第一次偶像戦争 【697】 [モモカ]
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第一次偶像戦争 【697】 [モモカ]

2020-09-22 20:20

    簡単な防御系スペルでギリギリ
    それ以上の対応は許されない
    この戦争が始まって、あれほど竜の炎を相手に戦ってきたのに、その経験が……
    歯がゆさと、悔しさの痛みが、わたくしの心の中に黒いカビの様に広がっていく
    やりたい事が出来ない、させてくれない
    そしてそのままゆっくりと、確実に、敗北が近づいてきている
    この炎、焼き切る竜の炎とは違う、絡みつき熱を押しつけてくるような嫌らしい炎
    そんな炎を生み出している者。わたくしが今戦っている相手
    一対一ならと、口にしたくて
    一対一でないのだから、負けてしまうのは仕方がないと、認めてしまいそうで
    今、そんな感情と一緒に、心の中で響いている言葉
    舞様が時々仰っている、決して口にしてはいけない、暴言の数々
    それらは、わたくしの前に立ちふさがっている、リナさんとミチオさんに向けてのものか
    リーダーである立場なのに、どう勝つかよりも
    負けた時の理由を考えているわたくし自身への罵倒か
    成長できていると思っていたのに、強くなっていると感じていたのに
    心も、体も、魔力も、思考も、その全てが足りていない
    嘆いている場合でも、反省と後悔をする時でもない
    分かっていても、そこに引っ張られる
    せめて心だけでもというのは、ただの弱者の拠り所
    でも、わたくしはそれすらも
    今は、いえ、もしかしたら、これから先も、ずっと……
    心の上の方から落ちてくる絶望と
    心の底の方から吹き出してくる怒り
    ローゼンボーゲンの弦にグローブ越しの指がかかる
    弦を強く引きつけながら、わたくしは、今も聞こえる罵倒や、暴れまわる感情も含めた
    わたくしの内にある全てを呑み込んで
    喉から溢れ、吐きそうなそれらを、口を閉じ、歯を食いしばって、我慢して
    わたくしは、炎の向こう、先ほどカウンター系スペルが飛んできた方向へ狙いを定める
    わたくしは、わたくしの為すべき事を
    頑張ったから悔いはないではなく、舞様が勝つために、わたくしに出来る最大限を
    弦を引いていた指先が離れ、矢の形状に収束された高密度の魔力が放たれる
    瞬間、炎に空く大穴。その向こうに見えるミチオさんの姿
    どうなります!?
    縮まる炎の輪の向こう、ミチオさんの体が動く
    ミチオさんの体の傍を、わたくしの矢が通り過ぎ、そのまま遠くに消える
    避けられたのは想定内、重要なのはスペルとの対応の違い
    わたくしの魔力そのものは、打ち返せない?
    ミチオさんが対応できるものは、スペルのベースの様な
    汎用的な【色】を持つまで純化させた魔力?
    まだ確定ではありませんが、その可能性は

    僅かな差異、機微
    考えるよりも前に動くわたくしの体
    瞬間、炎から飛び出したものが、わたくしの傍を走る
     「えっ?避けた?なんで?」
    十メートル程離れた場所で止まったリナさんは、ふり返りながらそう言って
     「なんでと言われましても
      避けなければダメージを受けるのですから、当然ではありません?
      そういう意図の発言ではないと、分かってはおりますが
      質問をするのであれば、ハッキリとした言葉を使って頂かなければ
      あらぬ誤解を産む事になりかねませんわ。」
    嫌味を言いながらも、わたくしは静かにローゼンボーゲンの弦を引いて
     「ん~?バレてたって事ぽよ?
      そんなアタシ下手かな?」
    ローゼンボーゲンを握ったわたくしに、炎以外のちょっかいを出して来なかったのですから
    撃つタイミングか、撃った直後に、襲ってくるのは予想が出来ました
    それと、この戦争がはじまってから、散々やられたやり方ですから
    これぐらいの炎であれば、なんとなく分かるようになったというのも
    しかし、タイミング的にもう少し早く出てくる事は出来た筈
    ローゼンボーゲンの攻撃ならば跳ね返されないと
    わたくしに思わせたかったのではないかという疑惑が、急激に強く、重く
    ですが、それでもわたくしに出来ることは
    まだ呑気に悩んでいるリナさんに向かってローゼンボーゲンを構え、魔力の矢を放つ
    距離的に避ける事は難しい筈。弾いてくるか、それとも
    矢の速度を考えれば、瞬く間もない程の時間なのに
    引き延ばされた様に、長く、ゆっくりと感じて

    魔力
    消える
    唐突に、無くなる
     「わっ!びくった!不意打ちとか~。」
    言葉のとは裏腹に、驚いている様子は無いリナさんは、少し横へ移動する
    突如現れたわたくしの魔力は、そのまま何かに触れる事すら出来ずに
    ずっと向こうへ消えてしまう
    リナさんの方は対応可能
    では、実体を持つ矢をベースにすればどうなるのか?
    数が増えたら?一瞬ではなく、継続した攻撃なら?
    わたくしはじっとリナさんを見つめたまま、また指先を弦にかける
    リナさんのニィとした笑みは何を

    再び動き出し、わたくしを包み込んで

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