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第一次偶像戦争 【824】 [東豪寺麗華]
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第一次偶像戦争 【824】 [東豪寺麗華]

2021-06-06 21:12

    日高舞のお腹にめり込んだ拳から、力が抜ける。
    かかっていた重さが横にずれていき
    口から、鼻から、赤い血を噴き出しながら日高舞の体が倒れていく。
    拳に残る感触。撃ち込んだ魔力の動き。
    日高舞の肉体に、甚大なダメージを与えたのは確か。
    やりきった達成感も無く、ただ、やったという事実だけを受け止めていた私に
    他の思考や、感情が追いついてくる。
    …………
    ……並の体なら、引きちぎれるレベル。
    でも、日高舞は耐えた。
    特段、戦闘中の様な緊張を持ってはいなかった様に見えたのに
    デフォルトの魔力と肉体の強靭さで、私の一撃に耐えてみせた。
    ……もう少し出来た筈……よね。
    ……いや、これが今の状態の私の精一杯。
    殴る前、殴った時、思い出してみても、手を抜いたりはしていない。
    今の自分に出来る力を最大限出した一撃だったのは間違い無い。
    ……それでも日高舞の体を打ち抜き、肉体をちぎり飛ばす事は出来なかった。
    【五色】状態じゃ圧力を意図的に開放しても、外へ広がる力は大したことないって事?
    それか、最適化がされてない線も……
    ……単純に魔力を込めた拳で殴りつける感覚の延長で攻撃してたけれども
    殴りつけたあと、そこから魔力を流し込む部分を、より強く意識方がよさそう。
    圧縮した広がろうとする魔力は、私のコントロールから離れた瞬間、爆ぜる訳だけど
    魔力同士のぶつかり合いが発生した場合、その瞬間から爆ぜるのか
    それともぶつかり合って壊れてしまったのなら、拡散する力も消滅
    もしくは弱まるのか……。
    サチコちゃんとの練習では、ここら辺手を付けていなかったから
    情報も経験も不足してるわね。
    よく考えたら【五色】状態での戦闘行為っていうのも久々。
    ……本当に、やらなきゃならない事が一杯だわ。
    足下で魔力が動く。
    草むらで倒れる日高舞の体に、強い魔力が通う。
    くたりと落ちていた手がビクンと動き、ゆっくりと手の平を地面の方へ向けねじれる。
    咳き込む音と共に、どす黒い血が草原を汚して。
     「あ゛~……。」
    飲み明けの朝に、よく聞く声。
    そのまま舞さんはぐでんと体を返して、天を仰いで。
    さっきは起き上がる様な動きをしていたのに、面倒になった?
    それとも、私が思っている以上にダメージがあったとか?
     「やっぱ、やらかしてるわ。」
    さっきまでハッキリとした声。
    希望的観測を抱いた私を、即座に打ち砕く声。
     「下ぐっちゃぐちゃだわ。これ私が洗わないとダメよね。
      ていうか、男共は勿論、モモカに任せてもドン引きされるわね。」
    そう言いつつも、舞さんは楽しそうで。
     「下手に耐えられるのも考え物ということですね。」
    滲む負け惜しみの色。
     「麗華ちゃん的にはどう?満足?」
    ……
     「不満はありますが、今日はもうこれ以上はやりません。」
     「ホントつれないわね。
      ……それじゃお風呂貸してよ。
      あと、洗濯も。」
     「……サチコちゃんに続き、舞さんもですか。」
    強者だから遠慮が無いのか、ただ単にこの人の性格か。
     「住まわせてくれるの?サチコちゃんみたく。」
     「いいえ、お風呂を貸すだけです。」
     「……まぁいいわ。収穫としては十分だしね。
      これ以上はまた今度近い内に。」
    仰向けになっていた舞さんの体が、トンと跳ね上がる。
    そのまま立ち上がった舞さんは顔についた血を拭うと、指で髪をすいて。
     「あー、もう固まってきちゃってるわ。
      血だけじゃなくて胃液とか色々混ざってるし早く洗わないと面倒ね。」
    ……結局、この余裕か……。
     「……体を創り直すまでもないレベルという事ですよね。」
    嫌味に受け取ってしまうのは、私が嫌な女だから。
     「一度殺された相手よ?
      そりゃ意地ぐらい張りたいでしょ。」
    舞さんはそう言うと、私を見て笑って。
    殺された相手。殴りつけられた相手。それに向ける、屈託の無い笑顔。
    ……これがスタァという存在……。
    暗く淀んだ敗北感に光が射す。負けた気持ちは残っているけれども
    爽やかな風の様な形になっている。
    ……完敗って事かしらね。プレインズウォーカーとしても、アイドルとしても。
     「お風呂、伊織も呼びましょうか?」
     「おっ、いいねぇ。
      ていうか、伊織ちゃん今何考えてるのかしら?
      私達のやり取りの声は届いてるの?」
     「いえ、上から見てるだけですね。多分。」
    伊織の技術なら、離れた場所からでも盗聴出来るかも知れないけれども。
     「ビームの銃口とか、ミサイルの座標は、もうここに設定されてるかな?」
    舞さんはそう言うと、空を仰いだ。
     「間違い無く、ボタン一つで総攻撃という感じでしょうね。」
    私も空を見る。青空の向こうにある伊織の船を探す。
     「ん~、ここからでも当てられそうかな?」
    ……冗談?
    ……いや、本気でしょうね。私は見つけられる事も出来ないのに。
     「その時は、舞さんの城にもミサイルが落ちてきますよ。」
     「それはそれで悪くは無いけど
      やっぱ先にお風呂よね。髪洗いたいし、股から下もヤバいわ。
      ナプキン使ってても余裕で溢れるレベル。」
    ……これがスタァなんだもんなぁ……。
     「露天風呂なんで、もう外から直でそこに行きますけど、構いませんか?」
     「おっ、露天なの?そりゃいいわ。」
    ……着替えとかは……とりあえず籠に入れて貰ってで大丈夫かな?
    ……大丈夫じゃ無かったときはどうしよう。
    もう露天の外で全部脱いで貰って、そこであらかた汚れを洗い落と……
    ……
    ……あまりリアルに想像するべき事じゃ無いわね。
    ……でも、あの城は私の城だし、露天風呂で洗うわけにも……
    ……今更、一度川に寄って沐浴してからみたいな事も言えないし……
    ……そこら辺、舞さんに任せていいものか。
    大体、ランドリーの場所も分かんないし
    かといって汚れた服を着たまま動き回られるのも……。
    お風呂場と隣接してるとはいえ……。
    ……また面倒な事になったわね。ホントシンプルには行かないわ。
    狙った通りになんて、全く。

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