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第一次偶像戦争 【797】 [三条ともみ]
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第一次偶像戦争 【797】 [三条ともみ]

2021-04-12 22:11

     「具体的に、私達はどれぐらい離れたらいいんですか?」
    強い言葉に、肌を刺激するササクレのような僅かなトゲ。
    アリスちゃん、納得はしてない様ね。確かに条件は私に凄く不利にも見えるし。
     「どれぐらいだろ?
      それも分かんないから、今日これから試す感じ?」
    あっけらかんと言うサナエさんに、アリスちゃんは顔をしかめる。
     「……どうします?
      この言葉を信じますか?信じる価値があると思いますか?」
    言葉に潜むトゲは、もうササクレから茨になっていた。
     「アリスちゃん含め、皆が完全に蚊帳の外になっちゃうのは申し訳ないけれども
      私はこの条件でも価値があると思っているわ。
      だから、万が一があった時は、ここで条件をのんだ私の責任だから、私の方を恨んで。」
    アリスちゃんは不満そうな表情を浮かべ、私から目を反らす。
    そんなアリスちゃんから私は視線を動かし、すぐ後ろのレイさんを見る。
    私を見て軽く頷くレイさん。あとは任せても大丈夫そうね。
    まぁ、アリスちゃんも本気で嫌がっていたり不満を抱えている訳では無くて
    こちら側の意志を代弁してくれただけでしょうから
    そもそも最初から心配なんて必要ないか。
    むしろ、一番心配しないといけないのは私よね。
    練習とはいえ、本気で戦う訳だし、気を引き締めていかないと。
     「心配しなくても、あたしらが参戦することは無いわよ。
      人質としてシロウ君も置いていくし。」
    アリスちゃんの顔に刻まれている不満の渓谷がより深くなり、より歪に歪む。
     「まぁ、そういう事。意味があるとは思えねーけどな。」
    シロウ君は、そう言うと笑って。
     「じゃあ私達は、体よく押し付けられるだけなんですね。」
    アリスちゃんの言葉の棘がより鋭くなる。
     「なんもやりゃしねーよ。
      そっちも価値がないと感じるんなら、オレ別に先に帰っててもいいし。」
    シロウ君は面倒くさそうにそう答えて。
     「価値は無くても監視下に置いとかないと
      隠れて何されるか分からなくて面倒って分からないんです?」
     「このやり取りの不毛さと
      どっちの陣営にもプラスになってない結果を、お前は考えて喋ってんのかよ。
      大人ぶって話てる様で、一番感情をコントロールできてーねーじゃん。」
    おー、いつも遠くからだったから詳しく聞いてなかったけど、こんなやりとりしてたんだ。
     「勝手に決めつけないで貰えますか?」
     「じゃあ、感情じゃ無く理性で喋ってんだよな?
      頭働かせて喋ってそれって事は、ともみねーちゃん的には
      ここで諍いを起こして、眷属同士での潰し合いを推奨してるって事になるけど
      それでいいんだな?
      それとも、ともみねーちゃん側を代表してみたいな口ぶりで話しといて
      事が起こった後、全部私のせいです
      私が悪いんですで丸く収まるとでも思ってんのか?」
    シロウ君の言葉に、アリスちゃんは黙り込んでしまう。
    睨み付ける視線に乗せた強い敵意は、悔しさを隠している様に見えた。
     「まぁまぁ、それじゃあ、シロウ君は終わるまで私達の所で預かるという事で。
      皆もそれでいいわよね。」
    アリスちゃん以外の皆が頷く。アリスちゃんはまだシロウ君を睨んでいた。
     「そんじゃ、短い間だけどよろしく。」
    そう言って頭を下げたシロウくんは、睨んでくるアリスちゃんを無視して
    そのまま横を通って私達の集団に合流した。
     「ともみちゃんの準備はもう出来てる感じ?」
    準備。戦闘の。
     「……大丈夫です。」
     「分かった。じゃあ私と一緒にあずさちゃんの所に行きましょ。
      あずさちゃんの方も、多分、始める前にともみちゃんと話しておきたいと思うし。」
    サナエさんの纏う空気が変わる。
    さっきまでのアリスちゃんとシロウくんのやり取りを酒のつまみぐらいのノリで
    面白そうに見ていたサナエさんは、もうどこかへ消えてしまっていた。
    折角来てくれたんだし、それならちょっと相手して貰ったらぐらいな所から
    そのままサナエさんが押し切って、こうやって練習試合やる運びになった訳だけれども
    今のサナエさんの雰囲気は、同じ部活のメンバー同士の軽い練習試合みたいなものじゃない。
    私の中の緊張感が増していく。
    ガチガチの真剣勝負とか、私をハメる為の罠みたいな感じではないし
    十中八九、サナエさんの変わり様はあずささん側の問題。
    なら、私は私のやるべき事をすればいい。元から手を抜くつもりも無い。
     「開始の合図はまた後でやるから、もうちょっと待ってね。」
    サナエさんはそう言うと、私の方へ目線を流し、そのままあずささんの方へふり返る。
    ……あずささん側の問題……
    サナエさん達もスペルに巻き込まれる訳だし、それに向けての覚悟か
    それともあずささんの本人の何かか……。
    ……あまり深く考えちゃダメね。すぐに分かる事だろうし
    分からない部分は、他人が触れてはいけない所かもしれない。
    勝手な想像も、迷惑になる事が多いから止めておこう。
    アイドルだから、そこら辺の問題は、本当に嫌になる程身に染みてる。
    呼吸。頭の中に風を通すように、息を吸って、吐く。
    ……よし。
    既に動いているサナエさんの背中。私もその後を追って、動き始めた。

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