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第一次偶像戦争 【810】 [サナエ]
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第一次偶像戦争 【810】 [サナエ]

2021-05-08 22:44

    ともみちゃんの【Distress】が固まったままのあずさちゃんに到達し、取り付く。
    これで終わりね。
    【Rout】を発動できたのは良かったけど、ともみちゃんはそれでも止まらなかった。
    覚悟が決まらなかった者と、チャンスをものにした者。
    紙一重かもしれないけど、そうやって決着が付く戦いもあって
    そんな僅かな差で自分の存在が終わる時もある。
    今回のあずさちゃんに限って言えば
    あたしらが居たからそうなったってのもあるでしょうが
    これから先、ずっとミスなく戦えるという事は無い訳で
    一人ではどうしても出てしまうミスも
    複数人いれば防げる事も出来るし、ミスをした後のカバーだって出来る。
    勿論、複数人いるからこそ起こるミスもあるでしょうが
    総合的に見れば、一人よりも沢山居た方がメリットは大きい筈。
    ……言いくるめるなら、ここら辺かしら。
    まぁ、一応ってだけね、最後に【Rout】を撃つ事は出来てたし
    そんなに心配はしてなかったり。
    すこしゴネる事はあっても、あたし達側でも出来る事はあるし
    双方努力していけばみたいな所で落ち着くでしょ。
    ていうか、そこに落ち着くとして、問題はあたしだわ。
     「ん~……どうすっかなぁ~。」
    さっきの【Rout】でまた少し焼けた肌に触れ、治しながら言うわざとらしい独り言。
    …………
    ……
     「なんか反応しなさいよ。」
    隣のヒデオ君を見ると、あからさまに面倒な表情を向けてきて、思わず手が出る。
    わき腹に入った肘に、ヒデオ君の口から「うっ」という掠れた音が漏れた。
     「……なんなんすか……。」
    喉の奥から出てくる、か細い糸のような声。
     「なんなんすかとは何よ。結構重要な帰路に立たされてんのよ?私。」
    別に元に戻す事が出来ないステ振りって訳じゃないけど、結構な時間を確実に消費するし
    あたしの好みというよりも、あずさちゃん達との繋がりから来る選択だから
    アンタにも一応関係してんのよ。
    ていうか、失敗した時は、アンタに責任取らせるぐらいに思ってるんだから。
     「はぁ……。」
    クッソ腹立つ返事だけど、あたしも酷い事押し付けようとしてるし
    今はチャラにしといてあげるわ。
     「ヒデオ君達はいいわよね。防御系スペル揃ってるし
      あずさちゃんのスペル受けても、最悪自分の方から防ぐ手段があるでしょ。
      あたしノーガードよ。ノーガード。分かる?この辛さ?わかんないわよね。」
    あたしの最後の言葉に、またどつかれると思ったのか
    ヒデオ君は、驚いた小鹿みたいにびくんと大きく震え、防御体制を取って。
     「辛いからって他に当たるの止めた方がいいですよ。ホント。」
     「違う。そうじゃない。そうじゃないのよ。なんで分かんないのよアンタ。」
    おー、すっごい面倒くさい女って感じのセリフが出てきた。
    あずさちゃんの練習に何度か付き合った事あるけど、あたしもやるわね。
     「……他の【色】に手を出すって事です?」
    こいつ……。
     「分かってんのにはぐらかしたの?」
     「……面倒な事になりそうなんで……。」
    また私の肘がヒデオ君の左脇に触れる。今度はヒデオ君の手を挟んだけど
    また「うっ」という音が漏れた。
     「……で、どうするんです?」
    話を進めた方が良いと思ったか。
     「どうしよっか?ていうか、どうして欲しい?」
    ヒデオ君はまた心底面倒くさそうな顔をあたしに向けて。
     「【白】取っちゃうと、俺ともろ被りするんで
      【緑】でいいんじゃないすか?」
     「他にもまだ【青】と【黒】があるじゃない。」
     「【青】……」
    ヒデオ君の目が後ろに動き、あたしもつられて背後を見る。
    あたし達二人の視線を感じたフミカちゃんは、急に見られて恥ずかしいのか
    いたたまれない様な表情を浮かべ、視線を下げてしまう。
    後ろを向いていた顔が、帰ってくる。
    視線が合う。
     「無いって思ってるでしょ。」
     「アリって思ってるなら、俺は別に否定はしませんよ。」
    むぅ。
    【赤】【青】だとプレインズウォーカー組じゃ小鳥ちゃんか~。
    仲いいし、色々教えてくれそうだけど【色】的に性に合うかって言われると微妙よね。
    ていうか
     「あたしが【白】を取るのはそんなにお嫌いで?」
    アンタの【色】よ。アンタの。
     「お嫌いというか、他にも選択肢があるのに、わざわざ被る必要もなくないですか?」
    ごもっとも。
     「あーっクソ、先に取りゃよかったわ。」
     「取るつもりだったんすか?」
     「うんにゃ。【白】は無いわ。」
     「そりゃどうも。」
    ヒデオ君の場合、遠距離戦での選択肢を増やせる様にっていうのと
    元々光の扱いは上手いから【赤】系スペルの媒介を光にすることで
    同じスペルでも、あたしとは違う同じ動きが出来るみたいな、真っ当な理由があったのよね。
    前に聞いた時は、確かそんな事言ってた。
    ……そうね。確かに……
    …………
    ……なんか無性に、もう一度【赤】を選んだ理由が聞きたくなってきた。
    今聞いても同じ理由かな?それとも
     (あの……ごめんなさい……負けちゃいました……。)
    あずさちゃんの声が響く。
    悔しいじゃなくて、申し訳ないという音に、ちくりと良心が痛む。
    ……まぁ、こっからよね。負けられるという事も実は貴重だし
    そこらへんの説明もしつつ、次に生かしましょ。
    後は……残りの期間でどれだけともみちゃんが付き合ってくれるかね。

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