第一次偶像戦争 【730】 [ミカ]
閉じる
閉じる

新しい記事を投稿しました。シェアして読者に伝えましょう

×

第一次偶像戦争 【730】 [ミカ]

2020-11-28 21:21

    遠くに見える平原。そこに満ちるマナに混ざる魔力。
    ……ここら辺が限界ね。
     (今から入るから連絡切れるわ。
      残り時間どれぐらいある?)
     (2時間って所ね。)
     (分かった。それじゃあ、居るかどうかだけ確認してすぐ戻ってくる。
      多分、長くて40分ぐらいかな。
      1時間経って戻って来なかったら察して。)
    距離が結構あるから正直2時間フルに使いたいぐらい。
    感知出来てるかどうか分からないエリアも含めてだけど
    【青】使いはそこら辺も騙してくる可能性があるから気を付けないと。
    ……でも、流石にここは……とは思いたい。今は魔力も展開してないし、高さだってある。
     (戻ってこなかった場合の報復はしてほしい?)
     (しなくていいよ。ただ、リカの事はよろしくお願いします。)
    そこだけは、本当に。アタシが長期間居ない状況っていうのも殆ど経験無い筈だし。
     (善処するわ。)
     (ありがとう。それじゃあ、行ってきます。)
    咽の奥の方から胸に向けて、ぐっと力を入れ、意思を固める。
    浮かんでいた体が真下に落ちる。同時に、ほんの僅かだけ魔力を展開して。
    強めの感知妨害は既にかけているから、これぐらいならまだ大丈夫。
    ゆっくりしてはいられないけれども、最初は本当に慎重にしなくちゃ。
    ストンと着地をした地面にそのまま手をつき、アタシは黄色い平原に流れるマナを感じて。
    前にも潜ったけど、後ろの山からの地下水脈があるから
    この土地は意外にに【青】系のマナも蓄えてる。
    その中。水の流れに乗って、地下の見えにくい所に絵理ちゃんの魔力が無いか探して。
    …………
    ……ここは大丈夫。じゃあ、この先は……
    …………
    ……上で感じられた魔力の範囲は合ってた様ね。直接触れては居ないけれども
    マナとは違う力の気配がする。
    ……前と一緒なのは、前に来たことに気付かれてないか
    アタシを誘い込むために、一定ラインを越えた瞬間
    発動するようなトラップにしているか……
    ……ここで悩んでも仕方ないわね。引くことが出来ない以上、前に行くしかない。
    ……一番怖いのは操られて、伊織ちゃんに間違った情報を伝える事。
    絵理ちゃんは【青】【黒】【白】使いだから、そういうのが不得意な筈はない。
    ……正直、絵理ちゃんは情報が少ない……
    話さない訳じゃないけど、秘密主義っぽいし……。
    …………
    ……行こう。とりあえず魔力を感じる場所。境界まで行こう。
    地についていた手が離れる。
    立ち上がって手についた土を払い、アタシは少しだけ浮いて前へと飛ぶ。
    風を切る加速。境界までは、もう時間をかけてられない。
    ていうか、境界を越えた先でも同じ。
    だから、本当に侵入する時だけは、時間をかけて丁寧にやらないと。
    前。存在。魔力。
    急激に速度が落ちる。それとは逆に心臓が強く鳴る。
    いつもこの瞬間が一番緊張する。そして、今、アタシの中にある緊張を
    感情ごと全部ここに置いて行く。
    体が完全に止まり、足が再び大地を得る。
    静かに、底まで息を吐いて、目の前に漂う絵理ちゃんの魔力を確認する。
    本当に端の端。かろうじて魔力的な繋がりと流れが感じられる魔力達の更に外側。
    千切れた雲の様に、ただ空間に存在し、そのまま自然消滅するであろう、魔力達。
    僅かに存在するそれに、アタシは手を伸ばし、触れる。
    今にも対消滅しそうな魔力たちを調整し、並行して【黒】で魔法陣を描く。
    まだ消えていない触れている絵理ちゃんの千切れた魔力に、【黒】い触手が伸びる。
    そのまま絵理ちゃんの魔力に取り憑いて、より深く魔力の感覚を掴む。
    ……よし。
    直接【黒】い触手を繋げていた部分の絵理ちゃんの魔力が崩壊する。
    強さ的に長時間触手を繋げていると、絵理ちゃんの魔力を壊しちゃう。
    でも、周囲にまだ量はあるから、ここから更に広げて
    土地の支配を行っている本体にもアクセスしましょ。
    黒い触手が広がり、新たな千切れた魔力に取り付く。
    息。心臓。
    大丈夫。もう落ち着いてる。
    魔力の流れが存在するエリアに、黒い触手が伸びる。
    時間が無いから、土地から絵理ちゃんに返す情報を騙す方で。
    …………
    ……よし。
    前に一歩。
    手が入る。
    反応は……大丈夫。
    それなら……。
    また体が浮く。そのまま前に、全身を絵理ちゃんの魔力の中に埋める。
    …………
    ……行く。
    絵理ちゃんの魔力の中を、アタシはその大本に向けて真っ直ぐ飛び始める。
    各種感覚からくる情報の処理だけでなく、思考と想像を働かせて
    絵理ちゃんからの侵入を防ぐ事を忘れないように。
    それでいて、感情だけは外に置いていって。
    ……ちゃんと出来てる。
    ……よし、それなら……。
    速度が上がる。遠くに見える景色も、見てすぐに分かる速度で動いていく。
    前とは侵入ルートが違うから、見覚えのある光景では無いけれども
    目的の場所はちゃんと分かってる。ちゃんと近づいてる。
    行って、確認して、帰るだけ。簡単なもの。
    ちゃんとやり切る。
    やり切ってみせる。

    広告
    コメントを書く
    コメントをするには、
    ログインして下さい。