琴葉探偵事務所 ~ずんだの力~(ボツ作品) 
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琴葉探偵事務所 ~ずんだの力~(ボツ作品) 

2018-11-07 23:56
    ~イントロダクション~

    ・琴葉探偵事務所は短編集です。前回を読んでいただかなくともお楽しみ頂けます。
    ・舞台は異世界で魔法ありのトンデモ世界です。
    ・タイトル通り、琴葉姉妹がメインになります。
    ・この回は途中でボツになりました。お蔵入りも勿体ないので途中ですが投稿しておきます。
     続きは……多分ないです。




     辺り一面、のどかな平原である。
     車内から見える外の景色は、とにかく緑がいっぱいだ。
     実った農作物が風に揺られ、綺麗な波を打つ。
     背の高い建物もなく、ずっと遠くの山が見える。
     ぷかぷか浮かぶ白い雲のさらに奥は、いつも見ている空よりもよっぽど澄んでいる気がする。
     まるで、壮大な自然に身体も心も包み込まれている気分だ。
     でも、そんな中で私は内心、汗をかいていた。
    「はぁ……大丈夫でしょうか」
     後部座席に座る、ゆかりさん――学生時代に一個上の先輩で今は警察に所属している友人――は空を見上げ、私たちの住んでいる魔道士の町、ロイドボイスに思いを馳せる。
    「ゆ、ゆかりさん! 今はリフレッシュの旅行中なんですから、もっとこう、ええと、気を抜いていきましょうよ!」
    「強引に連れてきたのはあなたたちでしょう……。全く、そっちこそ探偵稼業をお休みしていいんですか?」
    ――全く……この仕事人間!
     私、琴葉葵と姉、隣で車を運転中の琴葉茜は二人で琴葉探偵事務所を運営している。現在は本当の主――マスターが長期の外出中なので、その間の代理という形だ。
     大抵の仕事は姉が興味本位で受けてきた、まるで冒険の様な依頼ばかりだ。でも今日の旅行はまた違った理由だ。
     姉は前を向きながら言う。
    「別に仕事なかったしなぁ……。ゆかりさんの方も、警察の他の人がカバーしてくれる言うてくれてんやろ? 心配いらんて、優秀な仲間たちって言ってたやん」
    「それは……確かに、そうですが」
     そう呟いて、ゆかりさんは文句を言うのを止めた。
     私は姉に感謝しつつ、つい先日のことを思い出す。


     ――――朝。というのも、それを認識したのはこの直後だった。
     無重力な世界でふわふわと浮いているような心地よさから強引に引っ張られた不快感。
     私はとても耐えきれない騒音に目を覚ます。そして、それが事務所の扉についている呼び鈴であることに刹那の後、気づいた。
    「わっ!」
     私は声を上げ、飛び起きる。何事だ、と寝間着姿も気にせずに早足で扉に向かった。
     さすがに扉を開けるの憚られるので、うるさい扉をこちらからノックして、言う。
    「どちら様ですか?」
     若干、苛立ちを含んだ声音が出た。
     扉の向こうから、低く響く声が聞こえる。
    「俺はロイドボイス警察の……魔法犯罪とりしま――ええと何だったか、まあいい、とにかく、俺は結月ゆかりの上司だ!」
    「ゆかりさんの……? 今起きたばっかりなのでちょっと待っててください!」
     ゆかりさんの関係者がこんなに朝早くからやって来たということに、まだ意識の覚醒しきっていない私の脳内で警報が鳴る。
     何かあったのか、それとも、何か起こっているのか。
    「……なんだ、まだ寝てたのか。たるんでるんだな、かの有名な琴葉姉妹も」
     そんな呆れ声は急いで着替えに向かった私の耳には届かなかった。
     私は着替えて顔を洗って、鏡をチラ見だけしてから扉を開けた。
     眩しい朝日をバックに、そこにいたのは大きな男。
     長く愛用しているのだろう、ダメージの気になる茶色のスーツ。ずぼらな短髪と髭。鋭い視線が私を見降ろしている。
    「あなたは……」
     ゆかりさんに散々愚痴られ、目標であると自慢げに語る上司の特徴と一致した外見。
     男は眉をひそめ、言う。
    「結月の上司、京治(けいじ)だ。……もう7時だぞ?」
    「……すみませんね、私たち二人とも朝に弱いもので。どうぞ、突然の訪問なので簡単な飲み物しか出せませんが」
     叩き起こされた恨みを精一杯こめて、事務所の中に招待する。
     京治さんは、
    「失礼する」
     とだけ言って、まるで遠慮もせずずかずかと中へ入っていった。
     そして中心のソファにどかりと座る。
    「別に何も出さんでいいから、話をさせてくれ」
     はよこい、と言いたげに片目にしわを寄せる。
     私は必死に胸から昇ってくる感情を喉で抑え込み、正面に座った。
     京治さんは私が着席したのを確認すると、すぐに口を開く。
    「今日ここに来たのは、お前たち琴葉姉妹が結月の友人と見込んでのことだ」
    「……? どういうことです?」
     何だろう、全く焦りがないところを見るに、どうやら緊急事態ではなさそうだ、と考えを改める。
     京治さんは言う。
    「まずは依頼内容を話すか。――簡単な話、結月を強引にでもいいから休ませてやってほしい」
     私は目を細める。
    「休ませるって……ゆかりさん、無茶なことでもやってるんですか?」
     京治さんは肩をすくめる。
    「やっていると言えばやっている。アイツは手の抜き方がまだ下手くそだ。どんな仕事でも全力で挑む。殊勝な心掛けだが、それでは有事の際に体調を崩していた、なんて最悪の事態になりかねん」
    「まあ……ゆかりさん、手抜きは苦手ですからね。……自信過剰なせいもあるだろうけど」
    「そこでお前たちというわけだ。仕事という関係で繋がりのある俺が言っても意味がねえ、だから琴葉葵、そして琴葉茜。お前たちに結月のガス抜きをお願いしたい。期間はいくらでもいい」
    「……面倒見がいいのか悪いのか分かりませんね。どうしてこんな強硬手段に走るまで放っておいたんですか」
    「友人として怒るのはごもっともだな。……初めてだったんだよ、俺の仕事に着いてこれる新人は。どれだけ引っ張り回してもへこたれずに付いてくる。オマケに捜査技術も優秀ときたもんだ。俺は自分でも気づかないうちに、アイツがまだまだ若いことを忘れていた」
     遠い目で語る京治さんを見て、私は息をつく。
    「しょうがないですね、やりますよ――――ゆかりさんを休ませるお手伝い依頼……承りました」
    「そうか! それはありがたい。で、報酬はいくらだ?」
     私は立ち上がり、見降ろして睨みつける。
    「私を見くびらないで下さい。ただ友人と遊ぶだけなのにお金を要求するわけないでしょう」
    「ふん、そんなところもあいつに似てるんだな」
     小さく笑う京治さんを見て、私は首を傾げる。
    「あいつって?」
    「そりゃもちろん、この探偵事務所を若い女二人に任せてどっかいってるアホのことに決まってんだろ」
     私の頭に一人の人物が浮かんだ。
    「ああ、マスターのことですか。知り合いだったんですね」
    「知り合いも何も、あいつが探偵になったのと、俺が警察になったのは同時期で、ずっと鎬を削った仲だぜ?」
    「ふーん、そうなんですか」
     その時、がちゃり、と部屋の扉が開く。
    「おはよ……ん? お客さんか?」
     目をしぱしぱさせている姉がやって来た。
     京治さんは呆れて、言う。
    「……お前らは本当にだらしねえんだな」
    「お姉ちゃんはこれでも早起きな方ですよ。あ、コーヒー淹れますね」
    「おいおい、マジかよ……あ、砂糖も頼む」
    「――――んー?」
     寝ぼけて何が何やら分かっていない姉を見て、私と京治さんは笑みを浮かべた――――。


     それからゆかりさんに会って、旅行に行きましょうと誘って、渋るゆかりさんをその場の勢いで車に乗せたのだった。
    「そうそう、せっかくやし楽しまんともったいないで?」
    「……そうですね、息抜きも大切ですからね」
     どうやら姉はゆかりさんの緊張を解くことに成功したらしい。
     ゆかりさんは再び流れる景色に目をやり、言う。
    「それにしても、綺麗ですね。ロイドボイスにも農地はありますが、なんというか……緑がとても奥行きがある」
    「見てるだけで心が洗われる感じしませんか?」
    「ああ、確かに。心の洗濯、というやつかもしれません」
     ゆかりさんは窓を開ける。心地よい風が車内を循環した。
     私はホッとした。どうやらこれで、京治さんの依頼は達成できそうだ。

     △△△
     
     辺り一帯緑の景色から、住宅が点在する地帯を進む。
     姉が首を曲げ、言う。
    「あー、疲れたなぁ。ちょっとここらで何か食べへん?」
     観光ブックに目を落としていたゆかりさんは、言う。
    「あ、この辺りにありますよ、軽食屋。東北地方の名産品の一つ、磯ラーメンなる食べ物のお店みたいですが」
    「名産品」
     姉は一つの単語に反応した。
    「ならそこで決まりやな! ちなみにその磯ラーメンって何なん?」
    「何だろう、私も聞いたことないなぁ。美味しいんですか、それ?」
    私も姉も、磯ラーメン、という単語に聞き覚えはなかった。
    「海の幸をたっぷり使ったラーメンみたいですよ。磯の香りがするとかなんとか」
     ゆかりさんは本をめくり、言う。
    「どうやら味は塩と同じわけではないみたいですよ。写真は――おお、確かにこれは……」
    「え、どんなんどんなん、ウチにも見せて―や」
    「だめ、お姉ちゃんは運転に集中して」
     私たちは磯ラーメンなる食べ物に期待を膨らませる。
     そんな時間が、唐突に終わりを告げる。
     T字路に差し掛かり、姉が車を大きく減速させたその時――――
     突如、左方の遠くが、緑色に光った。
    「っ! なんかおる!」
     真っ先に気づいた姉は、後方を振り返って叫ぶ。
     しかし、今は車内でシートベルトを装着している――――!
     光った後、何かがこちらに向かって飛んできて、
    「あ、ゆかりさん、危ない!?」
     私がその飛来物の着弾点を予測した時には既に、気を抜いて私と同じ方角を見ていたゆかりさんの口元に何かがぶつかった。
    「むぐっ!?」
     衝撃か、ゆかりさんは頭を右側の扉にぶつける。
    「ゆかりさん、大丈夫か!?」
     姉がゆかりさんの安否を確認するのを見て、私は急いで車から降りて、敵襲のあった方角から車を遮るように立つ。
    「え? 女の子?」
    「ゆ、ゆかりさん?」
     私が眼前に映る光景と、姉がゆかりさんを見て困惑するのはほぼ同時だった。
    ギリギリ、容姿が細かく見えない程度の距離感に佇む、同い年くらいに見える女性は、緑色の弓のようなものを持っていた。
     全く敵意を感じないので、私は車内を振り返る。
     すると、身体を起こしたゆかりさんは…………何かを食べていた。
    「甘い……」
     ぼそりと呟いて、何度も咀嚼を繰り返す。
    「何や、それ?」
    「分かりません……餅? ちょっと粒々があって、食感もいいですね」
    「――――いかがですか? ずんだ餅のお味は」
     その声が想定よりも近くから発せられていることに気づいて、私は急いで振り返る。
     とにかく、緑色に身を包んだ女性だった。
    弓道着に見えないこともない服に黒い胸当て。
     頭には枝豆をモチーフにしたと思われるカチューシャ、長く綺麗な髪。
     そんな美少女だが、何より目立つのは左手に持つ弓だろう。
     これまた枝豆のような外見で、どうみても機能性を度外視している。
    「ずんだ餅?」
     私は警戒を続けながら、言った。
     緑の美少女は微笑を浮かべて、頷く。
    「はい、ずんだ餅です! 枝豆から作られているんですよ、美味しいでしょう?」
    「……えぇ? あの、私たちを襲撃したわけじゃないですか?」
     もう何がなにやら、私は思ったことをそのまま口に出した。
    謎の人物は首を傾げ、ふと何かに気づいたのか、わたわたと焦って、言う。
    「襲撃? ――――あぁ、すみません! この辺りで見ない方たちだったので、どうしてもずんだを広めようといきなり食べさせてしまいました……」
     姉とゆかりさんも車から降りてくる。
    「葵、大丈夫やで。この人は敵じゃないって」
    「そうですよ、これ、とっても美味しいですし」
    「え、え? …………ええと」
     ――色々と言いたいことはあるけど……深く考えるのはよそう。
     私は悩むのを止めて、警戒心を解くことにした。
    「私は琴葉葵、ロイドボイスで探偵をやっています。あなたの名前は?」 
    「探偵さんだったんですね! 私は東北ずん子、高校二年生です」
     真っすぐ綺麗な姿勢で名前を名乗ったずん子さんに続き、二人も自己紹介を行う。
    「ウチは琴葉茜、葵とは双子やで」
    「私は結月ゆかり、ロイドボイス警察の巡査です」
    「へぇ、皆さんロイドボイスに住んでらっしゃるんですね! 私、ロイドボイスにずんだカフェを開くのが夢なんです」


     
     ・・・続きはないようだ(ボツ)
    許してください!


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