ノミカイ
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ノミカイ

2014-07-20 20:39
  • 7
私は昨日『ノミカイ』という、それはそれはオソロシイ地獄の宴に参加してきました。

しかも『オフカイ』ですよ。
「鉄塔さん」「ドンピシャさん」「靴の底舐め太郎さん」なんていう風に、
現実の名前ではなく、ハンドルネームで呼び合うアレです。

冷静に考えると凄い空間です。
これを魔境と呼ばずして、何を魔境と呼ぶのでしょう。


そもそもノミカイ嫌いのワタクシが、何故そんな魔境に足を踏み入れようかと思ったかと言いますと、
遡ること一日前。
ドンピシャ(本名:せいじ)なる男から携帯電話に連絡がありまして、

「土曜日飲み会あるけど、俺もいるから来れば?」

みたいな、超上から目線のメッセージが届いたのです。
「俺もいるから来れば」=「俺がいないとお前は何も出来ないクズ」ということですから、
これは明らかに侮辱です。世が世なら宣戦布告だと捉えられても仕方ないわけです。

いつものワタクシならば即答で「行かぬ!」と答え、返す刀で「バーカ死ね!」と暴言を叩き込み、ドンピシャ(本名:せいじ)を一刀の元に伏せていたところなのですが、

……魔が差した、とでも言うのでしょうか。

超上から目線とは言え、一応「お誘い」には変わりなく、
誘われた→行く行かないの権利はこちらに発生する→こちらの方が立場は上
という方程式が成り立つわけです。

そもそも、誘われないのは悲しいです。
だって、誘われないと、断れませんから。
だから、誘われたら、それなりに嬉しいものなんです。

しかし、うむむ……と集合時間の数時間前までウダウダと悩みつつ、
結局出発することに決めました。


場所は新宿。
駅のホームに降り立つなり、人の山、山、山。
ギャル、ギャル男、ギャルギャルギャル男雨権藤。
もう世紀末のような光景が目の前に広がっていたのです。

その時私の目には、自動改札機が巨大な扉に見えました。
外へ出る階段は断崖絶壁です。どうやっても進めそうにありません。
ひょっとしたら合気道を極めかけたのかも。

しかし、ここに至るまでに多大な犠牲(電車賃)を払っているため引き返すわけにもいかず、

「かァ…ごォ…め……か…ご…め…」と呟きながら、一歩一歩前へと足を踏み出します。

目的地の居酒屋は、数年前に一度訪れたことがあったので、
その記憶を頼りに歌舞伎町の中へ。
集合時間の15分前なので、記憶が正しければ、時間ピッタリに着くでしょう。


夜の歌舞伎町――そこは欲望渦巻く魔窟。
歩くたびに、厳しい顔をした男たちが私の側へとやってきて、声を掛けてきます。

「おっぱい! おっぱい!」

言葉はちょっと違ったかも知れませんけど、概ねこんな感じのことを言うのです。
後ろ髪を引かれつつも「NO! NOおっぱい!」と首を振りながら、更に奥へと。


しかし、行けども行けども目的地が見当たらず。

(おかしい……この辺りにあったはずなのに)
(あれ、また同じところに出たぞ……)
(狐か!? 狐の仕業か!?)

正直、ちょっと泣きそうになりました。
だって、同じ道を通るたびに、さきほどの『おっぱい売りの男』が私の側へ寄ってきて、

「どこか行きたい所あるんですか?」

などと優しい声を掛けてくるんです。
『東京は恐ろしかばってん、甘い言葉と甘いおっぱいには気ぃつけんしゃい』
誰かのお婆ちゃんが言っていたであろう言葉を胸に刻みながら、私は彼らに首を振り、誘惑を振り払おうともがきます。

しかし、歩けども歩けども、一向に目的地は現れません。

(くそ……このままだと、頭の中がおっぱいでいっぱいになってしまう!)
(どうおっぱいすればおっぱい良いんだおっぱい!?)
(――そうだ、携帯電話!)

賢い私は、この局面を切り抜けるアイディアを閃いたのです。

(携帯電話で電話をする振りをすれば、あいつらも声を掛けてこないだろう!)

居酒屋にいるであろう知り合いに電話を掛ける、という選択肢はありませんでした。
だって、なんか迷ってるみたいで恥ずかしいですし……(実際は迷っている)。

「ああ、うん。そうそう、それで右足を出して、次に左足を出せば、前に進めるんだよ」
「あ、本当に? じゃあそうして貰える? 買い占めて貰える?」

これは、実際に昨日の夜、私が歌舞伎町で喋った台詞です。
あまりのアホな台詞に、自分で言っていて、ちょっと楽しくなってしまいました。
その甲斐あってか、おっぱい売りたちはこちらに話しかけてくることはありませんでした。


そうして歩くこと十数分……ようやく、目的の居酒屋へ辿り着いたのです!

すでに集合時間から15分ほど経過していたので、
およそ30分ほど迷っていた計算になるでしょうか。

正直、私のノミカイはここで終了でも問題なかったのですが、
実のところ、ノミカイはまだ始まってもいないのでした。

そこに待っていたのは、十人ほどの男たち。
彼らの元へと辿り着いたに過ぎないのです。


「どうもー」


実は迷っていた、という素振りは微塵も見せず、
私はノミカイの輪の中へ入っていったのでした。



そこから先のことを、私はあまり覚えてはいません。
ただ、正面の人や隣の人が、それぞれ私とは違う方向を向いて話している瞬間があり、
その時に携帯電話を見たら負けな気がするから見ない! という自分ルールを設けて、
必死に戦っていた時間があったことを、正直にここに記しておきます。


実際のところ、ノミカイ自体は楽しいものでした。
行ってみれば楽しいもんなんです。

なので、また誘ってください。
私だったらこんな面倒くさいやつ誘いませんけど、
でも、お願いします。


お願いしますよぉー。
是非ィー。
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ようこそ地獄の一丁目へ…。あ、そこの角を曲がると二丁目があります
71ヶ月前
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鉄塔さんの文章は、読んでいてその世界に引き込まれます。
71ヶ月前
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なんでこんなにいい文章なんだろうw
71ヶ月前
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このまま小説家になろう。
71ヶ月前
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鉄塔さんの文は須らくニヤニヤしながら読んでしまいます。
71ヶ月前
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最近の楽しみになってきましたw 面白い〜
70ヶ月前
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何度読んでも味わい深いですな。
70ヶ月前
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