• 「日本一高かった塔」オメガタワーに行ってきました

    2017-09-15 21:262
    お久しぶりです。迷衛星の人です。今回は宇宙と1%くらい関係のある「オメガタワー」の探訪記となります。

    ■そもそもオメガタワーって何?

     オメガタワーは九州と朝鮮半島の間に位置する対馬に設けられたタワーで、その高さは455m。東京タワーよりも高い塔が、日本には存在していたんです! 
     とはいえ東京タワーは鉄塔のみで建っているのに対し、オメガタワーは支線式、周囲1kmに100本以上のワイヤーを張り巡らせることで形状を保っています。「東京タワーは自立式鉄塔としては日本第⚪位」という言い方をするのはこのため。他に南鳥島や硫黄島にも同様のタワーが存在していましたが、すでに役目を終え取り壊されています。

    対馬北部に立っていたオメガタワー(対馬オメガ局送信用鉄塔)
    1975年竣工、1998年解体


    ■オメガタワーの役割

     オメガタワーは「オメガ航法」という電波航法のシステムの一員を構成していました。地球の広範囲に向け電波を発し、船舶や航空機の位置を割り出す仕組みです。遠くからでもよく見える電波の灯台、あるいは地上のGPS(GNSS)と思っていただければ。電波の到達範囲は1万km以上で、そのために波長の長い電波を使うため、タワーも必然的に高くなりました。
     現在ではGPSにその座を譲り、オメガ航法は終了されています。

    ■実際に行ってみた

     オメガタワーが存在したのは対馬北部。博多からフェリーで6時間、そこから車で15~20分ほどかかります。行きのフェリーは夜行であり、しかも2等客室しかないオンボロな船。対馬の観光スポットは南部に集中しているため、北部行きはとてもローカルな路線です。

     そしてレンタカーに乗り換え、細い生活道路と曲がりくねった山道をくぐり抜けると、そこに現れたのは、緑の森の中でもひときわ目立つ朱色の建造物。オメガの遺跡です。


     オメガタワーは現在、塔基部と中間部、そしてワイヤ類が屋外に置かれています。400m以上もそびえる塔が存在していたとはとても思えません。


    タワーの基部。写真ではわかりにくいですが、およそ10mもあり結構大きいです。しかし非常にくびれた部分があり、タワーにしては心もとない印象を受けます。ワイヤーで支える構造だからこそ、といえるのでしょう。


    遠景。緑の中に朱色の人工物が置かれ、異彩を放っています。

     日本海に突如として浮かぶ450mの塔、オメガタワー。当時はどのように見えたのか見当がつきません……役目を終え、今ではひっそりとその身を横たえておりました。



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  • 気象衛星「ひまわり」シンポジウム 備忘録的報告書

    2017-07-22 21:341
    気象衛星ひまわり~宇宙からの最先端データが切り拓く未来~
    主催:気象庁、気象ビジネス推進コンソーシアム、地球ウォッチャーズ-気象友の会-

    1977年7月14日。この日、日本初の気象衛星「ひまわり1号」が打ち上げられました。それから40年を記念して、7月22日に東京の一橋講堂にてシンポジウムが催されました。



    このブログでは半ば備忘録的ではありますが、私が参加してきたシンポジウムの内容を記録を残しておきます。見づらいとは思いますが箇条書きです。
    メモを参考にして書いており、発話者の発言の趣旨から外れている可能性もあるのでご了承ください。また丸括弧()は筆者のコメントです。
    あとこの記事ではひまわりの基本的な事項には触れませんので、JAXAでもWikiでも萌衛星でもいいので、参考にしつつ見ると良いかも。

    1.堀川康(元JAXA理事)

    ・NASDA入社後直後からGMS担当に。
    ・1970年代はじめ、当時はロケットの開発とETS(技術衛星きく)の開発が進められており、GMS(気象衛星ひまわり)、BS(放送衛星ゆり)、CS(通信衛星さくら)の"GCB"が実利用の3本柱。
    ・GMSの主製造としてはフィルコ・フォード社(のちのロラール社?)とヒューズ社の2つが候補に挙がっていた。甲乙つけがたいものの、製造はヒューズに決定。メディアなどの予想はフィルコ・フォードであり論争にもなったが、この決断は正しかったと思っている。
    ・1975年、入社3年目なのにヒューズ駐在員に選ばれる。(課長クラスが行くと思っていた)
    ・ヒューズの工場には7-8機の衛星が同時並行で組み立てられており、「日本もいつかはこうならなくては」と思った
    ・ヒューズ社は技術流出を恐れ行動を制限された。「そちらに技術力はないのだから、黙って見ていろ」この制限は親睦を深めることで解けていった。
    ・最後まで図面の開示はなかったが、現地の技術者からは手書きでいろいろ教えてもらえた。日本への報告も手書き図面。2年強の滞在で日本と200通以上もやりとりした。
    ・報告書は「駐在員報告書」として冊子にまとめられ、NASDA内部で大いに参考にされた。「バイブルだった」
    ・ヒューズで記憶に残った言葉「地上で起きた問題は、必ず軌道上でも起きる」

    ・GMSの運用にはヒヤヒヤした。GMS-1ではスピン軸にズレがあり、画像に歪みが生じた。GMS-5では機械のトラブルで南北が切り欠いた画像に。GMS-5は寿命をはるかに超えて運用され、まさしく薄氷を踏む思い。

    ・ひまわり8号にはNASAの気象衛星に搭載される次世代のセンサー「ABI」とほぼ同レベルのセンサー「AHI」が搭載された。しかしNASAの打ち上げが遅れ、ひまわり8号が先にお目見えすることに。堀川氏は「本当は先行してほしくなかった」と語る(なぜだろう?)。しかし海外からは祝福のメッセージが送られてきた。
    ・システム工学・品質管理などは、いつの時代も同じ。疎かにしてはいけない。
    ・ひまわりがあったからこそ気象予報の市場が拡大した。まだまだ開拓の余地はある。

    2.宮本仁美(気象庁)

    ・データ量の比較。初代を1とすると、GMS-3~5は2倍、MTSATは8、ひまわり8号は400倍。
    ・潮位データ、火山灰、エアロゾル、風、海面温度、雷予報など、幅広く気象・環境に関わるプロダクトを生み出している。

    3.パネルディスカッション

    ・ひまわりは台風に強い。10分ごとの観測になったことで、予報は格段に改善する。
    ・ひまわりの観測から降水量を割り出し、そこから河川流出量を計算。(河川の水面高さも予測できる?)
    ・ひまわりのデータから日射量や消雪日を予測する。日射は作物の収穫量に比例し、消雪日は種まき時期や生育に影響する。
    ・ひまわりは保険にも影響を与えている。農業保険のひとつに天候インデックス保険というものがあり、降水量などから機械的に干ばつ度合いを計算し、農家に保険料を支払う。従来は個別に損害調査を行っていたが、これには手間がかかる。
    ・東南アジアではアメダスなど地上で降水量を測定する手段すら乏しい地域がある。そこではひまわりの衛星画像から降水量を割り出すことで、保険を適用できるようになった。

    4.ひまわりの今後
    ・現在の台風予報は進路の予測が多い。将来的に進路予測が的確になり、現在の数百kmの予報円から数十kmまで小さくできれば、「台風の東側で猛烈な風が吹くので、この地域のいつ頃は特に警戒」などといったピンポイントな予報に変わる。予報の進化は予報の種類自体を変える(すでに雷予報や記録的短時間大雨情報、竜巻警戒情報、異常天候早期警戒情報など、新しく始められたサービスは多く存在する。社会のニーズという側面もあるが、気象予報の精度向上があってこその産物ではないだろうか)
    ・ひまわりは日本生まれなので、気象条件も日本を参考にしている。海外での利用を考えると、海外特有の気象(スコール)を考慮したモデルを構築しなくてはならない
    ・ひまわり8号は可視光~赤外線を見る光学カメラを搭載しているが、将来はマイクロ波などの観測も行いたい(現在の技術では分解能が悪く、静止衛星には搭載できない)(むしろ小型の極軌道衛星から頻繁に観測する方が、実現可能性としては高そうだ)

    以上です。短い時間であり、本当ならもっとお話が聞けるとよかったのですが・・・とにかく有意義なシンポジウムでした。気象庁さん始め多くのスタッフと出演者の方々、ありがとうございます。機会があればまたしてほしいな。

  • ドイツの技術力は……フランスに劣る?

    2017-06-06 23:565
    カメラを愛する人達の中には、ドイツ製のカメラにひかれる人がいる。ライカ、ツァイス、ローライ……ドイツは民衆受けする実用的なカメラを製作した地であり、現在でもその光学技術は卓越している。そのはず。そう信じたいのだが。

     しかし少なくとも宇宙では「ドイツの技術は世界一ィィィ!!!」ではない。今回は空のカメラ=偵察衛星のお話だ。


     今回の主役はCSO衛星。フランス語でComposante Spatiale Optique、直訳すれば「光学機器コンポーネント」の略だ。フランス語が使われているのでもちろんフランスの衛星である。製造はアストリウム(エアバスの子会社)&タレスアレニア。分解能20cmという非常に高い能力を持つ最新の偵察衛星である。打ち上げは2018年からの予定だ。



    フランスの最新式偵察衛星 CSO 
    [(c)Airbus Defence and Space, Thales Alenia]

     フランスは長年、光学センサーを搭載したスパイ衛星を保有していた。1995年には、地球観測衛星として知られるSPOTをベースにした偵察衛星Helios-1Aを軌道に投入した。このときすでにベルギー・イタリア・スペインなどと「共同」で利用している。製造・運用・地上設備は全てフランス持ちであるので、要するに金を払えば画像は渡すというスタンスなのだろう。

     さて、話は2015年に遡る。
     このCSOは3機体制を予定しているのだが、フランス政府にはお金がなかった。2機までは予算が組めたので製造に入ったが、あとの1機には手が回らない。そのためフランスは金策に走った。自国ではない、他のヨーロッパの国に目をつけたのである。それがドイツであった。

     一方のドイツ。ドイツにも自前の偵察衛星はあったのだが、こちらはSAR(合成開口レーダー)という別タイプのもの。カメラが得意なイメージの強いドイツだが、宇宙では全く通用しない。光学センサーの偵察画像を得るためには、フランスの言いなりになるしかないのだ。

     結局ドイツが結んだ条件は、
    「3機目の衛星の約50%の製造金額を負担する。その代わり、衛星画像全体の20%にアクセスが可能になる」
    というものであった。

     これをどう捉えるかだが、フランスは自国の企業のために税金を投じて産業を活性化しているのに対し、ドイツはただ単にフランスに金を払うだけ。その偵察衛星システムも他国に握られているため自由が効かない。ついでに言えば、ドイツの見ている画像はフランスに筒抜けだ。即応性もなく、外交的にも弱みを握られた形である。

     それでもドイツは、この条件を飲むしかなかった。フランスの、というかエアバスの強大な権力と実力には逆らうことなどできないのである。哀れ。


    <おしらせ>
     最近動画作る意欲がだだ下がりなので、思い切って充電期間ということにします。
    「モチベのないときに書いた原稿が面白いわけない」というニュアンスのことを某ラノベ作家の山田先生からお伺いしたので……KSPをひそひそやりつつ、気合溜めていきます。
     今回の話も面白いのかな……? てか面白いってなんだ……? なんかもうよくわかんないや。
     ではでは。