第一次偶像戦争 【698】 [ミノリ]
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第一次偶像戦争 【698】 [ミノリ]

2020-09-24 22:22

    オーディアムを振るう体が重い
    体に行き渡らせた魔力を、触れる水がどんどん削り取っていく
    下の海に引きずり込まれるという、最悪のパターンを回避するために
    上に飛ぶしか無かった訳だけれども、この動きは読まれていたみたいだ
    上から落ちてきていた、巨大なハンマーの様な水塊を構成する水は
    さっきまで俺の周囲にあった水とは違って、かなり攻撃的
    様子見の様な感じだった戦場が、一気に
    相手の体に握った刃を突き立てる、殺し合いに傾いた感がある
    ただ、今ここで真っ正面からの殺し合いは出来ない
    とにかく、ここから逃げないと
    俺の行く手を阻む流れを宿した水塊を抜けて
    もう少しマシな条件で戦える場に移動しないと
    俺は魔力の損失を無視し、後ろから追って来ているナナミちゃんからひたすら逃げる
    ナナミちゃんとの距離がそれ程詰まっていないのは
    俺がなりふり構わず逃げているせいか、それとも
    ここで俺を逃がしても大して問題無いというナナミちゃんの判断か
    中に突入した事で、水塊の全体像が分かりにくくなっているが
    水なんだから、形状の変化なんかはお手の物だろう
    削るだけ削って、弱ったところをみたいなのは十分に有り得る
    それを回避するためにも、まだ余裕がある内に、こちらからも動いて
    戦場を構築することは必須
    たとえ身を削る事になったとしても、このままの状態で戦うよりは全然いい
    水の抵抗に逆らいながら、光の差す方へひたすら進む中、描いていた魔法陣が完成する
    やる
    しかないな
    【黒】で描かれた魔方陣が発動する
    俺の傍から生れる夜
    周囲一帯から光が無くなり、魂だけに、後ろへ引っ張る様な力が加わる
    俺自身が創り出した【Damnation】だから
    魂を引き寄せ、そのまま押しつぶそうとする力はこれでも大分マシな筈
    Wrath of God】と違って、物理側への影響を持たせにくい分
    魂や魔力への影響力は大きい
    これで足を止める
    そして
    真っ暗な世界の中、新たな【黒】の魔方陣が輝く
    直後、一番近い場所にあった左腕に、するりと何かが巻き付いてくる
    触れられてはいるものの、そこに力は無く
    ただ、静かに、肌の感触と温度を確かめるようなそれは
    ゆっくりと左腕から、俺の半身へと、その柔らかい触手を伸ばして
    【Pox】が発動したらオーディアムも持ってかれるか。だって明らかに俺のモノだしな
    意識に働きかけて、自分の持つものを、一定割合放棄させるスペルだから
    展開しているモノが多ければ多いほど影響を受けてしまう
    左手にも同じような武器を持っていれば、どちらかを選ぶぐらいは出来ただろうが
    スペルである【Doom Blade】と違って
    伸縮や、刃を飛ばすみたいな変化を付ける事が難しくなる
    まぁ、あれだね。結果論、結果論
    それに、ミス云々を言い始めたら
    半分脅しだったものに頼らなければならなくなった、この状況こそがミス
    で、そのミスを取り戻す為には
    【Pox】を通して新しい感触が入ってくる
    ナナミちゃんに触れたか
    あとはどれだけもぎ取れるか
    【Pox】に捧げた血肉や魔力は、そのまま相手に贄を強制させる力になるから
    ある種、もの凄い公平なスペルなんだけれども
    【Pox】自体の強さも、持って行った血肉や魔力の力も限界がある以上
    抵抗は決して無駄では無い
    同時に展開している【Damnation】に贄の魔力は持っていかれるだろうし
    【Pox】の強制力は恐らく落ちる
    二つのスペルはディスシナジーになるが
    減衰した分以上に【Damnation】が働いてくれるだろう
    さて、どうなるかな。俺としては、周囲の水が消えてくれる事を祈りたいところ
    流石にこの量の水と、宿す魔力の強さになると
    Rain of Tears】と【Toxic Deluge】で
    無理矢理、水に結びついた魔力を壊すみたいなのは厳しい
    ただまぁ、ちゃんと【Pox】が水を持って行ってくれたとしても
    俺の周囲だけは、綺麗に残る可能性は高い
    やっぱり、メインはナナミちゃんの足留め
    そして、俺がこの水を抜けて、外に出る事
    二発目の【Damnation】も用意しているし、周囲の確認ぐらいは

    俺が生み出した夜を抜ける
    けれども光は弱い
    まだ水は上に
    これは
    やるしかないな
    出来る事なら、水塊を抜けてからにしたかったけど
    俺は肺の中の空気を少し吐き出し、肌に触れる【Pox】のスイッチを入れる
    緩く抱きしめる様に俺の体に触れていた【Pox】の触手が、急に硬さを持つ
    握りつぶしてくる様な力に、反射的に抗ってしまうが、俺はすぐに力を抜いて
    体に流す魔力はそのまま、かかる力に抵抗するのではなく
    奪われた後、即座に再生が出来る様、上手く細胞に働きかける
    伸ばした輪ゴムにナイフを入れる用に、ブチブチと筋肉が千切れていく
    俺から離れ、流れ出した血肉に骨は、そこに残った魔力を確かめる間も無く
    Damnation】と周囲の水によって、吸い取られ、変質し、消えていって
    【Pox】の感触が消える。俺の体の感覚も、ほぼ半分を失う

    足下の夜から、黒が伸びる
    常に上から下へと、俺の移動速度以上にかかっていた水の力が乱れる
    これなら
    失った血肉の再生は後回し
    流れ出ようとする血だけを止めて、俺は水を掻き分け一気に昇る
    光が明確に強くなっていく
    もうすこし
    あと
    もう
    光の持つ熱
    風の、空気の音

    出た
    よっし、状況は
    状況は

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