【デレマス小説】道しるべ 第3話「君に伝わりますように」
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【デレマス小説】道しるべ 第3話「君に伝わりますように」

2019-05-23 12:00
    初めてその人の声を聴いたが、どこか悲しげな、それでいて透き通るような声だった。

    色んなロックバンドやアーティストの曲を聴いているので、色んな人の歌声も聴いてきたが、こんな声を聴いたのは生まれて初めてだ。
    その人の返答が気になって、私はさらに問いかける。

    「どうしてですか?いつもここで歌っているんでしょう?」

    すると、続けてその人は答えた。

    「いつもとは限らないよ。
    昔はバンドもやっていたし、ライブなんかもたくさん出ていたけれど。
    誰も聞いてくれなくて、認められなくて、それでメンバーも居なくなってね。
    それ以来、僕一人でこうして時々歌っているんだ。」

    過去に何かあったのだろうか、気まずい事を聞いてしまった。
    ライブなんて、学校であの子がやった一回だけしか見ていないので、本格的なライブの事情なんて全然分からないけれど、その人が酷く気の毒に感じた。

    たった一人でこの大都会の路上で歌っている事を考えると尚更だ。
    あまりの気まずさに、すぐにその場から立ち去ろうとした時、その人が話し掛けてきた。

    「でも、こうして話し掛けてくれたのは君が初めてかな。
    歌うのは僕一人だし、聴かせる相手なんて誰も居ないんだけど…
    歌を聴いてくれてすごく嬉しかったよ。」

    私は立ち去ろうと、そっぽを向こうとした足を止めた。
    私が初めての観客…そう思った瞬間、あの日に見たライブの事を思い出した。

    『ライブ見に来てくれてありがとう!
    歌うのは私一人で、聴かせる相手なんて居ないんだけど…
    歌を聴いてくれてすごく嬉しかったよ!』

    初めて見たライブで、あの子が私に言った言葉だ。

    その子も一生懸命に頑張ったんだろう。
    誰も聴いてくれない人だって居たのに。

    それでも必死に歌い続けたんだ。
    きっとこの人も。



    「歌、聴いてもいいですか?」
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