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第一次偶像戦争 【608】 [ミク]
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第一次偶像戦争 【608】 [ミク]

2020-03-24 22:55

    泣いて、泣いて。
    それでも空は青くて。
    ミクの想いなんて、ミクの苦しみなんて、全く意に介さなくて。
    きっと世界はそんなもので、ミクの存在なんて、その程度のもので。
    ……分かってる。でも、それでも
    ミクはミクを通してしか、この世界を感じる事は出来なくて。
    ミクがミクである限り、ずっとこれは変わらなくて。
    諦めることも……多分、出来なくて……。
    自暴自棄にも……既に半分そうなってるかもしれないけど……。
    ……それでもきっと、ミクは全てを投げ出す事も、全てを諦めることも……。
    …………
    ……
     「……ミヤコちゃん……迷惑かけてごめんにゃ……。」
    声。出る。喉が痛いけど、しっかりと声は出せる。
     「迷惑だとは思っておりませんので、どうぞお気にせず。」
    落ち着いた声。嘘のない色。
     「……うん……それでも、ごめんね……
      ……そして、ありがとう。」
    ミクの方から先に謝ったのは、ベッドに寝かせて貰った上に
    勝手に大泣きして、迷惑をかけたかもしれないと思ったから、というのも確か。
    けど、きっと一番大きな所は
    ミヤコちゃんに迷惑だと、こんなミクはみっともないと、思いたかっただけ。
    またそうやって、他人を利用して自分を形作ろうとしてる。
    だから、ミクは独りでいるべきで。
    でも、独りだと今もずっと泣いていたと思えて。
    ミクはそんな奴。どうしようもない子。
     「……あの基地まで行ったら、いつでもミヤコちゃんとは連絡とれる?」
     「大丈夫だとは思います。
      少なくともミクさんの方からアクションがあった事はこちらに伝わりますし
      私が手一杯の状況なら、それをちゃんとミクさんの方に
      お伝えする事も可能ですので
      何の反応も無いという事は無いと思われます。」
     「そっか……
      ……ひょっとしたらだけど、また連絡とるかもしれないにゃ。」
    今ミクの中にあるもの。
     「分かりました。お待ちしております。」
     「……うん。ありがとう。」
    ミクがミクである事を、辞めることが出来ないのであれば。
    ミクがミクである事を、諦められないのであれば。
    ミクがミクを、変えられないなら。
    ……それなら、ミクがミクの手で、この世界の方を変えるしかない。
    馬鹿の発想だし、現実問題出来るとも思えないけど
    今のミクが前に進むには、そこを目指すしかない。
    その為には、こんな所で負けてなんていられない。
    ミクはまだ消えてない、ミクはまだミクのままで変わってない。
    なら、ミクは負けてない。シロウ君を失いはしたけれども、負けてない。絶対に。
    だから次は勝つ。
    勝って変える。周囲を、世界を変えてみせる。その為に。
    手、腕、指先に血が、力が通う。
    ……うん。
    浅く頷いた後、ミクは体に引っかかっていたタオルケットを畳み
    両足をベッドの外へと出した。よく見たらベッドの下にミクの靴が綺麗に置かれていた。
     「……ベッドありがとうにゃ。
      ……ミクはお家に帰るにゃ。」
     「追わなくてよろしいのですか?
      必要なら情報の提供も可能だと思われますが。」
     「……それは次に取っておくにゃ。
      ミクの方から借りばっかり作る形になっちゃってるけど。」
     「……分かりました。
      帰りのゲートは如何いたしましょう?」
     「お願いするにゃ。」
    シロウ君の件もあるし、一度帰って、いぬ美ちゃんに伝えておいた方がいい。
    そこから先は……。
    ……いぬ美ちゃんの所から離れる気は無いけど、ここで立ち止まる気も無い。
    そうなると……。
     「……ミヤコちゃんやゲンブ君、それに伊織ちゃんって
      やっぱずっと忙しいにゃ?」
     「忙しい……のでしょうか?
      常に仕事はしておりますが、そこにあまり感情は持ってない様に思います。」
    むぅ、AIだから命じられて動いてが当たり前なのかにゃ?
     「それじゃあ、ミクの相手をお願いしたら来てくれる?」
     「……確約は出来ませんが、マスターの許可含め恐らく大丈夫だと思われます。
      しかしながら、状況如何によってはお断りするタイミングもあり得ますから
      その点をご留意して頂くことになります。」
     「十分にゃ。ありがとうにゃ。」
     「いえ、許可に関する部分を今すぐマスターに聞いてみた方がいいですか?」
     「う~ん……
      ……うん、お願いするにゃ。」
    こういう会話をしたっていうのは遅かれ早かれ伊織ちゃんに伝わるだろうし。
     「それでは……。」
    スンとミヤコちゃんの意識がミクから離れた気がした。
    靴に落としていた視線が上がる。
    青い空。まだ朝の青。
    ……シロウ君はもう別の空を見てるのかな?

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