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第一次偶像戦争 【665】 [冬月律]
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第一次偶像戦争 【665】 [冬月律]

2020-07-18 22:44

    舞さんから発言の許可を貰ったモモカちゃんは、ほぼ一方的に舞さんを責め立てた。
    本人は大真面目に言っているけれども
    非難されている側の舞さんは、ちゃんと聞いてはいるものの楽しそうにしているし
    モモカちゃんと一緒に来たミノリさんとユキヒロさんも
    小言を言うモモカちゃんの後ろから、落ち着いて事を見守っているためか
    どこか和やかな雰囲気があった。
    きっと元の世界の舞さんの家でも同じような光景が広がっているんだろう。
    あちらではまだ半日だろうが、こちらではもう二か月以上の期間が過ぎている。
    舞さんも寂しく思っている所があるのかもしれないなと、ふと思った。
    声。
    止まる。
    それと同時に、微笑ましさが漂っていた空間が霧散する。
    舞さんの方を向いていたモモカちゃんの視線が外れ
    俺と彩音ちゃんとが居る場所とは反対方向に、瞬間的に動く。
    ミノリさんとユキヒロさんも、モモカちゃんの後を追ってゆっくりとそちらに向いて。
    遠くに見える点。それが纏う魔力。
    ……予めこれから起こるであろう事の内訳を話しているせいか
    それ程速度は上げてないな。
     「来たわね。」
    舞さんはそう言うと、広げていた魔力を閉じた。
     「……はい……。」
    モモカちゃんの返事は一言だけ。
    でもその一言は、様々なものを凝縮してとても重いものに聞こえた。
    ……モモカちゃんは今どんな視線を投げているんだろうか。
    そしてこちらに近づく慣れ親しんだ魔力は、それに気付いているだろうか。
    これから起こるであろう事を知っている訳だから
    今更睨まれて気おくれみたいな事も無いと思うが
    身内同士の実戦を経験しているか経験していないかの差は大きい。
    今は大丈夫でも、戦闘が始まった後、きつく結んだ覚悟が綻ぶかもしれない。
    ……そこらへん一番経験しておいて欲しかったフウカちゃんが残ってるんだよな。
    う~ん、けど無理にっていうのもアレだし
    波のコントロールもしてもらわないと、勝ったとしても帰る場所がなくなってしまう。
    ……まぁ、俺達が勝っても負けてもフウカちゃんには次がある訳だから
    この戦争が終わるまでに、一度ぐらいはガチでやりあわないといけなくなるだろう。
    経験ならその時に……
    …………
    ……もし、俺とナナミちゃんが共に封じられたら、フウカちゃんは独り……。
    ……独りで戦うとなると、多分、俺と出会う前まで遡らないといけなくなるか……。
    …………
    ……いや、大丈夫。ちゃんと覚悟の上で来ている筈。
    戦う事を嫌っていても、やらなければならない瞬間があると
    フウカちゃんはちゃんと知っている。
    そうなった時に、ちゃんと戦えるように、この戦争がある事も分かっている。
    ちゃんとやれる。フウカちゃんは。
    だから俺もちゃんとやる。今から起こる戦いを。
    モモカちゃん越しに見える影が動く。左側にズレ、ぐるりとこちらに回ってくる。
    高まってくる緊張。モモカちゃんの視線がこちらを向く。
    やはり決意を宿した強い光が瞳に宿っていた。
    見知った魔力の集団が傍まで来る。一番前のミチオさんと目線で頷き合うと
    ミチオさんは姿勢を正し、舞さんの方を向いた。
    大丈夫そうか。今の所は。
     「お待たせてしてしまった様で申し訳ない。
      ご無沙汰しております。」
    ハッキリとした口調でミチオさんはそう言うと、深々と頭を下げて。
     「ご無沙汰しております。」
    ミチオさんの後を追うように、リナちゃんも挨拶をして頭を下げる。
    ただ、ミチオさんに追従したのはリナちゃんだけで
    他の皆は軽い会釈程度の挨拶で済ませていた。
    ……何も間違ってはいないけれども、ミチオさんはどこか天然っぽさがあるな。
    そしてそんな天然っぽさを、リナちゃんが際立たせてる。
    いや、本当に何も間違ってはいないんだけれども。
     「久しぶり。皆元気そうね。
      そっちはもう、これから何やるか知ってる感じ?」
     「一応は。」
     「舞様ぐらいですわ。殺し合いが始まろうとしているのに
      従者に正確な情報すら与えない者なんて。」
    モモカちゃんはそう言うと、ぷいと拗ねた様な表情を舞さんに見せる。
    けれども、それは一瞬で、またすぐこちらに強い視線を投げてきて。
     「だってその方が楽しいでしょ。
      少なくとも私は楽しいし、皆も楽しんでいってくれたら嬉しいわ。」
    楽しい。
    ……どれぐらいの者が、今この状況を
    これから起こるであろう事を、楽しいと思えるのだろうか。
    少なくとも舞さんの目の前に居る少女は
     「長話もなんだし、そろそろ始めましょうか。
      モモカ達もがんばってね。
      昨日とは違うから巻き込まれないよう気を付けておいて。」
    その言葉に、硬度を持った空気が上から降りてくる。
    指の先に指紋に沿って針を走らされてるようなピリピリとした感触が走る。
    始まるか。
    始まってしまうか。

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