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“α-Synodos”  vol.288(2021/6/15)
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“α-Synodos”  vol.288(2021/6/15)

2021-06-15 16:41
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     “α-Synodos” 
    vol.288(2021/6/15)
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    〇はじめに

    いつもαシノドスをお読みいただきありがとうございます。編集長の芹沢一也です。最新号をお届けします。今号のラインナップをご案内します。

    1.井出草平「不登校、引きこもり、摂食障害――若者の困難とその支援」
    不登校やひきこもり、摂食障害に苦しむ若者をいかに支援すればよいのか? 井出さんは、精神疾患、パーソナリティ障害・知的障害、身体疾患、心理社会的環境、社会的・職業的機能という5つの軸から、まずは問題を整理することが重要だと説きます。たとえば、うつ病で、貧困な家庭にある不登校の子どもの場合、ただ学校に戻そうとしてもうまく行きません。うつ病に対して医学的なアプローチをしつつ、貧困には福祉的なアプローチをする、その上で学校に戻すための仕掛けを考える必要があります。つまり、多元的なアプローチが必要となります。では、それぞれのアプローチはどのようにあるべきなのか? 若者支援の現在がクリアに整理されています。

    2.橋本智弘「完全自動のラグジュアリーコミュニズム」
    イギリスで新たな左派言論を担うアーロン・バスターニの著書『ラグジュアリーコミュニズム』が翻訳されました。そこで訳者の橋本さんに解説をお寄せいただきました。テクノロジーの加速がいかなる未来を招来するかをめぐっては、悲観派と楽観派の両極端の言説がありますが、左派加速主義の潮流のうちにあるバスターニは、テクノロジーがもたらす未来に「共産主義」の実現を展望します。それは前世紀の遺物である専制的な官僚主義などではなく、すべての人々が贅沢を享受するラグジュアリーなコミュニズムです。はたしてバスターニの戦略は、資本主義に代わるシステムの構築とそれにふさわしい政治運動の手がかりとなるのか? とにかく面白い本ですので、橋本さんの解説をお読みになった後、ぜひ本書も手に取っていただければと思います。

    3.池田隼人「ソクラテスの「無知の知」 哲学の原典から考える「思考」の姿勢――高校倫理から学びなおす哲学的素養(5)」
    「人間はあることについて、知っているようで実は知っていない、自分が知らないことを知っていることが知恵なのだ」。有名なソクラテスの「無知の知」です。よく知られているようにソクラテスは、ソフィストと対決する中で、このような認識にいたりました。ソフィストといえば、わたしたちの周りにも、そこかしこに現代のソフィストたちがたくさんいます。それに対して、自らの無知、つまりは思索の眼差しを己のうちに向けたソクラテスの前には、実践的な善および生の正しさ、つまりは魂の幸福という問題が浮上しました。今回も池田さんが平易に解説しています。

    4.池田直樹「「文化戦争」状況に寄せて――アメリカの分極化の根底にあるもの」
    近年、アメリカ社会の分断が叫ばれています。伝統的な価値に支えられたアメリカ的生活様式を称揚と、人種的、文化的、性的に様々の集団の差異と多様性を称揚するアイデンティティ・ポリティクスとの対立です。しかし、じつは普通の中産階級のアメリカ人の大半は、こうした論争的なイシューに関して、どちらかと言えば中道的で穏健な見解をもっていると言われています。では、なぜこれほどまでに分断が過激化しているのでしょうか? 池田さんに、すでに20世紀後半の時点でアメリカ社会の分極化傾向をいち早く察知し、そうした状況を「文化戦争(culture wars)」という用語で捉えようとしたJ・D・ハンターの議論をご紹介いただきました。

    5.伊藤隆太「科学と理性に基づいたリベラリズムにむけて――進化的リベラリズム試論(3)」
    伊藤さんの短期連載、「進化的リベラリズム試論」3回目です。今回のテーマは進化学と人文社会科学の対立について、ご解説いただいています。進化学の大きな貢献は、美的感覚、恋愛感情、性差、戦争、ジェノサイドといったヒトの心的感覚や行動を、進化論や生物学の視点から科学的根拠を備えたかたちで説明してきたことです。しかしあくまで科学的な「何かがこうである(is)」という議論が、人文社会学の研究者によって、「こうであるべき(ought)」と論じているかのように受け止められるところに、議論のすれ違いや軋轢が発生することになります。事実は事実のレベルで議論しながら、その上で、何をすべきなのかを議論するという、進化学と人文社会学の関係性の健全な構築が望まれます。

    6.平井和也「ガザでのイスラエルとハマスの衝突」
    先月、5月に、パレスチナ自治区ガザでイスラエル国防軍(IDF)と武装組織ハマスが衝突し、世界の注目が集まりました。交戦が始まって11日後の5月21日に、エジプトの仲介によって、ガザ地区のハマスとイスラム聖戦との間で停戦が発効しました。今回はその間、海外メディアはこの出来事をどう報じたのかを、平井さんにまとめていただきました。イスラエルとパレスチナの危機の背景には、1948年のイスラエル建国と、1967年の六日戦争(イスラエルが当時のエルサレムのアラブ人支配地域を攻略した)にさかのぼる複雑な事情があります。報道を通じて、そうした歴史を背景に、現在、各アクターがどのような利害関心を持って動いているのかをご理解いただければと思います。

    次号は7月15日の配信です。お楽しみに!
     
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