第一次偶像戦争 【613】 [三浦梓]
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第一次偶像戦争 【613】 [三浦梓]

2020-04-04 22:22

    感知妨害のバリアを超えて見えたのは、モスグリーンの屋根と藍色の瓦。
    そして綺麗に草を刈り取っておいた筈なのに
    緑と白の絨毯によって浸食されている庭。
    こればっかりは仕方ないが、果たして草の高さはどれぐらいか。
    【黒】の影響も濃い土地だから細かい虫の心配はあまりしてないけど
    外のピザ窯を使うのにも億劫なレベルだとちょっと困るな。
    ミッちゃんに加えて貴音ちゃんも居るんだから
    家の中のオーブンもフル回転せにゃならんだろうし。
     「シュウコちゃんはまだ帰ってないみたいですね。」
    魔力に気配に、確かにシュウコの感じは今のところ全く無い。
     「ぽいね。てことは、美希ちゃんの死体もまだ無事なのかも。」
     「うぇぇ、じゃあミキ自分の死体とご対面みたいな感じになるの?」
    後ろからのツッコミはもっともで。
     「そういえばわたくしの死体は美味しかったですか?」
    ギクリとなる質問。でも、死体って事は、俺に向けてじゃないよな。
    俺は食べてるわけじゃないし、むしろ食わせてる方だし。
     「酸味があって、スパイシーでした!
      あっ!もちろん残った魔力の味です!
      でも肉体の方も味が濃くて美味しかったです!」
    ……凄い会話だなぁ。
     「あぁ、やはり……しかし自分で自分の体を喰らう場合と
      他者の体を喰らう場合では感じ方が大分違いますから
      少しミチルが羨ましいです。」
    ……俺も大概だけど、貴音ちゃんも大分通常の感性とはズレてるよな。
    通常が元の世界のそれである事自体がズレてるんだけど
    もはや最初のメンバーでさえ、共通して持っている認識がそこにしかないから
    こればっかりはどうしようもない所がある。
     「そうなんですね!
      あたしはあたしの体を食べた事無いんで知りませんでした!
      一体どんな味なんでしょう!?」
    妙な盛り上がりを見せる会話と、近づいてくる屋根。
     「着いたけどどうするの?
      食事の用意とか時間かかりそうならミキ一度寝たいの。」
    言葉の終わりは大きなあくびの音で。
     「大して時間はかからないと思うけど
      横になりたいのならあの離れを使うといいよ。
      畳敷きだから縁側から入ってそのまんま横になれるし。」
     「それは良いことを聞いたの。
      そんじゃミキは寝て来るね。あふぅ……。」
    美希ちゃんはそう言うと、ふよふよと藍色の瓦の建物の方へ飛んで行って。
     「ショウマさんも横になったらどうですか?」
     「アタシはいいわ。美希ちゃんも一人でゆっくり寝たいだろうし。」
    美希ちゃんも大変な目にあった訳だけど
    受けたダメージで考えるなら一番ショウマ君が酷い筈なのに
    そういった素振りも見せず、それどころか他人も気遣えるのは凄いな。
    男の意地という面もあるかもしれないが、根がそういう感じなんだろう。
     「それならお風呂でも沸かそうか。
      沸くまではバーで時間を潰してるといいよ。
      お酒は勝手に開けても大丈夫だから。」
     「あら、それじゃあお言葉に甘えちゃおうかしら。」
    冷凍庫のパン生地出して、そっからピザの生地を作ってちょっと寝かせてだから……
    ……いや、寝かせるといっても長くて20分ぐらいだし
    その間に上に乗せる具材とか、人数多いし、他の料理とかもせにゃならんから……
    ……やっぱ一人じゃ厳しいか。
     「ミッちゃんお風呂お願いしていい?」
    疲れてるのに申し訳ない。
     「はい!それ終わったら外の準備と窯の火入れですね!」
     「話が早くて助かるわ。」
     「あっ!アズキも手伝いますよっ!」
    ぶわっと俺の隣までアズキちゃんが一足跳びに飛んでくる。
     「いやあ、お客さんに手伝わせるのは悪いよ。」
     「いえいえ!アズさんも大変でしたし!
      これからの事も考えないといけませんから
      アズキに出来る事があれば何でも言ってくださいっ!」
    胸に手を当て自信満々に言うアズキちゃん。
    これは断る方が悲しませる結果になるな。
     「わかった。
      それじゃあ、あそこのピザ窯の向こうにある畑から野菜を収穫してきて貰えるかな。
      食べられるサイズに実ってるのはもう全部取ってきちゃって大丈夫だから。」
     「わっかりましたっ!
      カリンちゃんもいこっ!」
     「はっ、はいっ!」
    ぎゅんと、落ちる速度よりも早く飛んでいくアズキちゃんを慌てて追うカリンちゃん。
    とりあえず持ってきてくれるであろうトマトとバジルに
    冷蔵庫にあるモッツァレラでカプレーゼを作って
    それをつまんで貰ってる間に、トマトと卵を炒めて暖かいモノを足していこう。
    しっかしアレだな、マルゲリータにするとカプレーゼともろ被りになるな。
    野菜を使ったオルトラーナと、あとアンチョビがあったと思うから
    ロマーナ辺りも最初に焼いちまうか。
     「おれにも何か手伝える事があれば言ってくれ……。」
    もう少しで地面という所で、カズキ君が声をかけてくる。
     「それならミッちゃんの手伝いをお願いしようかな。
      ミッちゃん、カズキ君に色々教えてあげて。」
     「わかりましたっ!」
    拠点の中では大きなサイズの所だから、何とかこの人数でもいけそうだな。
     「それではわたくしはショウマの相手を致しましょうか。」
     「それは光栄だわ。楽しみね。」
    後ろからの声。楽しそうな声。
    ……衣住は何とかなるとして、食はどうなるか未知数だな……。

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