『オクテ女子のための恋愛基礎講座』発売にあわせて、社会学研究者でBL研究家の金田淳子さんと、「オクテ男女の恋愛と結婚と性」について語り合いました。

『オクテ女子のための恋愛基礎講座』(幻冬舎文庫583円)

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金田淳子/
社会学研究者。BL・やおい・同人誌研究家。
東京大学法学部と文学部を卒業後、東京大学大学院人文社会系研究科博士課程単位取得退学。
文芸批評誌『ユリイカ』のボーイズラブ特集や『美術手帖 特集:ボーイズラブ』に企画段階から協力。
共著に『オトコのカラダはキモチいい』 『文化の社会学』等。ホウドウキョク内のフリーダムな番組『真夜中のニャーゴ』金曜23時05~に出演中。
『オトコのカラダはキモチいい』公式チャンネル(二村ヒトシ・金田淳子・岡田育)

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アル:ニコ動は男性読者が多いのですが「恋愛以前に、初対面の女性と話せない」という相談をよくもらいます。
オクテな人に限って「自分のトークで盛り上げなきゃ」と気負っていて、逆に話せなかったり、話しすぎて自爆したりしますよね。
大事なのはトークよりもリアクションなんですよ。ニコニコと笑顔で聞いてくれて、表情やリアクションが豊かな人。そういう人と話してると楽しいし、また会いたいなと思うから。

金田:たしかにそうですね。自分から論題を出せるというよりは、相手の言葉に対して的確に…的確というと難しそうだけど、相手の話している内容に沿って「へえ~そうなんだ」「それでどうしたの?」みたいに合いの手を入れてくのは大事ですね。

アル:「この人、話していて楽しいな、愛きょうがあるな」と感じる人のリアクションを観察するといいですよ。かつては私も「男に愛きょう振りまくなんてまっぴら!」という想いがあったけど…。

金田:私もあった!

アル:ね!でも実際、同性でも愛きょうのある女子って可愛いなと思うし。男子も可愛げのある人が愛されますしね。

金田:聞き上手な人は、異性に対してだけじゃなく、同性にも能力を発揮しますからね。というか私、男の前で態度が変わる女の人ってあんまり見たことない。物語の中に出てくるけど。

アル:乙女ゲーのヒール役とかで出てくるけど、リアルではあまり見かけませんよね。食べ物の取り分けとかで気をつかう子は、女同士の間でも気をつかうし。

金田:そうそう、習慣的にやってるような感じだよ。

アル:あと会話のキャッチボールのコツでいうと、上手に質問して相手の話を引き出すことですよね。男子は特に自分ばっかりしゃべって、壁打ちトークしてしまう子が多いので。

金田:ああ、特にオタクの子はね。私もそうなので、身につまされる話です。

アル:特に「この人は理解者だ」と思うと、話が止まらなくなってしまう。
たとえば私が「ガンダムが好き」と言うと、壮大なロボットアニメ史をワーッとしゃべりまくるとか。それで「ボトムズ見ずにガンダム語っちゃダメでしょ」とか言われて「いや語ってるのはあんただ!」みたいな。

金田:語ってるうちに、気持ちよくなっちゃうんでしょうね。その気持ちはすごくわかります。でもキャッチボールじゃなく壁打ちで、ひたすら一方的に聞かされる方は、うんざりするだけだから。

アル:「詳しくてスゴイな」じゃなく「自分ばっかりしゃべる人だな」としか思わない。一方的にしゃべって気持ちよくなるのは、オナニーと同じですよね。会話はオナニーじゃなくセックスじゃないと。

金田:特に、わかった口調で批評家しゃべりは絶対やめた方がいい。
そういうのって大抵、そのジャンルを知らない人にとってはつまらないし、仮に相手が詳しい人だった場合も、対話にならない断言口調のお話とか別に聞きたくないし。
そうでなく、「自分は○○を観て面白かった」といった話に特化すべきだと思う。

アル:「何が面白かった」とか「自分はこう思った」とか、自分の“感情”を話せばいいんですよ。でも多くの男性は感情を表現するのが苦手で“知識”を話したがる。

映画を観たあとも、女同士だと「あそこの場面で感動した」「あの人物の気持ちに共感した」とか話して盛り上がるんだけど、男性は「監督のカメラワークや脚本が云々」みたいなウンチクを披露して、うんざりされがち。
こちらが聞きたいのは「あなたがどう感じたか」であって、それによって「あなたがどういう人か」を知りたいんだから。

金田:それを仕事でやってるプロならまだしも、素人に聞きかじりのウンチクを語られても、反応に困る。

アル:「すごーい、詳しい!」とか言うの邪魔くさいし(笑)
男子は「自分が知らないことは話せない」と思いがちだけど、女子は「それって何?どういうこと?」と聞けるんですよ。男子は特に「それって何?」と聞けるようになるのがカギだと思う。

金田:あ、それすごく大事!男子は自分が無知であることに対して、恥ずかしさを感じるんですよね。特に一部のオタクはそれが大きいと思う。

アル:「知識が多い方が上」という価値観があるので。

金田:べつに上じゃないから。そもそもこんな無限のコンテンツがある世界で知らないことがあるのは当たり前だから。

アル:知らないことは恥じゃなくて、知らない話題を避けようとしたり、知ったかぶりする方が恥ずかしから。
逆の立場で考えても「それって何?知らないから教えて」と相手に聞かれたら嬉しいでしょ。自分の話に興味をもってくれてるんだ、と思って。

金田:それに「それって何?どういうこと?」と聞くことで、話が弾んでいくわけじゃん。知識自慢して好かれようとして煙たがられて終わるのは、本末転倒だよね。

アル:「ボトムズ観ずにガンダム語っちゃダメでしょ」と上から目線で言うような人に対して「おまえ、観てるだけやろ」と思うんですよ。おまえが作ったわけちゃうやろって(笑)

金田:作った人でもなんでもないし、観てきたからって偉いわけじゃないから。
たとえばガンダムを全く知らなかった人が、ガンダムの新作を初めて観てどう思ったか、自分とは違う新鮮な感想にあらためて学ぶ感じでトークするとかね。そういうことをできるのが、楽しい会話ができる人だと思います。

アル:初対面の相手と何を話していいかわからないから、ウンチクを語る人もいるでしょうね。

金田:確かに、初対面で共通の趣味とか一切なかったら、何話していいかわからないのはわかる。

アル:『ゼロから始めるオクテ男子愛され講座』では「初対面の会話の具体例」を解説してるんですが、参考になったという感想をもらいます。読むだけでは使いこなせないので、実践練習が必要ですけど。

金田:実践練習の場としてバーを挙げてるじゃないですか?
私の女友達で、すごい社広範囲が広い方がいて、その方もバー好きで一人で行ったりするんですけど、実は私にとってはバーってオシャレイメージが強すぎて、怖い(笑)

アル:いや、それはお店によりますよ(笑)。私が行くのはアットホームなカジュアルな雰囲気のバーで、敷居は高くないです。オタクのお客さんもいるから、漫画やアニメの話で仲良くなったりして。「デュフフ」とかは言わないけど。

金田:ていうか、バーに来る人は「デュフフ」って言わないのでは…。

アル:そうか(笑)。私は夫ともバーで出会って、ガンダムがキッカケで仲良くなったので。

金田:その社交範囲の広い女友達も、バーで今の彼氏と出会ったらしいので、バーすごいなって思ってます。ただ自分があまりお酒を飲めないから、行ってもそんなにうまみがないかもって。長時間いられないし。

アル:飲めないお客さんも結構いますよ。人としゃべりたいとか、雰囲気を味わいたくて来てる人も多いし。

飲めない人はノンアルコールカクテルを頼むといいです。お店の人に「お酒弱いので、ノンアルコールで何か作ってもらえますか?」と言って「どんな感じがいいですか?」と聞かれたら「柑橘系でフルーティーなやつ」とか「甘くないスッキリ系」とか希望を伝えるといいです。その方がジュースやウーロン茶を頼むより、バー気分を楽しめるんじゃないかな。

金田:なるほど…。バーにはひとりで行かれます?

アル:ひとりでも行きますよ。

金田:大人だなー!

アル:大人なのかな?(笑)。マスターと話したり、他のお客さんと話したり。

金田:アルテイシアさんのコミュ力は化け物か!

アル:いや連邦軍のモビルスーツじゃないから(笑)
私も最初は緊張したけど、慣れですよ。バーはお酒が入ってるから話しやすいし、知り合いのいない場の方が他人の視線を気にせずにすむし、普段のキャラを意識せずにすむし、「失敗してもいいや」と開き直れるので、練習にはオススメです。居づらいと思ったら一杯で出てくればいいし。

とくに地元のバーはカップル成立率が高いんですよ。ご近所同士だと「今どこそこで飲んでるんだけど来ない?」と気軽に声をかけられるし「あそこの焼き鳥が美味しいよ」と誘いやすいので。

金田:そっかー!「あそこの焼き鳥が美味しいよ」「へー行ってみたいな」「じゃ一緒に行こうよ、いつにする?」の流れですね。

アル:そう!今は男女共に受け身でオクテが多いので、誘ったもの勝ちです。

金田:「女から誘われるのはイヤだ」っていう男なんて、どういう宗教の人?って感じだよね。

アル:そんな人はめったにいないと思いますよ。セックスの調査でも、83%の男性が「女性に主導権を握られると嬉しい」と答えているので。

金田:セックスでも「男がリードするものだ」と決めつけず、女からどんどん動けばいいよね…といってもAVみたいな技は繰り出さなくていいから。そんなのムリだから。

アル:男友達が自称テクニシャンの女性に、チンポをしごかれながらアナルを指でガンガン掘られたそうです。彼は痛かったけど言えなくて、「どう、イキそう?」と聞かれて、手に唾をペッと吐いて「イッた!」と偽装したらしい。「ほう、男もイクふりをするのか」と驚きでした。

金田:へー男も痛いって言えないものなんだ…勉強になります。
しかし、そもそも実在のアナルは繊細なんだから、そんなやり方しちゃダメでしょ。BLのやおい穴を過信しすぎですよ。あんな万能な穴はないからな。

アル:ビッシャビシャに潤って、つるりと入るなんてね。

金田:何がビッシャビシャに潤っているのかと言いたい。

アル:私もローションを使う描写とかある方が、好感を抱きます。

金田:私もローションとかちゃんと使ってて、かつコンドームが描いてあると、「やるじゃん」って思います。

アル:『オトコのカラダはキモチいい』でも話していたけど、金田さんは『やおい穴ないよ、あるのは現実のアナルだよ派』なんですよね。

金田:そうですね。だって現実のアナルについて知れば知るほど、魅力的じゃないですか?
アナルをほぐす表現とかも、やっぱり描かれてほしいなって思います。
ギャグだったらいいんだけど、シリアスな雰囲気のお話だったら、直腸洗浄したような時間もまったく感じられないのに、そのまま始まって終わってしまうと「うんこが…うんこが…」と気になってしまうんですよ。

アル:「うんこはどこに行った?」と気になりますよね。

金田:私もそこがちょっと気になるタイプ。そういうシーンが出てくると「あ、この先生の描くこの作品は、たまたまうんこのない星か」と。

アル:地球にそっくりのうんこのない星(笑)

金田:おそらくページ数の制限のせいもあって、BL作品は、うんこのない星である場合が多いですね。たまにうんこは出るけど処理してる星だと安心できる。「ここは地球か」って。

アル:「ここは地球か」って、猿の惑星みたいな(笑)

金田:猿の惑星は悲しい終わり方じゃないですか。そうじゃなくて安心感があるんですよ。「ここは地球か…ひさしぶりに降り立ったのか」と思うんです。

アル:なるほど、最後はやっぱりアナルの話に戻りましたが(笑)
「アナルに水晶玉を入れない人」や「アップリケ処女」等など、名言連発で本当に楽しかったです!本日はありがとうございました。

金田:こちらこそありがとうございました!アルテイシアさんの『オクテ女子のための恋愛基礎講座』で学んだ、鉄板のファッションである「カシュクールワンピース」を愛用していきます! 
まだまだ竪穴式住居を出てから日が浅い私ですので、「これを買え!」「これを着るときはこれを履け!」など、超わかりやすいファッション指南の本なども、ぜひ期待しています。

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『オクテ男子のための恋愛ゼミナール』
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