【デレマス小説】星の飛行機 第1話「本当の私を誰も知らない」
閉じる
閉じる

新しい記事を投稿しました。シェアして読者に伝えましょう

×

【デレマス小説】星の飛行機 第1話「本当の私を誰も知らない」

2019-07-20 12:00
    「面接はこれで以上です。結果は後日お伝えします。」

    「はい、ありがとうございました。失礼します。」

    面接官がそう告げると、私は礼をして席を立つ。
    重苦しい空気が漂う会場を出ると、正門の前で手を振る母の姿が見えた。

    「お疲れ様、ありすちゃん。面接どうだった?」

    自分の名前を呼ぶ母の姿に、私は少し不機嫌な顔になる。

    そもそも私は自分の名前が大嫌いだ。
    「ありす」だなんて、おとぎ話で出てくるような名前だ。
    そのせいもあってか、学校ではいつも名前の事でいじられ、陰から笑われているような、そんな嫌な気分になるからだ。
    好きでそんな名前になった訳じゃないのに、と思いながら私は答える。

    「可もなく不可もなくだったよ。結果は後日伝えるって。」

    そう答えると、母は不安げな表情を浮かべた。

    「そうなの…すぐにでも結果を聞きたかったけれどね。
     それに、ありすちゃんの実力なら、即採用しても良いと言うのに…」

    また母の独り言が始まった。

    「お母さん、その“ありす”って呼ぶのやめてって言ってるでしょ。
     それに次は塾に行く時間なんだけど。」

    話が長くなるといけないので、私は遮るように母に言う。

    「あら、そうだったわね。
     それじゃあ行きましょうか。」

    そう言うと、私と母は車に乗って塾へと向かう。



    私は将来、歌や音楽に関わる仕事をやってみたい。

    そのために私は、学校や塾,時々だけどこうしてオーディションの面接を受けている。
    音楽の業界に入るためには、それ相応の実力は必要だし、勉強は絶対に欠かせない。
    私は母の教えもあって、毎日規則正しく過ごしている。

    朝6時に起きて、身だしなみを整え、学校へ行って、教科書を読みながら昼を過ごして。
    下校したら塾へ行って、帰ったらまた復習して、23時までには寝て、また朝早く起きて。
    そんな毎日を送りながら、私は将来のために勉強を続けている。
    勉強自体はそんなに苦では無かったし、そもそも一人の時間を有効に活用している。

    だから友達はいなかった。
    と言うより、私には必要なかった。

    私と友達になろうなんて言う人は居ないし、私はみんなと馴染む事が出来ない。
    いや、正確には馴染もうとも思わなかった。
    私の名前は同世代の子たちに限らず、大人からも子供扱いされるのが酷く嫌だった。

    私は私。
    一人の大人として見てもらいたい。

    だから私は一生懸命に勉強をして、歌や音楽の仕事に就きたい。
    言われた仕事はキッチリとやる、そんな完璧な大人になるために。

    「そう言えば、明日から夏休みが始まるわね。
     夏休みの間、あなたは一人で東京へ合宿に行くけど、心配無いわよね。」

    明日から夏休み…
    他の子はきっと、勉強そっちのけで遊ぶのだろう。
    それに比べて私は、東京の合宿で勉強の毎日だ。
    1日でも早く“大人”になるために。

    「明日から楽しみ。」

    私は車の窓から映る夕日を眺めながら、そう答えた。
    広告
    コメントを書く
    コメントをするには、
    ログインして下さい。