活動10周年特別記念詩『回想電車』
閉じる
閉じる

新しい記事を投稿しました。シェアして読者に伝えましょう

×

活動10周年特別記念詩『回想電車』

2020-02-12 00:00
    星が煌く満天の
    夜空に輝く美しい満月
    流れ星の如く降り立つ産声に
    光の中で微笑む二人を見た

    信濃川のせせらぎに耳を澄まし
    すすき野原で春風に吹かれ
    大手大橋の土手で腰下ろし
    おにぎり頬張り未来を夢見る

    越路町は相変わらずの田舎だが
    黄金色の麦畑だけは壮大で偉大
    暑い夏の日はじっちゃと田植え
    泥だらけの作業着で泥団子も作った

    小学生の頃は転校だらけ
    東京 徳島 そしてまた新潟
    転々と変わる学校生活と友達付き合い
    はるか遠い友よ どうか達者で

    半年だけ通ってたヤマハ音楽教室
    そこで初めてやったピアノコンサート
    慣れない手付きで冷や汗の演奏
    先生と母親だけは褒めてくれた

    中学になってから図書室に引きこもり
    愛読の小説だけが唯一の話し相手
    一学期かけて書き下ろした小説は駄作
    どこにも旅立てなかったジュブナイル

    初恋相手は高校時代のクラスメイト
    結局実らなかったのはまぁいいとして
    面食いだったとか今更言ってくれるな
    ラブレターと花は学校裏のドブ川に捨てた

    二十歳になってから色んなものを作った
    映像 ポスター Webページ 二次創作
    真っ白なスケッチブックに夢を描いて
    ここから何かが変わると信じてた

    就職決まって東京へ上京
    望んだ職とは違うが不況だからやむを得ない
    涙目の両親に暖かく見送られ
    勇んで社会の大海原へ旅立つ

    早朝出勤と深夜帰りの繰り返し
    3時間睡眠で残業だらけの最低給料
    なけなしの金で買った肉屋のコロッケは
    故郷にいる母親の懐かしの味を思い出す

    何だかんだで会社を辞める事にした
    辞表を出すのに2年も浪費
    首をくくれたらまだかっこがついたかもな
    何もかも失ったと夜な夜な泣いてた

    一人の時間が増えたから東京中を見て回ったよ
    赤羽 池袋 新宿 渋谷
    新橋 原宿 浅草 お台場
    暇と小銭しか無かったから
    電車で日帰りの一人ふらり旅

    じっちゃの墓参りはいつも盆休みに
    両手を合わせて南無阿弥陀仏
    人が死ぬのは本当に嫌いだよ
    線香の匂いとか 親戚とか
    家族団らんとか ホントに反吐が出る

    高校受験に起きた新潟中越地震
    あれから街も景色も活気を取り戻したよ
    長岡と宮内を繋ぐフェニックス大橋
    宮内駅前の青島食堂は
    昔と変わらぬラーメンの味だった

    そう言えば25歳になった頃
    生活に困った友人に10万円貸してあげたっけ
    金は天下の回り物とは言うものの
    3年待っても結局返ってこなかったな

    故郷の空はこんなに蒼いのに
    都会の空はどうして薄汚れてるのか
    転職した会社へ向かう通勤快速
    スマホをいじりながら隅っこでいじけた

    父さんも母さんもだいぶ老けたけど
    そんな事に感傷なんかしないよ
    じっちゃの麦畑も 親戚が飼ってた犬も
    あれ何て名前だったかな?

    ばっちゃはいつもの野菜畑
    ビニールハウスで枝切って
    凸凹だらけの野菜をたくさんくれた
    何に使ってもすんげぇ美味かった

    20年ぶりに生まれ育った町を歩いた
    ケヤキの横にある地蔵に団子をお供え
    住んでた家は面影もない新築住宅
    近所のいちご畑も 隣に住んでた幼馴染の家も

    東京都世田谷区砧公園
    父さんと初めてキャッチボールした公園
    20年経っても変わらぬ花木の景色
    吊り橋渡った先の広場
    昔作った秘密基地の跡地

    時代が変われば街も人も変わる
    僕はこれからどこへ向かうのだろう
    考えても悩んでも分からないけれど
    行ける所までどこまでも行ってみるよ

    仕事帰りの最終電車
    月夜に照らされ ひとり並木道を歩く
    桜の木の下でご近所が酒盛り
    飲めや歌えや元気を出せや

    仕事帰りの最終電車
    月夜に照らされ ひとり並木道を歩く
    途中のベンチで季節外れの月見酒
    明日は明日の風が吹く
    広告
    コメントを書く
    コメントをするには、
    ログインして下さい。