なんか裏がありそうだけど
    それを覚悟で乗った訳だし、ミクは目の前の敵を倒すだけ。
    ……うん。それでいいにゃ。
     (ほほ~、それってゲンブ君や伊織ちゃん本人も私共ってのに入ってる?
      伊織ちゃんと同盟結んでる陣営が代わりにみたいなのは無い?)
     (ありません。もっとも、証明のしようもないですが。)
     (それじゃあ、ミクちゃんに勝てば、あたしは堂々と帰れる訳ね。)
    カチンと。予想はしてたけど、やっぱり頭にくる。
     (仰る通りです。)
     (そっかそっか。それなら出よっかな。)
    ああそうですか。わざわざミクにぶっ殺されに出てくるなんて、ご丁寧にどうも!
    展開した領域を紡ぎ、魔方陣を描き、改めて並べて。
    防御系スペルにバフに、エンチャントとかで防御されてもいけるよう解呪系も。
    万が一の再生系、それに【Fog】みたいなタイプも用意しておこう。
    領域で抱える魔力が大分重くなっちゃうけど、ミクなら大丈夫。
    このひと月、ずっと同じ体だから、魂と肉体との馴染みがすこぶるいい。
    流れを阻害しない上に、細胞からの魔力の生産もいつもより多い。
    あとは精神的な面だけ。
    とにかく、目の前の獲物を殺す事に集中すれば。
    吐き出した息が持つ熱。
    犬歯が伸びてくるような感覚。
    瞳に通う血が、魔力が、瞳孔をぐりぐりと動かす。
    ミクの中にある狩る者の血が目覚め始める。
    地下に流れる魔力の流れが変わる。
    地面の下でぐるぐると循環していた強い流れが、地面を超えて、空中に吹き出す。
    土が動く。
    大きな地面の一部分が、左右に割れる。
    出てくるもの。
    手。
    そして体。
    腕を上げ、腰をぐりぐりと動かし、呑気に体を伸ばす女。
     「おー、眩しい太陽さん。久しぶり~。」
    シュウコちゃんはまだ朝の太陽にそう言うと、ぴょんと穴から飛び出てきて。
     「んで、ミクちゃんもおひさ~。」
    腕までずり落ちたパーカーを直しもせず、ニィと笑って手を振るその姿。
     「お久しぶりにゃ。」
    無理矢理押さえつけてる感情に熱が入っていく。
    圧がなければ、もうボコボコと沸騰してるかもしれない。
     「ん~……。」
    じっとミクの方を見てくるシュウコちゃん。
    でも、相変わらず目元は笑ってる。探りを入れてるとか、興味深いとかじゃなく
    弄って楽しいオモチャを見つけた時の瞳で、ミクを見てくる。
    耐えるにゃ
    今は
    ホント
    耐えるにゃ
     「あたしも聞いていい?」
     「何にゃ!?」
    吠える様なミクの声にも、シュウコちゃんは全く動じなくて。
    それがまた!もう!
     「あたしミクちゃんにそんなに嫌われる事したっけ?」

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