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第一次偶像戦争 【850】 [三条ともみ]
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第一次偶像戦争 【850】 [三条ともみ]

2021-07-28 22:44

    舞さんの領域から、ボコボコと沸騰する様に現れる【青】。
    密度、量、共に【青】をメインで使っているプレインズウォーカーと変わらない。
    でも、舞さんは【赤】【黒】【緑】使いの筈。
    【四色】目だとすると、私と同じ。
    【四色】目の【青】。
    私の【青】よりもずっと強く、鮮やかな【青】。
    これが、倒すべき相手。
    水谷絵理といっしょに喧嘩を売った相手。
    今更だけど、彼我の実力差に眩暈がしてくる。
    よく昨日、一対一で話す事が出来たものね。
    …………
    ……強いことは分かってた。どう足掻いても勝てないことも。
    だから、どうなろうと、私には日高舞に対抗できないと諦めてた訳だけど
    そういった舞さんの強さは、ある種のイメージだった。
    確実にあるけれども、実体は掴めて無くて、ふわっとしていた。綿とかよりもずっと。
    でも、この【青】。
    胸を貫いてくるような、首を掴んで、そのまま握りつぶしてくる様な【青】。
    ……実際、貫かれてるし、握りつぶされてると思う。
    のしかかってきた重さが、自分の中の何かを潰しながら、落ちていく。
    その過程で、同時に痛みも引っ張ってくる。
    胸に、喉に、自分で自分の息の根を止める事を求めている様な痛みが走る。
    これ程、日高舞という存在を思い知らされた事は無い。
    ……もしかして、日高舞が現役の頃、唯一無二のスタァだったのは
    近くに立つ者に、この絶望を常に振りまいていたからだろうか?
    こうなりたいと思う事すら許さない、絶対に届かない頂きを叩きつけて
    戦う事すら許さなかったんだろうか?
    日高舞以降のアイドルが、親近感の様なものを売りにし始めたのは
    結局の所、引退した後だろうと、同じ土俵では戦えないという事かもしれない。
    そして、それはアイドルではなく、プレインズウォーカーの殺し合いでも……。
    ……今、私が抱いているもの……
    ……絶望感と、情けなさ……
    ……今までとこれからを無意識に想ったのか、徒労感みたいなのもある。
    嫉妬や羨望、渇望は殆ど無い。
    …………
    ……それだけではないわね。
    悔しい。
    そう、悔しい。
    間違い無く、悔しさがある。
    日高舞の様になりたいとか、なんでこの人はみたいな感情とは違う。
    もっと単純に、メインでない【色】なのに、こんな【青】を見せられて、悔しい。
    私にはまだ出来ない【青】を、何食わぬ顔で生み出されて、悔しい。本当に。
    負けたから、悔しい。勝てなかったから悔しい。
    大きくは無いけれども、そういった感情が、私の中に、確かにある。
    …………
    ……まだ、そう思えてる私はマシなんだろうか。
    ……いえ、そう思わないとやってられないってだけね。
    アイドルはあくまで職業。それをしなければならない訳じゃない。
    対して、プレインズウォーカーは、生き方。
    人が生きる上で、早々に人間を辞める事が出来ない様に
    こちら側に来てしまった以上、人として生き、そのまま死と消滅を望んだとしても
    プレインズウォーカーであるという事実からは、逃げられない。
    そしてプレインズウォーカーにとって、魔力を扱うという事は
    手足を動かす事に近いし、芸術的な創作の場でもある。
    ……なんというか、多分まだ、仕方がないと割り切れてないんだろう。
    足が早いとか、声の美しさみたいに、生まれ持ったものだからと、諦められない。
    もしかしたら、私にも出来るかもしれないと思ってる。
    それはきっと、私がまだ、自分の限界を知ってないから。
    プレインズウォーカーとして生きてる時間が、まだ足りていないから。
    他のプレインズウォーカーとの関りが、少ないから。
    この【青】。
    私は届くだろうか?
    この【青】よりも、もっと鮮烈だったり、深かったり、強かったり、濃かったり……
    ……何か一つでも勝る様な【青】を生み出せるようになるだろうか?
    ……それとも、無いものねだりだと、いつか分かる時が来るんだろうか?
    恐ろしい想像から目を背けようとした時
    地平まで続く黄色い大地に、【青】と【白】が浮かび上がる。
    私の目の前に現れる、複雑に組み合わされた様々なルーンと線。
    分かっていたとはいえ、かなりの大きさ。
    そして、動き始めて分かる、魔方陣を構成するルーンと線達の細かさ。
    機能不全を起こしている様な箇所も無い。
    ……なるほど、カウンター系を中心に、色んなスペルを組み合わせて
    それを一つの魔方陣に纏めているのね。
    足元の流れから分かってはいたけれども【白】の方は土地のマナ。
    そっちを使った方が便利だし、地面に刻印する形なら
    土地のマナの方が親和性が高いから、メリットも大きいんだけれども
    何となく、違和感のようなものを覚えてしまう。
    ……日高舞の【青】の衝撃は、やっぱり大きい。
     「ん、行けそうかな。
      待たせて悪かったわね。」
    舞さんはこっちを向くと、ニッと笑ってそう言って。
    実戦と違って、時間をかける事が出来たとはいえ
    細かい調整と、それに伴う書き換えも無しで一発成功。
    普段使わない【色】やスペルだろうと、問題無し。
    魔方陣を描く技術に、マナと魔力のコントロール、そこら辺も、ずば抜けてる。
    思わずため息が出そうな私を他所に、大地に刻まれた魔方陣は急激に輝きを増す。
    立ち上がる様に、大地から空に向けて広がる力。
    輝きが落ち着いた魔方陣の上には、大地に刻まれたものとはまた違った
    細かい線やルーン、魔力の煌めきで彩られた、巨大な球状の空間が浮かんでいた。

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