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第一次偶像戦争 【605】 [ミク]
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第一次偶像戦争 【605】 [ミク]

2020-03-18 22:44

    バッと瞼が開く。
    広がる空。まだ朝の色の光。
     「シロウ君!?」
    飛びあがって、叫んで、体が揺れて、覆い被さっていた何かがズレた。
    手。体。
    布の感触。端の方がベッドの上から落ちているタオルケット。
    さっきまで戦っていた荒れ地の、ど真ん中に置かれたベッドの上に、ミクは居た。
     「お目覚めになられましたか?」
    傍。すぐ隣からの声。その声に、不意に驚いた猫の様に体が飛び跳ねそうになる。
     「ッ!ミヤコちゃん!?今どうなってるにゃ!?」
     「シュウコ様とシロウ君が去ってから20分程でしょうか。
      お二人の認識では、戦闘は終わったことになった様です。」
    20分!?そんなに経ってない!なら追いつける!
     「分かった!方角教えて!」
     「その前に、シロウ君から伝言を預かっておりますので
      お伝えして構いませんでしょうか?」
    伝言。
    スッと帳が落ちる様に、跳ねた心が沈んでいく。感情が引いていく。
     「……何にゃ?」
    声。喉。変な震え。
     「殴って本当に悪かった。あとで説教でも何でも受けるから
      とりあえず今回はわがままを許してくれ。
      そいじゃ行ってきます。との事です。」
     「何……それ……。」
    シロウ君に殴られた所。シュウコちゃんに叩き割られた頭よりも痛む場所。
     「シロウ君もミクを……ミクを捨てるの……?」
    あんなにずっと一緒に居て、いっぱいお話もしたのに
    どうして、ろくに関わった事も無いシュウコちゃんと……
    …………
    ……またミクだから?
    ミクがダメだから?
    ミクが勝てなかったから?
    それとも、もっと前、一番最初から
    ミクがミクだから?
    ミクがミクだから、こうやって選ばれないの?
    ミクがミクだから、ずっと捨てられ続けるの?
    誰からも求められなくて
    誰を求めても、相手にされなくて
    誰もミクを連れて行ってはくれなくて
    誰もミクと一緒に歩いては……
    ずっと、ずっと、これから先も、永遠に、ミクは独りで……
    突き上げる
    熱が、痛みが、胸から咽を通って、目の奥、頭の上まで
    熱持つ剣が、ミクの体を貫く
    ああ……ああああ…………
    指先がビクビクと動く。腕に力が入らない
    足も動かなくて、ただ、痛くて、ただ、辛くて
    心と体が、膨れた感情によって引きちぎられそうで
     「うわぁああああああああああああああああああああ」
    喉が勝手に音を作る。ミクの中にあるどろどろとした醜い嗚咽を
    ミクの意思と関係なしに、外に吐き出してしまう。
    目が痛い。目が熱い。
    ボロボロと熱が塊になって頬を伝って落ちる。汚れた跡を残しながら
    ミクの醜怪を体の外にも刻み付けていく。
    嫌だ
    見ないで
    誰もミクを
    こんなミクを
    ビクンビクンと電気を流されたように震えていた腕と手が、バッとミクの顔を覆う。
    口の中に鉄の味が広がっていく。よくわからないけど、きっと勢いとか考えずに
    手を顔にもってきちゃったんだろう。
    まだ痛みを伴う振動を続け、音を発する喉に、鉄の味が落ちていく。
    顔を覆っても、何も変わらない。何も隠せてない。隠してもどうしようもない。
    ミクは……ミクは……。
    肺に走る血管を引っ張られた様な痛みが走る。感情の苦しさに、息の苦しさが混ざる。
    この痛みで、この苦しさで、死んでしまえたら。消えてしまえたら。
    そうしたら、皆ミクを見てくれる?
    そうしたら、皆の記憶に残してくれる?
    どうしたらミクは、誰かの中に居ることが出来るの?
    ミクだけじゃ答えが分からない。
    他の誰かに聞いても、誰も本当の事を教えてくれない。
    それは、ミクが嫌いだから?
    本当の事を言って傷ついたミクが面倒な存在になるのを避けたいから?
    それとも、最初からも、これからも、誰の中にもミクは居ないから?
    居ないといえる程に、気づいてももらえないぐらいに、矮小な存在だから?
    顔を覆う指の間から涙が零れ落ちる。
    腕を伝う涙が、荒野の風に晒されて冷たくなっていく。
    それでも、目は熱くて、痛くて。
    どくどくと血が送り出される様に、涙が出てきて。
    ミクはどうすべきだったの?
    何が正しかったの?
    ミクがミクでしかいられないのなら
    誰にも求められず、誰を求めても届かないのであれば
    それを抱えて、生きていく強さを身につけるべきなの?
    そうやって生きることに意味はあるの?
    それとも罰?
    ミクがミクである事自体が。
    分からない。
    教えてよ誰か。
    傍に居てよ、誰か。
    ……シロウ君……
    ……どうして……

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