ユーザーブロマガは2021年10月7日(予定)をもちましてサービスを終了します

第一次偶像戦争 【610】 [シュウコ]
閉じる
閉じる

新しい記事を投稿しました。シェアして読者に伝えましょう

×

第一次偶像戦争 【610】 [シュウコ]

2020-03-28 22:44

    広がる葉の僅かな隙間を抜け、森の中に入ってみれば
    ボコボコと歪に膨れた巨大な樹の幹があたしたちを迎えてくれた。
    元の世界だと樹齢千年とか余裕みたいな樹が、そこかしこに生えてる森だけど
    中は木漏れ日が十分に差していて明るくて
    足下には白く小さい花を付けた草が
    ふかふかとした地面の上に、ずっと先まで群生していた。
     「いーところだな。」
    子供の言うセリフじゃないけど、あたしも割とここ気に入ってるんだよね。
     「シロウ君所とは違う?」
     「ん~、うちはもっと樹がヤバい感じ。
      地面じゃなくて絡み合った根の上で生きてるイメージ。」
     「あー、やっぱ相当【緑】が濃い所に拠点作ってたんだ。」
    そんで伊織ちゃんと接点があったって事を考えると
    基地周辺の可能性は高いよね。
    大体絞れてきたかな?今更、大した意味は無いし
    森を特定したとしても、その中に隠れてる訳だから
    砂漠にゴマ一粒は極端だとしても
    大都会で窓を除いた部屋の写真から目的の建物を探すぐらいの難易度はありそう。
     「シュウコねーちゃん達も隠れながら?」
     「そゆこと、幾つか隠れ家作ってる感じ。
      ただ、余所を監視する時間も多かったし
      作ったはいいけどってなってる所も多いわ。」
    折角あたしがマナの流れを繊ッ細に調整してバレない様細ッ心の注意を払ったのに
    使ってないとか、勿体ないオバケが出るわ。見た事ないけど。
     「いいなー、オレなんてこっち来てから殆ど森しか見た事ねーぜ。」
     「外出なかったん?」
     「ミクねーちゃんがあんま動くなってさ。開戦してからは全く。
      そんで外へ出る事は勿論、ギターの練習すらろくに出来ねーんだもん。
      準備期間から今日までやったことを日記につけてたら
      寝て起きて飯食って授業受けたで8割方埋まりそうだぜ。」
     「授業て。」
    いや、授業て何よ。マジで。
     「ミクねーちゃんも暇だったんじゃね?
      普通の人間の子と変わらない様にって、色々叩きこまれた。
      普通の人間と変わらない様にってんなら
      子供同士の関係が無い時点でおかしいのになー。」
     「うわ~……
      ……もしかして殴ったのって……。」
     「ん?あれは全く関係ねーよ。
      好きな事は出来なかったけど、別にそこまで嫌じゃなかったから
      俺も暇つぶしにはなったしなー。」
    比較対象がノース君とカノン君だからシロウ君は凄く活発に映るけど
    別にシロウ君も問題児とかそんなんじゃないのよね。
    今日だって、先生やってたミクちゃんよかずっと大人……
    ……とはまた違うか。考え方がドライだから大人っぽく見える感じ?
    このドライさは割と好み。年下は今ん所範疇じゃないけど。
     「っと、そろそろだから静かにね。」
     「ん?なんで?」
    聞き返してはきたものの、シロウ君はちゃんと音量を下げてくれていて。
     「驚かせる気だからよ。」
     「あぁ、なるほど。
      じゃあオレはシュウコねーちゃんの後ろに隠れてた方がいい?」
     「お願い。」
    あたしが先に突入して適当に話した後
    唐突に呼び寄せるってのもアリだろうけど
    会話してる横からひょいと出てきた方がシロウ君らしいっちゃあらしいよね。
    ……うん、それでいこう。
    隣。
    速度を落とすシロウ君に目をやって、気が付く。
     「っと、あとその死体はあたしが預かるわ。
      持ってきてくれてありがと。」
    途中で渡した後、ずっと持っててくれたもの。
     「別にいいよ。オレ男だし。」
    特に悲しくも嬉しくも無い平常の表情のまま
    お姫様抱っこの形で渡される死体のシュールさったら無いわ。
     「紳士やねー。ミクちゃんの教育の賜物?」
    あたしは受け取った星井美希の死体を小脇に抱える。
    アズ君の魔力のおかげで、まだ死体は暖かかった。
     「ミクねーちゃんにも言われるけど
      そこらへん一番面倒なのはアリスの方だなー。」
    あー、ミクちゃんが直接なら、アリスちゃんは嫌味言ってきそう。
    北斗君の影響か、ノース君がそこら辺、本当に徹底してるから余計にね~。
     「アリスちゃんも今何してるのかしらね~?」
    ちょっとつついてみて。
     「知らねー。
      正直、会ったらまたなんか言ってくると思うから最後まで会いたくねーわ。」
    ミクちゃんの小言はオッケーでアリスちゃんの小言はアウトっていうのは何だろ。
    やっぱあったり?いろいろあっちゃったり?
     「案外すぐに会うかもしれないよ。」
     「そんときゃ敵として会うことを祈ってる。」
    敵か~、まぁ、会うとしたら、どちらかというと味方側よね~。
     「ほぼほぼ確定で敵として会うモモカちゃんはどーよ?」
    どーよ?どーなのよ?
     「どーよ言われてもオレが戦うか分かんねーしな。
      あ~でも、実力的には一番下だろうから、オレに回ってくる率は高いのか。」
    ちがう。そうじゃない。聞きたいのはそこじゃない。
     「……どうだろな……
      ……やっぱ今の強さが分かんねーことには、勝てるかわかんねーな。」
     「まぁ、そりゃね。」
    気持ちの方はどーなんよってのは聞かんとこ。
    あたしも大概アレだし、年下相手にしつこいのも問題。
    少しは時間あるだろうしね。今ウザかられたら後が面倒だわ。
     「舞さんとこと戦う時は、いきなり生きるか死ぬかになるだろうし
      そん時までに出来る限り強くなっとかなきゃなー。
      体も訛ってるからまず感覚取り戻す所からになるけど。」
    ミクちゃん助けた動きを見る限り心配してないけど
    本人はなんかあるんかな?引っ掛かりとか違和感みたいなん。
    …………
    ……さて。
     「そろそろだから。」
     「分かった。」
    声が消える。背後のシロウ君の速度が落ちる。
    無言のまま進む、森の中。
    感覚。
    確かに触れて、抜ける。
    視覚が得るもの
    嗅覚で感じるもの
     「お帰り。
      んで、お疲れ様でした。」
    驚かすよか前にかけられる声。
    …………
    ……
     「……何やってんの?」
    ピザ窯にピザピールを入れるアズ君に向けて、あたしは最もな言葉を投げた。

    広告
    コメントを書く
    コメントをするには、
    ログインして下さい。