ユーザーブロマガは2021年10月7日(予定)をもちましてサービスを終了します

  • 【デレマス小説】ココロの配達員 最終章「万全、じゃないけど大丈夫」

    2021-04-24 18:00
    午後三時過ぎの公園、乃々は木陰でゆっくりと目を覚ました。
    真っ白のスケッチブックには、色とりどりのクレヨンで、公園の風景が描かれている。

    空高く舞い上がる噴水,木々に止まる小鳥たち,手を繋いで歩く親子の姿。
    他にも、様々な風景画や人々の幸せそうな様子が、一枚一枚に描かれている。

    「さっきのは…夢?」

    そう思った乃々がスケッチブックを見ると、描いた覚えのない絵が一枚落ちた。
    そこには、乃々とあの白山羊の配達員がニッコリと笑いながら、大きなハートを渡し合う姿が描かれていた。
    そして、絵の後ろには小さな字でこう書かれていた。



    ”いつもあなたの心のそばにー”



    その文字を読んだ乃々は、嬉しくなってニッコリと笑った。

    「森久保は、森久保のまんま。そのまんまの私で良いんだ♪」

    乃々はスケッチブックとクレヨンを片付けて立ち上がる。
    そして、軽い足取りでダンスレッスンの練習場へと向かった。

    とある空間の中。
    乃々が元気に走り出す様子を眺めている人物がいた。

    鞄の中には、たくさんのハート型のぬいぐるみがぎっしり入っている。
    服装の身だしなみを整え、右袖に「〒」マークの腕章を付ける。
    深々と帽子を被ると、小さな声でゆっくりと呟いた。

    「今日も元気に、頑張れ………私。」

    そして、配達員はココロを届けに、空高く飛び立った。
  • 広告
  • 【デレマス小説】ココロの配達員 第五章「あなたがいる その世界は眩しすぎて」

    2021-04-17 18:00
    配達員の優しい心に、乃々は涙が溢れて止まらなかった。

    思えば、自分も心が傷付いていた人間の一人だ。
    嫌な人はいるし、理不尽な出来事もある。
    人の幸せが羨ましくなったり、周りの目が気になったり、その度に自分自身を攻めてしまったり。
    いつも誰かのことを考えて、悩み苦しんで、頭の中がぐるぐる回る毎日だった。

    お芝居と同じように、人生にも上手下手があるんだ。私は人生が下手な人間なんだ。
    そんな風にいつの間にか思い込んで、自分で自分の心を傷付けていた。

    でも、生き方に優劣や勝敗ってあるのかな?
    人生に正しいや間違いってあるのかな?
    「生きる」って何なのかな?

    どんなにささやかでも、自分自身を認めること。
    自分を受け入れて、そのまんま前を向いて進めばいい。
    精一杯に生きる事で、自分の心を豊かにしていけばいい。

    配達員さんはきっと、この事を伝えたかったんだ。
    自分が辛くても、悩んで苦しみ続けていても、誰かの幸せをずっと願って。
    ポロポロと溢れる乃々の涙が、配達員の最後の荷が入っている鞄に落ちた。

    その瞬間、鞄が光り出し、中から最後の「ココロ」が飛び出してきた。
    「ココロ」は配達員の空いた心の中にスっと入る。
    すると、配達員の姿が徐々に白山羊の姿に戻っていく。

    乃々の中に芽生えた「ありがとう」という優しい心。
    こんな自分も前を向いて、一生懸命に歩もうと決めた強い決意の心。
    その心に共鳴するかのように、ココロはより一層輝きを増していく。
    そして、配達員はすっかり元気な姿になって、乃々にニッコリと微笑んだ。

    そして、乃々の目の前が真っ白になった。
  • 【デレマス小説】ココロの配達員 第四章「傷つくことなく笑っていられたのは」

    2021-04-10 18:00
    最後に一つだけ残ったココロを届けようとした時、白山羊の配達員が苦しみだした。
    酷く息切れをしながら、胸に強く手を当てている。
    何が起こったのか分からず、乃々は配達員の顔色を伺い、戸惑っていた。

    「ど、どうしたんですか?胸が痛いのですか…?」

    心配そうに見つめる乃々に配達員は「大丈夫ですよ」と答える。
    しかし、その顔色はどんどん酷くなっていき、よく見ると白山羊の配達員の姿が、
    だんだんと黒ずんで、歪な姿に変わっていく事に乃々は気付いた。

    そして、とうとう配達員が倒れ込んでしまった。
    慌てて乃々が駆け寄るが、倒れ込んだ配達員の姿に乃々は驚いた。

    なんと、配達員が黒い山羊の姿に変わっており、胸の部分がハートの形にぽっかりと穴が空いていたのだ。

    「な、何なのですか!?その姿は…?」

    怯える乃々に配達員が苦しみながら、ゆっくりと答えた。

    「私が届けていた『ココロ』は、私自身の“心の一部”なのです。
     悲しい人には「楽しい心」を、寂しい人には「優しい心」を。
     人の心は誰かの心を与えることで、苦しむ事も癒す事も出来ます。」
    「心で人を癒す…?」
    「この世界の人々は、心が傷付いている人で溢れています。
     嫌な人や苦手な人からの人間関係に疲れる。
     理不尽な目にあって、忘れられないくらい恨んでしまう。
     人からの何気ない言葉に傷付いてしまう。
     SNSなどから人の幸せに嫉妬してしまう。
     人と自分を比べて落ち込んでしまう。
     そんな人々の心を少しでも助けたい、そう思い、私自身の心を分け与えていたのです。」

    配達員の言葉に、乃々はいつの間にか涙を流していた。