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あしがる 第七話「声が大きいヤツは密談に向いてない」
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あしがる 第七話「声が大きいヤツは密談に向いてない」

2017-01-27 13:41
    ひとけの無い深夜の長屋町。

    その通りを我が物顔で進む一団があった。
    桑名弥次兵衛以下、その手勢である。

    弥次兵衛の大きな声は夜の静けさによく響く。
    住人たちが固く戸を閉ざすのもむべなるかな、人は嵐を前にして過ぎ去るのを待つ他ない。

    しかし、その太い足がピタリと止まる。


    「……獣がきておるのう」


    野生的な嗅覚か、それとも歴戦により培われた勘か。
    弥次兵衛は背後から迫るプレッシャーを感じ取るや否や、肩に担ぎ上げていた二人の足軽を部下に預けた。

    そしてゆっくりと息を吐きながら黒塗の愛槍に手を伸ばす。


    「先に行けい。あれはお前らの手に余るう」


    部下たちは互いの顔を見合わせる。背後に伸びる自分たちが今しがた歩いてきたその道は、深い闇に閉ざされている。松明を掲げ目を凝らしても人影すら見当たらず、耳を澄ましても足音一つすらしない。


    その時、一迅の風が吹いた。
     
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