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第一次偶像戦争 【833】 [三条ともみ]
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第一次偶像戦争 【833】 [三条ともみ]

2021-06-24 22:44

     「またダメなんでごぜーますか。」
    同意や頷き以外の最初の声は、意外な所から。
     「……ニナちゃん、前線に出たいの?」
    ニナちゃんの発言自体は、全くの予想外って訳ではないのよね。
    前の戦闘や、小鳥さんと北斗さんの時も、前に出られなかったから
    その事を不満に思っているみたいなものは、少しだけど伝わっていたし。
    ……だから、不意打ち気味に感じてしまったのは
    急いで舞さんへの対策を固めないといけない時に、それとは別の問題が出てきた部分と
    アリスちゃん辺りがキッカケで、もっと荒れると思っていた話し合いが
    今の所、何の問題も無く進んじゃったせい。
     「……そうでごぜーます。」
    隣に座るニナちゃんは、じっとこっちを上目で見てきて。
    ……もし、私が日高舞なら、我がままを言う様になった年頃の
    愛さんを思い出したりするんだろうか?なんとなく、ふとそう思った。
     「……分かったわ。
      それじゃあ、あずささんの所に行ってもらうのは他の誰かにしてもらいましょう。」
     「……いいんでごぜーますか?」
     「えぇ、一緒に舞さんを迎えましょう。」
     「やったー!」
    満面の笑みと声。思わず顔が綻ぶけれども、それも、僅かな間。
     「……で、他の誰かだけれども……。」
    他。誰か。
    ピンと来ないまま、卓を囲む全員に視線を流す。
    全員と視線が交わって、それでもやはりピンとは来なかった。
     「あずささんに伝えるだけならアタシ一人でも問題は無いと思うっスけど
      万全を期すなら、やっぱもう一人ってなっちゃいまスよね……。」
    すぐさま答えを出せなかった私に気を使ってくれたのか
    ニナちゃんとペアで行く予定だったヒナさんが、申し訳なさそうに口を開く。
    ……そうなのよね……伝えるだけのお使いなら
    一人でも、そして誰だろうと、大丈夫だとは思うけれども
    舞さんの眷属組への警戒を怠るわけにはいかないし
    生き残る可能性を少しでも高める為にも
    確実にあずささんに知らせてもらう必要がある。
    あずささんが動くかどうかは別にしても、やっぱり最低ペアは必須……。
     「……ならば、わたしが行こうか。」
    僅かに流れた沈黙を割る、レイさんの言葉。
    その言葉に、アリスちゃんが驚きと慌てた様な表情を浮かべる。
     「ですが、レイさんが離れた場合、ケイさんが……。」
    これ、アリスちゃんも自分が行くと言うつもりだったわね。
     「わたしが居なくとも、戦場でケイさんが音を紡ぐ事は出来る。
      問題はケイさんを守れるかどうか、そして興味を引けるかどうかだろう。」
     「そんな事は分かってます。だからこそ、レイさんでないと。」
     「シュウコ殿は出来た。
      ならば貴殿に出来ない道理はあるまい。」
    レイさんの強い視線が、アリスちゃんに流れる。
     「私は……。」
    アリスちゃんは不安なのか、そのまま視線を下げてしまって。
     「良い機会だという事だ。
      ……無論、ともみ殿に許可がいただければの話だが。」
    アリスちゃんに向けられていた強い視線が私に向けられる。
    ……私も試されてる訳ね。
     「私としては、レイさんが動いてくれると助かるわ。
      感知能力もそうだし、即座の対応や反応も、十分に信頼を置けると思ってるから。」
     「頂いた信頼を壊さぬよう、微力を尽くそう。」
    仰々しい返答に、思わず私の背筋が伸びる。
    ただ、これレイさんだから何となく納得してるけど
    レイさん以外が言うと、多分笑っちゃうわね。この返答。
    ……いや、でもどうだろう?北斗さんなら割とあり?最後ちょっと丸くすれば。
    ……天ヶ瀬冬馬が言うと、笑っちゃうわね。多分。
    ……こういうやり取りを、水谷絵理はずっとしてきたのかしら?
    何というか、普通に笑って、レイさんも普通に流してそう。
    もうちょっと、水谷絵理とレイさんのやり取りを、観察しておけばよかったわ。
     「では、わたし達はもう出ようか。」
     「そうっスね。急いだ方がいいでスし。」
    二人の視線が私に向けられる。
     「夜遅くに大変だけれども、よろしくお願いします。」
    私は二人に頭を下げて、出立の許可を出す。
     「本当に舞さんが来た事を伝えるだけでいいんスよね?
      助力の願いとかは無しで。」
     「ええ、それで。
      私の方で、出来るだけ何とかしてみます。」
    正直、何とかなるとは思えないけれども、何とかするしかない。
     「了解っス。
      それじゃ、レイさん、行きましょうか。」
     「それでは、失礼する。」
    ヒナさんとレイさんは、立ち上がると、敷いていた座布団を隅へと動かし、重ね
    縁側の障子を開いた。
    魔力が動く。二人の体に感知妨害がかかり、次の瞬間、星空の中へと消える。
     「さてと、それじゃあ、私達も問題無く舞さんを迎えられるよう。
      細かい所の確認をして、動きましょうか。」
    場の緊張が、また一段階上がる。
    そんな中、ケイさんは僅かに体を左右に揺らし、微睡んだ様な微笑を浮かべていた。

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