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第一次偶像戦争 【815】 [モモカ]
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第一次偶像戦争 【815】 [モモカ]

2021-05-18 22:44

    中央に行くにつれ、白の絵の具を混ぜた様な緑となる湖。
    その水面が揺れる。均等に、中央に向かって、ざわざわと細かい波が立つ。
    見慣れている様で、見たことの無い光景。
    風が吹き付けた……というよりは、体の一部から発生した鳥肌が
    ゾワッと全身に広がる様を連続して見ているような感じですわね。
    興味深くはあるけれども、楽しいや美しいとはまた違う光景。
    なんでしたか、前に舞様に中華街?に連れて行ってもらった時、試させて貰った
    縁をなぞると水面が均等に揺れ、飛沫を上げる水盆の様なもの。
    イメージ的には、あれに近い感じでしょうか。
    あれを体験した時は、感動みたいなものが湧き上がりましたが
    今は、自然の中で、自然とは違う動きをしているからか
    感動よりも、異質さの方を強く受け取ってしまっている様ですわね。
    お城からでも分かるぐらいですから、規模も段違いでしょうし。
    暫く波立つ水面を眺めていると
    水面を騒がせていた波が、唐突に消えて無くなってしまう。
    今の水面は、さっきまでの騒がしさが嘘の様に、一つの波も揺れもない。
    湖の向こうにある山や森が、ハッキリと水面に映し出され
    上下対象の世界を作り出している。
    それを眺めていると、わたくしの周囲にまで静寂が広がってきたのか
    音が遠くなり、消えていくのが分かった。
    いえ、これは吸い込まれてるのでしょうか?
    湖の中央に居る

    景色が歪む。綺麗に上下で分かれていた絵が、グンニャリと曲がる。
    それと同時に、ざぁっと岸から水が引き、中央に生まれた歪みの一部となる。
    波。それもとても大きな。もはや水で出来た壁と言っていい程の。
    今まで見たことの無い青と緑のグラデーションを描くそれは
    水の丸みを維持したまま、ゆっくりと周囲に広がりながら、こちらにも迫ってくる。
    不自然な高さに、同じく自然ではあり得ないゆっくりな速度、全く崩れない波の形状
    その全てが、コントロールされた現象である事を示しているけれども
    わたくしの心の中は、安心とは言い難い状態で。
     「どしたの?」
    廊下の窓から外を眺めるわたくし向けられる、明らかな好奇の声。
     「フウカさんが湖の方に居ますので、それを眺めております。」
     「へ~。」
    そう言うとシュウコさんはわたくしの隣に来て、窓に手を乗せ体ごと外へ視線を投げて。
    今起きたのなら、食事を用意した方がいいのか等
    色々と聞いておいた方がいい事がありますが
    このタイミングでそれを聞くのは、野暮というものでしょうか?
    そもそも、わたくしだってシュウコさんよりも……
    ゆっくりと広がる波は、岸に近づくにつれ、より高くなっていって
    見えにくいですが、もう湖の中央に水は残っていないのではないでしょうか。
    それ程の極端な水の移動が、わたくしの目の前で起こっていて。
     「お~、流石フウカちゃん。」
    本当に感心しているのか、適当なお世辞なのか分からない声の色。
    まぁ、こういったものは個人の感性ですし、わたくしがどうこう言うものでも。
    波の高さ
    もう少しで、先ほどまでの湖と陸地の境界線だった地点にたどり着くという所で
    急激にその高さを変える。
    波はもう完全に壁に。水は真上に伸び、一瞬でわたくしが眺めている城の高さを超えて。
    迫る
    こちらまで来る?
    火山湖なので湖の中に生物は少ない筈ですが、その周囲にはドラゴンやドレイクの巣も
    信頼と心配に、安心と恐怖、相反する感情が、グラグラとわたくしの心を揺らす。
    すぐに動くべき?注意しに行った方が
    わたくしの心配しすぎだとは思いますが、笑われてもよいのでここは
    体が浮く、窓の外へと飛び出そうとする
    直後、壁が消える
    パンと、弾けたように纏まっていた水が散り、空気と混ざる。
    現れる虹と、巨大なエメラルドグリーンの柱。
    その下をザァと水が走り、湖の中央に帰っていく。
    僅かに浮いていたわたくしの体は絨毯の上へと戻り
    内にあった心配や恐怖も、底の方へ沈んでいく。
     「焦った?」
    完全にわたくしをからかう声。
     「多少は。
      湖の傍で暮らしているのは、わたくし達だけではありませんから。」
     「そかそか。」
    特に気の利いた返しでは無かったと思うのですが、シュウコさんは満足そうで。
    ……焦る理由を他者にしたことで、負け惜しみだと取ったのでしょうか?
    ……まぁ、別に構いません。わたくしが焦ったことは間違いなく
    言った言葉に嘘もありませんから
    それ以上はシュウコさんへの評価で処理すべき部分ですね。
    窓の外。湖の上に現れたエメラルドグリーンの柱は
    構成する水滴が落ちていっているのか、細くなっていって。
    ………
    ……いえ、あれは
    色の濃淡が変わる。
    上の方が濃くなり、中ほどから下は、どんどんと空気の透明を取り戻す。
    いつの間にか、薄くなっていく虹の向こうに、水でできた大きな樹が生えていた。
    両手をいっぱいに広げたような葉。太く立派な幹。
    それらを支えるに十分な、張り出した根。
    葉が揺れる。ザワザワと揺れ、そこから鳥が飛び出す。
    水でできた透明な鳥が、水でできた大きな樹の周りを飛ぶ。
    動く。
    樹全体が動きはじめる。
    さっきまで密集してた葉や枝が絡み合いながら縮んでいく。
    空を飛ぶ透明な鳥も、縮んでいく樹の中へと飛び込んでいく。
    ぎゅっ、ぎゅっと圧縮されていく水。
    巨大な卵の様な形を取った次の瞬間、卵が割れ、大きな翼が広がった。
    翼が動く。ゆっくりと風を掴み、湖から飛び出す。
    エメラルドグリーンの巨大な鳥が、水色の大空へと飛び上がった。

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