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掌編:雨の中で ~Pine&Marine~
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掌編:雨の中で ~Pine&Marine~

2014-09-30 23:01

    「全く、さあ」

     夜の公園の中、彼女は誰ともなく言葉を紡ぐ。

    「どうしてこうも運がないのかねぇ」

     その夜は雨だった。最も彼女は雨を嫌いではなかったし、幼い頃に新しい-珍しく姉のお古ではなく-長靴を買って貰った嬉しさから、わざわざ水たまりに踏み込んで家族に呆れられた事を考えるとむしろ好きな方と言えるだろう。とはいえ、“篠つくような”あるいは“バケツをひっくり返したような”といった形容詞が当てはまるような豪雨の中で、傘もレインコートも無しとくれば話は変わってくるし、未知の敵に追われているにも関わらず、豪雨によって視覚と聴覚の十全な働きを妨げられているとあっては文句の一つも言いたくなるというものである。

    「まあ愚痴っても仕方ないけどさぁ。一人っきりってのはねぇ?」

     そんな事を呟きながらも心の中で一人ではないと訂正する。ただ、はぐれてしまった味方とどう合流するか。そして合流できたとしてどこまでの力になるかは未知数という問題があるだけだ。彼女の戦闘能力に疑問の余地はないにしても、連携が取れるかどうかとなるとそれは別問題。

    「せめて誰か一人でも残っていればなぁ・・・っと!」

     とっさに体を捻った彼女の脇を、銀色の光が駆け抜けて行く。その軌跡の先にあらわれる影。雨という紗幕を通してぼんやりと浮かび上がるそのシルエットは、かつて彼女が戦った相手に酷似していた。

    「三度あることは四度ある、って事?」

     かつてプリキュア達の前にあらわれた-

    「ねぇ、フュージョン?」

     -闇の具現に。

    ********************************************************************

     街は平日の夕暮れ時にも関わらず、閑散としていた。そんな中を歩く一人の少女。

    (やっぱりいきなり行ったら迷惑だよね?でも大会まで時間も無いし・・・)

     先程から何度も繰り返した自問。引き返そうとも思ったが、仲間たちに約束した手前、手ぶらで帰るわけにもいかない彼女の立場が、その整った顔に影を落としていた。だが、彼女が悩んでいる内に、目的地はすぐ近くまで迫っていく。

    (ここまで来たら、当たって砕けろだよね・・・!)

     前向きなのか後ろ向きなのか、やや判断に困る決意の下、最後の交差点を曲がった先にある目的地の店には、だがしかし-

    「閉店・・・中?」

     途方にくれ、これからどうするべきなのか。やはり帰るべきなのか、それともここで待つべきなのか。思考の無限ループに嵌まり始めた彼女を現実へと引き戻したのはひとつの声だった。

    「あれ、ブッキー?」
    「えりかさ・・・えりか」

     つい“さん”をつけそうになる所を、彼女の不機嫌そうな顔を見て慌てて言い直す。すぐに訂正したおかげか、それとも一瞬前の事はすぐ忘れるタイプなのか、どちらにせよえりかはこちらに近づくと-

    「久しぶりー!」
    「きゃっ」

     -いきなり抱きついてきた。

    「いやー、本当に久しぶり!夢の中以来?」
    「と、とりあえず離して下さい!」

     なんとかえりかを引き離すが、彼女は気にした様子も無く次々と質問を浴びせかけてくる。

    「で、今日はどうしたの?学校はもう終わり?うちの店に何か用?」
    「え、えーと・・・」
    「まあ立ち話も何だしさ、とにかくあがんなよ!」
    「え、あ、ちょっと?」

     口を挟む間も無く、とはまさにこの事であろう。えりかに引きずり込まれるようにして、祈里はフェアリードロップの店内へと入っていった。

    ********************************************************************

    「要するに、今度のダンス大会の衣装作りを手伝って欲しいと」
    「うん。私達だけじゃ間に合いそうになくて、それで・・・」

     えりかの自室へと案内され、出されたお茶を前に申し訳無さそうに説明を終えた祈里に対し、えりかは腕を組みながら考え込む。

    「やっぱり、いきなりで迷惑だよね?」
    「うんにゃ、別に」

     あっさりと否定すると、えりかは真っ直ぐと祈里を見つめる。

    「でもさぁ、ブッキーだって何も考え無しって訳でも無いんでしょ?」
    「え?」
    「その鞄」

     そう言いながら祈里が持参した、小物を入れるには大きすぎる鞄を指さす。沈黙が流れること数秒、諦めたように祈里は鞄から幾枚かのスケッチを取り出した。

    「その、あまり上手じゃないけど・・・」
    「ほー、どれどれ」

    えりかはスケッチを受け取ろうとして手を伸ばしかけるが、そこに叫び声を上げながら一人の妖精が飛び込んできた。

    「えりか、大変です!」

     もし何も知らない人間が見たら、おそらく「人形が喋った!」と驚くところだろう。幸か不幸か、この場にいるのはそのような生物に対して理解のある人間だけであり、“狭い部屋でパニック状態”等という事態は避けられたが。

    「何よ、今忙しいんだから邪魔しないでよ」
    「良いから外を見るです!」
    「ってすごい雨!洗濯物!!」

     えりかはいきなり立ち上がると、騒音を立てながら部屋を出て行った。事態の変化が掴めていない祈里を残して。

    ********************************************************************

    「いやー、まいったまいった」

     数十分後、部屋に戻ってきたえりかは頭に畳んだタオルを乗せていた。その姿にツッコミをいれるか否か、その葛藤は続くえりかの言葉に打ち消された。

    「でもなんか変な雨だよねぇ」
    「変って何が?」
    「何がって・・・なんとなく?」

     奥歯に物が挟まったような言い方に困惑する祈里に対して、えりかは頭をかきむしる。もともと理屈よりも感情で動くタイプの彼女にとって物事を理論的に説明するのは苦手なのだ。

    「とりあえずさ、キルン」
    「え?」
    「動物と話できるんでしょ?聞いてみてよ」

     その結論が他人任せとはどうなのかと思わなくもなかったが、さして労を要する事でもない。何より、彼女には頼み事をしている立場なのだから、彼女の頼みも聞くべきだろう。そう考え、ピックルンを取り出した彼女は、しかし予想外の事態に驚く事となった。

    ********************************************************************

     キルンの力をかりて、えりかの言う「なんか変」の原因を探ろうとした祈里だったが、周囲に動物たちが全くいないという予想外の事態に、慌てて外に出てきたのであった。あたりを見回しても誰もおらず、聞こえるのは雨音だけ。これだけの豪雨であれば人がいないのは当然ともいえるが、動物はおろか虫すらいないというのはあきらかに異常といえた。

    「一体どうなっているの・・・」
    「さぁ・・・だけど・・・」
    「だけど?」
    「見て、あっちの方」

     祈里が指差す方をえりかも凝視する。その先には、微かに光がまたたいているようにも見えた。

    「つまり、厄介事が起きていて、あそこに原因があるって事?・・・コフレ!」
    「ハイです!」

     “阿吽の呼吸”と言うべきか、長い間共に歩いてきた-時には対立した事もあるが-ふたりにとってはそれだけのやりとりで十分だった。そして、その意図はもう一人にも十分に伝わっていた。

    「プリキュア・オープンマイハート!」
    「チェンジ!プリキュア・ビートアップ!」

     光に包まれ、そしてあらわれるのは異装を纏うふたりの少女。伝説の戦士、プリキュア。

    「行くよ、パイン!」
    「OK、マリン!」

    ********************************************************************

    「あれ、何だと思う?」
    「さあ?・・・って危ない!」
    「!」

     目的地へと向かう途中、いきなりマリンがパインを突き飛ばす。その驚きもつかの間だった。マリンに向かってきた“何か”はマリンに直撃するとそのまま彼女ごと降りしきる雨の中へと消えてしまったからだ。

    「マリン!」

     目的地に向かう途中で味方とはぐれてしまった。現在の異常事態が何なのかも分かっていない現状で、更に問題が加わった事になる。

    「今のってやっぱり・・・うんうん、それよりも今はマリンと」

     合流する事が最優先。とはいえ土地勘の無い彼女にとって目的地がどちらの方向なのか検討がつかないという問題もあるのだが。

    「それとも下手に動かないほうが・・・!」

     彼女の独り言を中断させたのは、近づいてくる気配を捉えたからだ。始めはぼんやりとしか見えなかった相手は、近づくにつれその姿をはっきりとさせる。

    「やっぱり、フュージョン?」

     雨が弱まってきた事もあり、ある程度の距離を置いても相手の姿ははっきりと捉えられた。先程マリンを連れ去った影、そしてかつての敵、フュージョンの姿に酷似したその姿は。

    「あなたは誰?何が目的?」

     残り数歩の距離で足を止めた敵に対し、彼女は問い詰める。だがしかし、その答えは無かった。少なくとも言葉では。

    「!」

     いきなり襲いかかってきた事に対してそれほど驚きは無かった。彼女が驚いたのはその攻撃の速度と重さであり、それに反応できた自分自身でもあった。だが二撃目、三撃目と続く中で次第に防戦一方へと追い込まれていく。

    「きゃっ!」

     泥濘に足を取られ、小さく悲鳴をあげる。バランスを取り戻すには数秒もかからないだろうが、強敵を前にしてその数秒はあまりにも長すぎた。

    (ダメ、かわしきれない!)

     直撃が避けられないと悟り覚悟を決めるが、予想した衝撃が来ることは無かった。何故ならその攻撃は別の人物によって受け止められていたから。

    「おまたせ!」
    「間一髪です!」
    「マリン!コフレちゃん!」

     彼女の目の前には先程別れた仲間達の姿があった。最も先程とは違いマントを羽織った姿であったが。また、その一方で彼女を追ってきたものがいるのも事実だったが。
     
    「お客さんも連れてきたの?」
    「助けてあげたんだから文句は言わないの」

     軽口に軽口で答え、お互いに微笑み合う。だがその笑みは長くは続かなかった。パインと対峙していた敵とマリンを追跡してきた敵が銀色の粘塊へと形を変えると、一つに融合し始めたからだ。

    「どう思う?」
    「やっぱりフュージョン・・・なのかなぁ?それより問題は・・・」
    「これからどうするか、だよね」

     一つに融合し、再びヒトガタをとった敵を見据えるふたり。だが、それぞれの仲間がいない以上、合体技が使えない状況でどう戦うべきか。その思いに至り、そして同時に結論へと辿り着く。

    「あたしが相手を撹乱したところで」
    「私が浄化する」
    「さあ、やるっしゅ!」

     ふたりは頷き合うと、マリンが、続いてパインが飛びかかる。

    「マリンインパクト!」

     一気に距離を詰めたマリンの掌に生まれた空色の光が、衝撃となって敵を吹き飛ばす。そして-

    「プリキュア・ヒーリングプレアー・フレッシュ!」

     -倒れたところに山吹色の光が奔流となって襲いかかる。そして光の消えた跡には・・・何も残っていなかった。

    「・・・これで終わり?」
    「・・・見たいね」

     半信半疑、といった面持ちでふたりは顔を見せ合う。それも当然だろう。かつて戦ったフュージョンはプリキュアの技をことごとく吸収するという厄介な性質を持っていた。その為に一度目と二度目はプリキュア全員の力を結集する事で、三度目はフュージョンの“分身”とも言うべき存在の力を借りてようやく倒したのだ。それを考えれば今回は「あっけなさすぎる」と言える。とはいえ一切の気配がしない事も確かだった。

    「でも動物達も戻ってきたみたい」
    「ならやっぱり終わりって事?」

     語尾が疑問形になってしまうのも仕方のない所ではある。とはいえこの場に留まってもどうしようも無い事もまた確かだった。

    「・・・帰りましょうか」
    「・・・そうだね」

    ********************************************************************

    「これからどうしよう?」
    「とりあえず家に帰ってお風呂に入ろうよ。このままだと風邪ひいちゃうって」
    「マリンは風邪ひかないから大丈夫です!」
    「ちょっと、それどういう意味!」
    「そのまんまの意味です!」
    「・・・」

     妖精形態に戻ったコフレと喧嘩を始めながらも、家に向かう足は緩めないえりかについていきながら、祈里はプリートフォンを取り出す。

    (あれがフュージョンだったのかどうかはわからないけど・・・私達を狙っているのかしら?)

     今回の事件が何を意味するのか、その答えは出ないものの、友人たちへの警告は必要だろう。そう考えながら祈里はプリートフォンに文章を打ち込んでいく。漠然とした不安を抱えたままに。

    -fin-

    ********************************************************************

    昨日の生放送で二次創作をやってみろと言われたのでやってみた。でも何を書きたかったのか自分でもわからない。


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