第一次偶像戦争 【663】 [日高舞]
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第一次偶像戦争 【663】 [日高舞]

2020-07-14 22:00

    止まる。追っていた背中が、何も無い海のど真ん中で急に動かなくなる。
    それを見た瞬間、ズンと、自分の中で眠りかけていた興奮が、重く、大きくなる。
     「ここらへんデ十分ですカね?」
     「直接的な影響はもう大丈夫かな。津波はもうどうしようもないね。」
    私に隠す気のない話し声。
     「フウカちゃんも残るンですよね?」
     「一応ね。ただまぁ、どう転ぶかは……。」
    二人の視線が同時に動く。私の方へ動き、そのままふり返る。
     「始める?」
    始めよ。ねッ、今すぐ。
     「その前ニ、舞サンの眷属の子達がどこに居るか教えてくれマスか?」
    意外な申し出……って訳でもないか。強い子二人が拠点から離れた訳だし。
     「留守狙うのが心配なら、ここに呼び出す?」
     「あー、それデもいいですが
      後々の事を考エて何人か潰シテおきたいンですよね。」
    ほぅ……こっちは意外な発言ね。
     「またぶっちゃけたわね。」
     「どうせここマで来たら勝ッテ残るか負けて封じらレるしかないですから。」
    確かにパッと見だと、もう策略を張り巡らせる段階じゃない様に見えるわね。
    ただ、全く何も出来ないかと言われると、違うんじゃないかしら。
     「それ、教えなかったらどうなるの?」
    だから期待してるわよ。
     「ん~、どうシまショウか。」
    サイネリアちゃんはわざとらしく隣を見て。
     「そん時は舞さんの城を襲う方向でいいんじゃない?
      嫌だって言われたらそれまでだけど。」
    あ~……。
     「やっぱ眷属の子達同士でって事よね。」
     「出来る事なら舞さんを俺だけで抑えて、彩音ちゃんを向かわせたいですけどね。」
     「やったらいいじゃない。必死になれば出来るでしょ?」
    抑えられるだけなら、結局死ぬけど。
     「後ろに不安ヲのこしてまで、やル事では無いデスね。」
    そりゃそうだ。
    ……でも、そういう事なら……。
     「少なくとも二人なら、うちの子達を潰せる程度の時間は稼げるって事ね。」
     「稼げなきゃ倒す事は出来ませんからね。」
    静かに糸が張っていく。背中の方で熱が溜まって、血で動くエンジンが音を立て始める。
     「わかった。それじゃあどうしましょうか?
      不意打ちからスタートするなら、私の方から連絡入れずに
      うちの子達を待機させてる場所教えようか?」
    まぁ、不意打ちになるかどうか分らんけど。方向は違えど海のど真ん中だし。
     「万が一すれ違って時間を無駄にするのもアレですし
      双方に伝えて近からず遠からずの場所で戦ってもらった方がよくないです?」
     「急に弱気になったわね~。
      時間稼ぐんじゃなかったの?」
     「時間を稼ぐために戦う訳じゃないですからね。
      即終わる可能性も考えないと。」
     「最初手を抜いてほしい?」
     「えぇ、そうしていただくと助かります。
      即座に終わらせられますから。」
    律君の強気な発言と、それを聞いても驚きもしないサイネリアちゃん。
    少なくとも覚悟は出来てるという訳ね。
     「んじゃ、お互い眷属の子達に連絡入れましょうか。
      このままお預け喰らったままじゃ、いつまで我慢出来るか分からないわ。」
     「我慢しすぎて萎えるっていうパターンはないです?」
     「無い。」
     「それは残念。」
    口から発せられる残念という言葉と
    声色や表情、所作から伝わる、どうでもよさげな空気と。
    私を煽れる程の自信があるのはいいことだわ。
    あとはそれが本当かどうかって所ね。まさかここまできてガン逃げとか……
    …………
    ……いや、有り得るかもしれない。ここまであからさまに煽ってきてるっていうのは
    逃げるための布石の可能性はある。
    眷属の子の存在をちらつかせたのも、遅れた私が眷属の子達の方に行って
    逃げた二人を戻って来させようと強迫するみたいな動きを期待しての事かも。
    そして当然二人は眷属の子達を見捨てて隠れると……。
    …………
    ……まぁ、それならそれでいいか。
    残りの日数を考えると、今日この場で私と正面からやって勝てないのなら
    今は逃げて、他のチャンスを狙うしか無い。
    勝つ為にはそういった事をしなきゃならないのなら、そりゃやるわよね。
    眷属の子達だって、勝たせるために来てるんだから納得するでしょ。
    むしろ短時間であれ日高舞を拘束させる事が出来るかもしれないんだから
    上手く誘導できたら万々歳よね。私自ら言うのもアレだけど。
    ふむ……でもまぁ、確認ぐらいはしておこうかしら。
     「二人は私に勝つ気よね。」
     「俺は勝つ気です。」
     「アタシもそうデスよ。
      てか、何で自分ダケみたいな感じデ言ってルんです?」
     「ん~、分水嶺だからこそ同じ気持ちだと信じてっていうのも理解出来るけど
      やっぱり彩音ちゃん自身でも言葉にして欲しかったって感じかな。
      不信感とか買ってたらごめん。」
     「むぅ……まぁイイです。
      そういう感情挟める程余裕がある戦いジャないでショウし。」
     「頼りにしてるよ。」
     「アタシもデスよ。」
    むぅ……とりあえず勝つ気なのに嘘は無さそう?
    このノリも全部演技で、最後まで逃げ切る事が目的だとしたら、大した演技派よね。
    …………
    ……よし、まぁ、どっち転んでも面白そうな事は分かったから十分ね。
     「じゃあ、改めてうちの子達に連絡入れるわね。
      そっちも伝え終わったら教えて頂戴。目印になるように魔力を開放するから。
      分かってると思うけど、開始の合図まで戦う気は無いし、安心していいわよ。」
     「了解です。」
    ……さてと、うちの子達はどんな反応するかしら?
    驚いて、そっから怒ったり、呆れたり?
    ……反応見たいし、とりあえず来いとだけ伝えようかしら。
    ……うん、そうしよう。
    「舞ちゃん敵の策略にはまって大ピンチ!
    今必死に罠をはずそうとしてるの!皆も助けて!」で行こう。
    …………
    ……何か既視感あると思ったら、あれね、小さい女の子向けの映画。
    愛と一緒に見に行ったの覚えてる。映画館で愛の声の大きさだけレベルが違ってたのよね。
    いや~、懐かしいわ~。それも、こんな所で思い出すとか。

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