ユーザーブロマガは2021年10月7日(予定)をもちましてサービスを終了します

第一次偶像戦争 【809】 [アリス]
閉じる
閉じる

新しい記事を投稿しました。シェアして読者に伝えましょう

×

第一次偶像戦争 【809】 [アリス]

2021-05-06 22:22

    静まる戦場。
    ここからじゃよく分からないけれど、終わった……のでしょうか?
     「ともみねーちゃん強くなってんなー。」
    無礼不躾無粋粗野、そんな声が静寂を割る。
    いつもなら反射的に、すぐさま言葉の刃を投げつけるのに
    今この瞬間は、言葉まで届かなかったのはどうしてだろう?
    嫌な気持ちも確かにあるけど、心の中までは入り込んできてない
    ザリっと、猫の舌の様な鑢が一撫でしただけ。
    本当、いったいどうしてだろう?
     「シロウはこの勝負をどう見る?」
    レイさんの問い。もし、私に聞かれたのなら。
     「……ともみねーちゃんが強くなってるっていうのと
      あずさねーちゃんの脆さが出た感じ?
      実力的にはまだまだあずさねーちゃんの方が高いだろうけど
      勝負はそれだけじゃないっていうのが、綺麗に出たんじゃねーかな。」
    相変わらず声とムッとしてしまう。今回は言葉の方でも引っかかった。
    でも、やっぱりすぐさま言い返す様なレベルじゃない。
    シロウ君の言葉に、割と納得してる所があるから?
    ……というか、私、物凄く、ともみさん側に立ってる?
    さっきのシロウ君の発言でも、心に引っかかった部分は
    ともみさんが実力で負けてるとか言われた時だったし……。
    ……多分、絵理さんがそんな風に言われても、何にも思わないだろうにどうしてだろう?
    ……いや、何にも思わないは言い過ぎ。多分イラっとは来る。
    ただ、一瞬だけ。そしてずっと小さい。……多分。
    ……まぁ、そこは置いておくとして……
    ……なんというか、練習をする為に、私たちの所へ通っていたともみさんに
    変な話だけれども、愛着みたいなものが生れたのかな?
    愛着……尊敬?
    絵理さんと違って、真っ直ぐにいい人だなって言える人だし
    回数を重ねるごとに強くなっていくのは、見ていてとても面白……
    ……興味深かったし……。
    …………
    ……私、物凄く失礼な感情と思考をしていない?
    いや、これは私の語彙力の問題?無理に言葉にしようとしているから……
     「しっかし、これ、セイジとか練習にならなかったんじゃね?
      最初のあえて受けたっぽい二発と、さっきの一発で終わりとか。」
     「戦闘自体は終わりましたが、経験や反省は、まだこれからだと思いますよ。」
    実際の戦闘になった後、一発しか撃てなかったという事実は大きい。
    戦闘中の出来事だけが全てじゃないんですよ?分かります?
     「あずさねーちゃんのあの感じ、治せると思うか?」
    頭の中で描いていた、私に指摘されて悔しいという表情が消えてなくなる。
     「それは……あずささん次第じゃないです?」
    というか、それしかない。他にやり方があるとすれば
    それはとても酷くて、あずささんを深く傷つける様な方法。
     「慣れさせるか、諦めるか。
      試させる事には成功したけど、戦闘の結果を見れば負け。完全に足を引っ張ってる。
      得たものもあっただろうけど、失ったものもあって
      結果、一歩も進めてないどころか
      逆に一度試しちゃったからこそ、色々と確定しちゃって
      そのまま進もうとする足が全員ガチガチに固まって
      動けなくなるみたいな結果にならなきゃいーけど。」
    偉そうに何を。
    ……でも、間違ってるとは言えない。きっと皆だって……
     「しかし、最初の二発は実戦ではなく実験だとしても
      最後の一発は確実に戦闘で起こったもの。
      となれば、あずささんは戦いを続けるつもりだったのに
      終わってしまったという事になる。
      確かに、サナエさん達が居た事はプラスでは無かろうが
      居なければ勝てたのか、そこは分からない。
      毎回、万全の状態で戦闘がスタート出来る訳は無いし
      不意を打たれた、判断が遅れた、勇気を出すのに時間がかかった等
      不確定要素が少しでも入ると、そのまま崩れて終わるというのは
      サナエさん達の存在は関係なく、あずささん側の大きな問題では無かろうか。
      どちらにせよ、生き残りたいのであれば、あずささんは強くならなくてはなるまい。」
    レイさんはいつもと同じ、落ち着いた声でそう言って。
    ……不測の事態から、自分のペースを強引にでも取り戻す力……
    今のあずささんはスペル戦に寄りすぎてるから、もっと【緑】【白】使いらしい
    接近戦の有利さ、防御の硬さを生かすことが出来れば……
    …………
    ……なんでこんな事考えてるんでしょう。あずささんの眷属でも無いのに。
    ……いや、こういう事を考えるのはは大事だし、やっておくべき。
    問題は感情的な部分。何というかこう、母性的な……
    支えたい、助けたいと思う感情が、思考に付いてきている。
    今まではあまり持ったことが無いもの。
    それは身近に居るのが絵理さんだから?
    ……でも、絵理さんだって完璧じゃない。
    ともみさんとの練習試合でも、外から見ていて
    もっとこうすれば良かったんじゃないかみたいな動きは沢山あった。
    けれども、絵理さんにそういった感情を抱いたことは無い。
    ……絵理さんが常に余裕があって、私が指摘する様なポイントは
    私が言わなくても、全部絵理さん自身も分かってること
    むしろ私から見て改良点に見えた全ては、相手を陥れる罠なんじゃないかみたいな……
    ……そういう前提があるから……なんでしょうか?
    ……もっと単純に慣れ親しんだ主への敬意みたいなもので
    敬意はあっても、主という意識は無い、ともみさんや、あずささんには
    アドバイスをしてやる……という上から目線で考えている……
    ……みたいな事が無い様、祈りたいところですね……
    ……無意識だろうと自分の事なのに祈るとか、無責任にも程が……
     「正式に終わったみてーだな。
      もう一回やるかもしんねーけど。」
    声。視界。
    重なっていたともみさんとあずささんの姿が、ゆっくりと離れていくのが見えた。

    広告
    コメントを書く
    コメントをするには、
    ログインして下さい。