第一次偶像戦争 【594】 [シュウコ]
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第一次偶像戦争 【594】 [シュウコ]

2020-02-26 22:06

    土地を流れるマナの流れに触れ、変える。
    マナ自体が自然の流れに戻ろうとする力と
    アタシが動かしたい方向を改めて確かめて、調整しながら
    マナに結びついた土を、大地を、その力で動かしていく。
    しかし、ここでの伊織ちゃんの譲歩……あたしとミクちゃんの勝敗は
    伊織ちゃんにとってどうでもいい事になった可能性が高いっぽい。
    こら、最悪あのアホ落ちたな。
    …………
    ……うん。落ち着いてる。受け止められてる。信じたくは無いけど。
    ただ、アズ君が退場したのなら……。
    ……ミクちゃんを呼んだ手前、今更あたしを引き込むみたいなんもアレか。
    ……最初からミクちゃんを……って線は無いわな。
    あたし達が居るかどうか、居ても戦闘に介入してくるかどうかは完全な水物だったし
    そっから分かれたのも完全に偶然。
    そういった流れまで常に想定してミクちゃんにスタンバらせといたとすると
    ミクちゃんはほぼすべての時間をスタンバってる事になる。寝てる時間も無いでしょ。
    しっかし、ミクちゃんも災難やな。
    あたしがこんな状況になったから、すぐさま呼ばれて、飛んできて
    そんで半分ぐらい梯子外された状態。
    ……で、これ言ったらキレられるんよね、きっと。ミクちゃんは勝てばいいんだし。
    でも、あたしの立場からすると、やっぱやる気の度合いが違うんよね。
    面倒くさいから適当にあしらって負けて終わりにしよかってぐらいの
    ほぼほぼゼロだったのが、まぁやったろかぐらいにはなってる。確実に。
    だって、流石にミクちゃん相手にしたあと、またミサイルの雨やらは無理でしょ。
    ミクちゃんと戦ってる間に、また別の攻撃方法の準備とかも出来ただろうし
    星井美希の死体を抱えてどうこう以前に
    あたしもここで終わる可能性はかなり高かった。
    ……まぁ、今更生き残った所でどうするよってのはあるけど
    退場したアホをおちょくれる権利を得るとなると、悪い話じゃないよね。
    ……ていうか、悪い話どころか全然アリ。
    危うい場面を託した上に、運び屋までさせといて胴元が潰れるとか
    交渉如何によっちゃ、イジれるどころか、結構なもん買わせるまで出来そう。
    今度自分で買うつもりだったシャリオールの時計を買わせるか
    それか、それに合うコートかバッグか……。
    ……俄然やる気が湧いてきた!やっぱモノがかかるとやる気が違うな!

    光が差す
    ボロボロと土が落ちてきそうで
    ちゃんとコントロール出来てるから土埃すら湧かなくて。
    開けた空
    思わず手が目を隠す。
    光を遮る様な仕草をしても
    瞳孔が開いた瞳に差し込む光の先に感じる、朝の青い空に少し心が揺さぶられて。
    地面の下も悪くないけど、やっぱ強制されて潜るもんじゃないわな。
    さてと。
    抱いていた星井美希の死体を隣に寝かせて、あたしは体を持ち上げる。
    腕。肩。体。脚。
    ぐーっと全部を縦に伸ばして、そっから横に
    バキバキと関節や背骨を鳴らす勢いでぐりぐりとまげて。
    横から照らす太陽の光が目の片側を焼いてくる。
     「おー、眩しい太陽さん。久しぶり~。」
    呑気に挨拶なんてしちゃって。
    で。
     「んで、ミクちゃんもおひさ~。」
    視線を向けて、挨拶と一緒にまだ土っぽい感じが残る手を振る先。
    見なくても十分に分かるぐらい、バリッバリの魔力を展開し
    魔方陣を大量に抱えたミクちゃんの姿。
    うわ~、ものごっつ睨んできてる。
    地面の下に居た時から魔力的にガチっぽいなとは感じてたけど、マジのマジやね。
    それでも、未だにバフが入ってないんは、律儀なミクちゃんらしいっちゃあらしいわ。
     「お久しぶりにゃ。」
    言葉が重い。いつものミクちゃんみたく、口の先の方で「にゃ」じゃなくて
    もう喉の奥から「にゃ」が出てる。にゃ。
     「ん~……。」
    でもなぁ……。
    …………
    ……あたしを本当に殺そうとしているミクちゃんをまじまじと見て。
    色々と口にしたい言葉は出てくるけど
    やっぱこう、ピンとくる様なもんはないな。原因的な所で。
    ミクちゃんの姿を見れば、思い出したり察したりするかとも思ったのに
    全くの収穫無しとは意外。……あたしって、そんなアレやったっけ?
    ……まぁ、いいや。
     「あたしも聞いていい?」
     「何にゃ!?」
    あたしもって言ったけど
    そういやさっき話をしていいか聞いてきたんはミヤコちゃんやったな。
    そんで、そんな微妙なすれ違いなんてどうでもいいと言わんばかりの
    間髪入れずのミクちゃんの返事。
    もう始めたくてたまらないってとこ?
    ん~、まぁ、それでもいいけど、やっぱ聞いておこ。
     「あたしミクちゃんにそんなに嫌われる事したっけ?」
    あたしがイジる側で、ミクちゃんがイジられる側みたいなんは分かるけど
    そこまで傷つけたりするような事あったかな?
    それか、細かいところが積もり積もってって奴?
    それが原因なら納得できるし、ミクちゃんがあたしを殺して気が済むならそれでも。
    今日、この日に殺される気は無いけど。
     「あるっちゃあ、あるけど
      ぶっ殺したい一番の理由は個人的な妬みにゃ!」
     「へ?妬み?」
    あたしを?
    ぶっ殺したい理由が?
    妬み?
     「えっ?ミクちゃんあたしになりたいの?」
    あたしの言葉にミクちゃんの口がゆがむ。
    何か言いたくて仕方が無いけど、唇を噛み、喉の動きを押さえつけ
    必死に声を殺してる様に見えた。顔も真っ赤になってる。
     「気に障ったんなら謝るわ。ごめん。」
     「うるさい!」
    語尾の「にゃ」が消える。にゃ~。
     「なんで!どうして!」
    ミクちゃんの視線が一瞬下がり、そしてまたあたしを殺すような目がこちらを向く。
    ただ、ミクちゃんの瞳は潤んでいた。
     「……シュウコちゃんは……。」
    声。
    ん?とか聞き返した方がいい?それとも待った方が?
    こういうの慣れてないから困るわ~。
     「……シュウコちゃんは……
      ……ケイさんの事を、どう想ってるにゃ?」
    は?
    え?
    何て?

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