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第一次偶像戦争 【595】 [シュウコ]
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第一次偶像戦争 【595】 [シュウコ]

2020-02-28 22:08

     「いや、どう想ってる聞かれても……。」
    この流れって、まさかあたし知らんうちに色恋沙汰に巻き込まれてたみたいな?
     「好きか!嫌いか!どっちなの!」
    まだ朝の濃さが残る空にも届きそうな程の、叫びとしか言いようのない声が
    あたしの少し前から発せられて、体の前面に衝撃を残して通り去っていく。
    ……これは面倒な事になった。
    そういうのを外野からおちょくるのは好きだけど
    当事者になるのだけは避けたかった。
    だって絶対に面倒になるし。
    だって、今、ものすごく面倒な事になってるし。
     「あれよね?男と女的な奴よね?」
     「はぐらかさないで!」
    いや、はぐらかす事が無いよう、事前に聞いたんやけど……。
    困惑する私を他所に、ミクちゃんは血走った瞳であたしを睨みつけてきてて。
    ……こりゃ、コミュニケーションが成り立つ状態やないな。
    イエス・ノーレベルで淡々と事実を言っていくしかないわ。
    ……正直、もう適当に茶化してミクちゃんの爆発を誘発させた方が楽やけど
    絶対後に残るからな~。戦争後の事まで考えて天秤にかけたら
    やっぱここでミクちゃんに吐き出して貰うのが一番楽そう。
    出来ればずっと先送りしたいけど。
     「無いよ。ええ人やと思うし、友達やと思ってるけど
      異性間の感情みたいなんは全く。」
    今更性別云々っていうのもアレ。ただ、やっぱりどっちかに寄るわな。
    ケイさんは……ケイさんって感じが一番強いのはご愛敬。
     「何で無いにゃ!?
      あんなに素敵なのに!」
    えぇ……無いなら無いで、まだキレられんの、あたし……。
     「んなこと言われても無いもんは無いし……。」
     「じゃあなんで……どうして……。」
    なんでもどうしてもあらへんて。無いもんは無いし。
    大体、何であたしがそんな責められんの?ミクちゃんの好きにしたらええやん。
     「ミクには出来ないのに……どうして……。」
    勝手にキレられて、勝手に悩んでる。
    完全な外野なら、ニヤニヤ見てりゃええだけやから楽やのに
    微妙に内側に居てるから、あたしも困ってる。
    何か言った方がいい?「あたしはミクちゃんの味方よ」みたいな。
    いやでも、この状況じゃ逆効果か……。
     「どうしてシュウコちゃんなの!?
      なんでミクじゃないの!?」
    ミクちゃんの視線が再び上がってくる。血走った瞳から涙がこぼれ落ちていた。
    ここまで真剣に悩んでる相手にも、心のどこかで
    横からツンツン突いてみたいみたいな感情があるんやもん。心底クソ野郎やと思う。
     「話が見えんから順追って行こう。
      ミクちゃんそういうの得意でしょ?」
     「順を追うも何もないにゃ!ミクはゼロで!ミクは持たざる者で!
      だから!……だから、ケイさんを笑顔に……あんな表情に……。」
    怒りに懇願のような色が入ってくる。
    そしてそれを見て、あたしはなおいっそう困惑の渦に飲み込まれていって。
     「ゼロっていうのは何?
      ミクちゃん告白して振られたの?」
    もう知らん。だから踏み込んでいく。
     「告白なんて出来る訳ないにゃ!
      持たざるミクがそんな事言ったら、ケイさん優しいから困るでしょ!」
    優しいというか、音楽のこと以外よーわかってないというか。
    あんま分かる気も無いというか。
     「じゃあ、あたしがケイさんに惚れられてるって事?」
     「ふざけるな!」
    聞いたあたしの咽が裂けそうになる程の絶叫。
     「ミクちゃんに出来なくて、あたしが出来るってなったら
      そういう事かなって思うのは自然じゃない?」
     「ケイさんが惚れてるのは音楽だけにゃ!
      絶対にアンタなんかじゃない!」
    ついにアンタとなったか。
     「ん~……
      ……てことは、そこら辺のセンス?」
    思い出して、思い起こして、何となく引っかかった所。
     「やっと分かったの!?
      なんでアンタなんかがそれを!」
    ……いやぁ、まぁ確かに、ケイさんとセッションしたり
    何気なく呟いた言葉に音楽をつけてもらったり
    逆に演奏して貰った曲に歌詞を書いたりはあったけど
    そんなん割とみんなやってるやん。
     「ミクちゃんだってあるんじゃない?
      ていうか、あたしだって別に狙ってやってる訳でも無し
      上手くケイさんが拾ってくれてるだけだから
      ミクちゃんもやりゃいいじゃん。」
     「それが出来たらこんな事にはなってないにゃ!」
    それが出来たら?
     「なんで出来ないの?」
     「だって……。
      ……だって、ミクの時は……
      ……だって、シュウコちゃんは……。」
    だってもクソもないやろって言いそうになる。
    もう何というか、ミクちゃんと付き合うことの面倒くささが相当強くなってる。
    先を考えるとやっぱりギリギリの所で踏みとどまっちゃうけど。
     「ミクには、あんな表情を向けてくれない……
      ミクは、ケイさんにあんな感情をあげる事は……。」
    あんま意識せんかったというか
    ミクちゃんとケイさんが演奏してる所とか見たこと無いけど
    あたしの時と何か違うって事なんかな?
    そもそも、あたしそこまでケイさんに注目した事が無いから、よう分からんわ。
    ケイさん本人よりケイさんが創り出す曲や歌の方に集中した方が楽しいし。
    やる方でも聞く方でも。
     「ミクちゃんはケイさんの事が好きなんだよね?」
     「……だから何にゃ。」
     「恋愛のパートナーと
      ケイさんにとっての音楽みたいに才能を発揮する場所でのパートナーは
      全く別物やと思うよ。
      下手に同じ方向向いてると、いざこざも多いみたいなの聞いた事あるし。」
     「それは産まれてから死ぬまでの時間の限界が明確な存在の理屈にゃ!
      今のミク達は違うでしょ!
      永遠に近い時間があるのなら、ベターなんて何の意味も無い!
      今のベストでもないのなら、先なんて……。」
     「つまり、音楽的な相性も良くて、肉体的、精神的な面でも合ってないと
      ミクちゃん的にはダメなのね。」
     「肉体的って何にゃ!この色狂い!」
     「えっ?だって、異性として好きなんでしょ?」
    男と女的な好きってなると、まぁ、そうなるんじゃ……。
     「この好色の淫乱!
      すぐそうやって快楽に結びつけようとする!」
    ボロカスに言われてる筈なのに、あんまダメージ入って無いんはなんでやろ?
    今のミクちゃんがアレすぎるのか、ある程度自覚があったのか。
    ……何かダメージが無い事に凹みそうやわ。
     「ケイさんにとっての全ては音楽でしょ!
      だから……だから……。」
     「でも、ケイさんだってずっとピアノの前に座ってたり
      楽譜に向かってペン走らせてたりって訳でもないやん。
      水とワインとジンは飲むし
      レイ君とアリスちゃんが無理矢理ご飯食べさせようとしてる時間だってあるし
      一緒に居て休まるとか、そういう存在も必要なんじゃない?」
    そういう存在じゃ満足出来ないの?やっぱり音楽も欲しい?
     「それだって……。」
    あたしの方を睨む力は全く衰えてない。
    こりゃ、まだあるな。ていうか、ケイさんを中心の話の癖に
    ケイさんから離れた所でギャーギャー言ってるから、あたし的には凄く不毛に思える。
    あれか、アッパーなタイプがミクちゃんで、ダウナーなタイプが麗華ちゃんか。
    ……あんな感じのドロドロの恋愛模様に巻き込まれたと思うと……。
    ……なんつーか、散々他人おちょくってきたツケ払わされてるんかな……。

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