海で見た人影
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海で見た人影

2020-06-01 23:50
    昔、小学3年生くらいの時に体験した話。
    私の生まれ故郷である九州の某県、某島に夏になると夏休みを利用して毎年帰郷していました。

    普段住んでいる所は付近に海が無いので、海で遊ぶ事のできる夏休み中はうれしかったです。
    でも『海』っていうのは楽しい事だけではないんですよね。

    その年の夏休み、いつものように宿題を朝の涼しい時分に終わらして、午後からは同じく夏休みを利用して遊びに来た従姉妹と一緒に海に遊びに行く予定でした。

    私の生まれた島はさほど大きな島ではなく、スーパーはおろか
    コンビニすらありません。
    もちろん子供が遊ぶような公園や遊戯施設も当然ありません。
    そうなってくると子供達の遊び場は自ずと自然の山や海となってきます。

    幸い好奇心旺盛な子供たちの欲求を自然は満たしてくれました。
    又、同時に危険な事も自然は教えてくれます。
    毒のある生き物、潮の流れ、触るとかぶれる植物・・・
    そういった自然の中で私たちは育った為、当時は人間的な思考よりも動物的な直感のほうが強かった気がします。

    昼御飯を食べ終わった後、各自親と一緒に海に繰り出しました。
    海に遊びに行くといっても、整備されたビーチや海の家なんて物があるわけでもない場所です。
    そんな場所の中で波止場で区切られた一角が私たちの遊び場でした。

    しばらく遊び、疲れたので海から上がって一休みしていると従姉妹がポツリと呟きました。

    従姉妹「あの人どこに行くんだろう?」
    私「ん?どれどれ?」
    従姉妹「ほら、あそこにいる人。釣りかなぁ?」

    そういって従姉妹の差した指の先には確かに人影がありました。
    私たちのいる場所からかなり離れていたのでぼんやりとしかわかりませんが、背の高さ、海風で髪がなびいていたので大人の女性ということが辛うじてわかりました。

    その人影を見た時、私は何となく「気持ちが悪い」「近寄りたくない」といった不快感を感じました。

    従姉妹「ねぇ?行ってみない?」
    私「えっ・・・」
    従姉妹「気になるじゃん!」

    従姉妹は面白がって跡をつけようと言いますが、私は不快感を感じていたので嫌でした。
    しかし強く言ってくる従姉妹に負け、従姉妹と私の二人で女性の跡をつける事になりました。

    人影が見えた場所は、私たちは「磯」と呼んでいる岩場がゴツゴツしており、かなり高い波も来る所で、釣りに来る人以外は滅多に人がこない場所です。

    私たちが磯に行くと、白波が岩場に打ち付ける音が響いているだけで、釣り人の姿も件の人影もありません。
    磯には人間、それも大人が姿を隠す物はどこにもありません。
    それでも私と従姉妹は躍起になって人影を探しました。

    どれくらい時間が経ったでしょうか。
    姿が見えなくなった私たちを探して、私の親と従姉妹の親が探しに来ました。
    私たちは見た人影の事を説明しましたが、親は「気のせい」「見間違い」で済ませ、信じてくれませんでした。

    帰宅後、従姉妹と昼間見た人影について話していると祖母が私たちの話を聞いていたらしく、そばに来て話をしてくれました。

    祖母の話では、昔から磯ではよく人が亡くなっているそうです。
    磯はゴツゴツした岩場で波も荒いですが、海に潜るとサザエやアワビなど海の幸の宝庫なので島の人が潜って採る事もあります。
    ただ入り組んだ岩場に勢いよく流れ込む海水の流れは強く、泳ぎに慣れた島民でも流され、溺れることがあります。

    又、勢いのついた海水は岩場で流れを変え、やがて渦を作り始めるので溺れた人は海面に上がってこれない。
    つまりは亡くなった人は遺体を発見されることもなく、いつまでも海中に沈んだままになっているそうです。

    「不慮の事故で波に攫われ命を落とし、遺体を発見すらされない」そんな霊達の無念の思いがまた次の犠牲者を連れて来ているのかもしれない。


    祖母「その人も、もしかしたら霊達の思いに誘われて命を落としたのかもねぇ」
    従姉妹「可哀そうな人なんだね」

    従姉妹共々しんみりしましたが、次に祖母の言った一言でゾッとしました。

    祖母「お前たちを仲間に引き込もうとしていたのかもね」

    自らを発見して欲しくて姿を現したのか、私たちを海へ引きずり込もうと誘っていたのか、人影の目的はわかりませんが無事に帰ることが出来たのは幸運でした。

    この体験の数年後同じように人影を見ましたが、無視しました。
    不慮の事故で亡くなった無念には同情しますが、仲間入りは勘弁してほしいですからね。

    ※私、従姉妹、祖母の言葉はわかりやすいように記載していますが、本来は方言で喋っています。







































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