第一次偶像戦争 【616】 [三浦梓]
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第一次偶像戦争 【616】 [三浦梓]

2020-04-10 22:00

     「こんなに料理があるのにお米系が一つも無いの。
      オニギリ無しとかセンスを疑うの。」
    テーブルの上に頭を乗っけた美希ちゃんはそういうとぷくうと顔を膨らませた。
     「いやぁ、申し訳ない。
      一応お米もあるにはあるんだけど
      今から炊くとなると時間がかかっちゃうから出せなくて。」
    時間的な問題の他に、量もあんまり無いから
    貴音ちゃんが気に入っちゃうと困るっていうのもある。
    貴音ちゃんの部分だけなら、小麦粉からの麺打ちスキルがあれば話は違っただろうけど
    残念ながら俺に出来ることは簡単な料理とパン焼きぐらい。
    その代わり、パンなら割と幅広く作れるから
    何とかそっちで満足して貰えるよう頑張りたいところ。
     「小麦粉はあるのですよね。」
    そう言うと貴音ちゃんは最後のナンの切れ端で陶器の容器に入ったカレーを綺麗に拭い
    そのまま口に入れた。
     「小麦粉はあるけれども、あくまでパン用の強力粉だから
      あまり期待はしない方がいいかも。」
    パスタにはデュラムセモリナ、麺だと今は春よ恋とかが有名だっけ。
    確か春よ恋はパン用に持ってきてたけど、ストックはあったかな?
    あと、ラーメンに入れる麺となると、かん水とかも必要だったり必要じゃなかったり?
     「ふむ……何事も挑戦……と行きたい所ですが
      こういった状況ですし、無理にお願いは出来ませんね。
      ……まこと……残念です……。」
    本気で残念そうな表情を浮かべながら、ナンが無くなった場所に新しいお皿を置き
    ピザへと手を伸ばす貴音ちゃん。
     「申し訳ない。」
    何を謝る必要があるかとも思うが、ホスト側なんだから仕方無しか。
     「……もし麺を打てる者が現れたのなら
      小麦粉を使わせて貰えますか?」
    質問に添えられた視線。ジッと俺を離してくれそうにない瞳。
     「こちらにも振舞ってくれるのであればって条件がつくかな。」
    流石にそれぐらいはいいだろう。
     「勿論です。では、その時はよろしくお願いします。」
    ……俺がミッちゃんの為にパン焼きのスキルを身に着けた様に
    貴音ちゃんの為にラーメンを作る技術を磨いてる子が居るっぽいな。
    多分だけどミカちゃん辺りか?
    身内のなんやかんやで手作りのラーメンを口にする機会は多かったけど
    大体調理組の、それも涼君が作ったものだったからなぁ……。
    これで冬馬君かサイネリアちゃんの首根っこ掴んで連れてきたらウケるな。
    あの二人も絶対作れるだろうし。
     「とは言っても、その時が来るかは未知数ですね。」
    呟くような貴音ちゃんの言葉に、テーブルの上から音が消える。
    当の貴音ちゃんはぐいとグラスのワインを飲み干し、空のグラスをテーブルに置いた。
     「アズはどの程度回復しましたか?」
    どの程度。
     「……日高舞相手は確実に無理って言えるレベルかな。
      フルの時の20%行ってれば御の字っていうぐらい。」
    正直20%は大分盛ってる。
    今食べているご飯が腹の中で落ち着くぐらいの時間はあるだとうと思って
    それを加味して20%。
    今現在だと、正直10%も怪しい所。
     「ふむ……わたくしも本調子には今少しかかりますし
      やはり最短で明朝といった感じでしょうか。」
    今。今日。明日。その夜明け。
     「……確かに不意打ち狙うなら今すぐにでも動いた方がいいよね。」
    貴音ちゃん的には、出来る事なら帰路につく舞さんを狙うか
    舞さんの居ない領土に先回りして侵入しておきたかった感じだろう。
     「先ほど勝率が上がったと言いましたが
      あれはあくまでわたくしが単独かつ真正面から戦った場合……。
      わたくしからすれば、一番勝ちに近い道は
      不意を打ち、そのまま押し切るというもの。
      侵入はわたくしだけでするとしても、失敗時のバックアップや
      失敗後の戦闘でアズが全力で戦える様
      死体を運んできたりすれば、それだけ察知されやすく……。
      しかしながら、それでも全員での戦闘を実行のであれば
      少しでも舞嬢の予想を外す為に
      出来るだけ早いタイミングで襲撃をかけるしかない様に思うのです。」
    そうなんだよな~。結局貴音ちゃんが単独で動いていた理由もそこ。
    一番強いというか、一番勝てるパターンがソロだから
    頭数はいらないどころか足手まといになりかねない。
    俺とは真逆。
     「どの程度の距離までは気づかれないっていうのが欲しい所だけど
      舞さんの場合、本当に勘だけで察知してきそうなんだよね。」
     「あ~……
      ……うん、何でもないの。」
    テーブルに頭をのっけた状態でストローで日本酒を飲む美希ちゃんの口が開き
    そして閉じる。
     「狙撃したのはりっちゃんだったからね。」
    美希ちゃんの隣に座るショウマ君から補足が入る。
     「そういう事なの。まぁでも、舞の性格からしたら
      ミキが居ることが分かってたら巻き込んできそうだけど。」
    ふむ。
     「初日の戦いかな?」
     「そそ。でもやっぱ参考にはならないの
      舞に敵意みたいなの飛ばしてないし。
      ミキも完全にスナイパーモードに入ってたから気配殺してたし。
      あぁ、でもそっちはショウマとか近くに居たから大して関係ないか。」
    化け物相手に思い込みは怖いから、ミキちゃんに自信があったとしても
    あくまで参考だったろうな。
     「……とりあえず先に決めておきたいことがあるんだけどいいかな?」
    とりあえず不意打ちの件は置いておく。
    明日の朝までじゃ準備や足並みが揃わないから
    行くのなら貴音ちゃん単独か、せいぜいそれに
    美希ちゃんが超遠距離からの狙撃でサポートが加わるぐらいだろう。
     「どうぞ。」
     「一体何なの?」
    全員の視線が俺に集まる。
    よし、これならちゃんと伝わるな。
     「舞さん討伐を俺達だけでやるか
      それとも目標を縛られていない他の面々にも声をかけるか。
      最初にそれを決めておこう。」

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