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小飼弾の論弾 #209「大規模サイバー攻撃を受ける日本企業、混迷のアフガニスタン、もしかすると希望?熱平衡化現象の一般化問題」
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小飼弾の論弾 #209「大規模サイバー攻撃を受ける日本企業、混迷のアフガニスタン、もしかすると希望?熱平衡化現象の一般化問題」

2021-08-31 07:00

     「小飼弾の論弾」で進行を務める、編集者の山路達也です。
     無料公開部分の生配信およびアーカイブ公開はニコ生・ニコ動のほか、YouTube Liveでも行っておりますので、よろしければこちらもぜひチャンネル登録をお願いいたします!

     今回は、2021年08月24日(火)配信のテキストをお届けします。

     次回は、2021年09月07日(火)20:00の配信です。

     お楽しみに!

    新刊『小飼弾の超訳「お金」理論』

    「ブラック労働者」をやめましょう。「お金を増やさねばならない」思い込みを捨てましょう。働いたら負け。もう労働には価値はない。理想は、誰でも自由に生きて食べていける世の中。なのに、いつまでも「お金」に振り回されるのはなぜか―――。
    『小飼弾の超訳「お金」理論』では、世界を動かしているお金の仕組みと、お金との付き合い方をやさしく解き明かします。

    2021/08/24配信のハイライト

    • コロナ対策「いかに早く手を打つか」ファクターと「ふざけた」入管黒塗り文書
    • アフガニスタン米軍撤退の背景と「重要性の低下」
    • 横浜市長選の感想とヒューマノイドの実現可能性
    • 「疲れる」VRゴーグル、みずほトラブルと「アメリカが圧倒的に強い」システム作り
    • ニップンへのサイバー攻撃と「多重防御」
    • 熱平衡化についての知見と「未来は予測不可能」

    コロナ対策「いかに早く手を打つか」ファクターと「ふざけた」入管黒塗り文書

    山路:さて、また今日もさっそくなんですけど、コロナがひどいことになってるらしいじゃないですかって言うか。

    小飼:それはもう、もうどれくらいなんだ、1年半、2020年の頭から、中国で見つかったのはCOVID-19っていう名前からもわかるとおり、2019年の10月ですけれども、まあまだ2年経ってないんだよね。

    山路:記憶がどんどん曖昧になってくけどね。この1、2年ぐらいの。で、東京の感染者、今日で4000何人でしたっけ、ちょっと先週の同じ曜日よりも減ったんですよね。

    小飼:まぁでも、検査が少なすぎて、東京の場合も検査能力が5000から6000ぐらいで頭打ちだっていうのは見えちゃってますよね。

    山路:ずっとそこに張り付いてんのが気持ち悪いし。神奈川に抜かれてましたもんね。

    小飼:抜かれてる。明らかに抜かれてる。なんだけども、それでも少し下がったかもしれないっていうのは、いちおうオリンピックも終わって、オリンピックが終わったのとほぼ同時にお盆休みがあったじゃないですか。だから、それでまあ人が減ったっていうのはけっこう効果あるんじゃないかなと。

    山路:そのぶん帰省したりする人もいるんじゃねえかっていう(笑)。

    小飼:そう、その間に東京のデルタ株を全国に出荷してたわけですね。だから日本全体としては、ぜんぜんいいニュースじゃなくて、しかもちゃんとそうやって知らぬ間に、ウイルスと帰郷をしてた人たちは東京に戻ってっていう。

    山路:なんか培養を繰り返してるみたいな感じになってますけどね。

    小飼:しかも小中学校が夏休み終わりますね。少なくとも東京はあれか、8月いっぱいは夏休みなのかな。

    山路:だけど、パラ観戦させようとしてましたよね(笑)、小中学生に。

    小飼:ねえ。

    山路:いったい何をやりたいのか、もう完全に理解不能なんですけども。

    小飼:こう言っちゃなんだけども、まだオリンピックのほうを観戦させ、無観客にしよう、少なくとも首都圏は無観客にしようって言ってた時には、今ほど感染者いなかったですからね。それでも既に波に乗ってたっていうのは明らかでしたね。

    山路:これ、パラをやることでそのもちろん感染に仮に直接影響ないとしても、リソース食われるのがかなわんじゃないかって気がするんですけどもね。

    小飼:まあ後あれね、注意力がバラけるという。二正面作戦になっちゃうんですよね、東京都の立場から見ると。

    山路:なんつーか、終わりの見えん感じですけれども。

    小飼:まあでもオリンピックの種目にサーフィンってあったから、それで必要だったのかもしれないな。

    山路:お台場の話?

    小飼:オリンピックの種目でサーフィンあったじゃないですか。いや、お台場じゃなくてどこだったっけ? それは本物の波ですけど、だからなにが乗ってたんだろうね、感染者の波に。感染者の波サーフィンっていうのが種目にあったんじゃないの。

    山路:あ、なるほどね(笑)、失礼しました。マジレスをしてしまった。なんかいろいろワクチンの話、コメントでも出てたりしますけど、なんか予約取れた人もいて良かったですね。でも予約、まだ予約なんかいという気もしますけどね。本当に50パー2回打ったっていう話ですけど、ほんとなんですかね。

    小飼:いやまぁちょっと、にわかには信じがたいんだけれども。でもあれなんだよね、これが70ぐらいになるとかなりインパクトが出てくるんだよね。

    山路:70歳ぐらいの人?

    小飼:違う違う、70パーぐらいになると。

    山路:ああ、集団免疫の可能性が。

    小飼:そうそう。インドは今、デルタ株止まってるじゃないですか。で、なんで止まったかというのは恐ろしいことに、みんな感染したから(笑)。

    山路:これ、リンク出しますかね。

    小飼:何て言えばいいのかな、一番どぎついやり方で集団免疫を達成してしまったという。

    山路:公式の発表では40万人ぐらいでしたっけ、インドでコロナで亡くなった方は。

    小飼:オフィシャルに亡くなっているというのは。

    山路:だけど実際は10倍ぐらいいるんじゃないかと言われてて。もしもそれが本当だとしたら、400万から500万、日本だったら40万人ぐらい死ぬような感じだから、到底ちょっと、その賭けに出る気にはなれん倍率ですけどね。

    小飼:インドの場合、そうなるしかなかったというのか。あれだけ膨大な人口なので。だから打った数から行けば、インドのほうが多いんじゃないかな。

    山路:ワクチン接種率、10パーとかそんなもんじゃなかったですかね。

    小飼:そうです。そんなもんです。そんなものなんだけれども、もう人口が10倍ですから、日本の。

    山路:確かに絶対数としてはあれだけどな。

    「カーストの下位の人ってどうなったんだろう」(コメント)

    山路:この辺のなんかこう差別と格差とかもありそうな気がして怖いっすよね。

    小飼:まぁでもインドはなんだかんだ、よくやってるけれども、ベストですら十分でなかったという。そういう感じですかね。少なくともアメリカよりはずっと良くやってる(笑)。アメリカ、もう。

    山路:アメリカまた死者も増え始めたっていう話ですよね。そんなことあんのかいっていう、これ相当が、

    小飼:デルタが、うん。

    山路:もう、これから毎年、じゃもうワクチンを打ち続けるコースになるんすかね、私らは。

    小飼:どうなんでしょうね。

    山路:中国とかは比較的、まだそれでも抑えてる。

    小飼:うん。で、中国のやり方というのは、本当にできるならこれをやりたいという、まさに本当にお手本みたいなやり方で。一人そこで見つかったら、都市を丸ごと封鎖して、その都市の人全員ですよ、全員検査して、全員あぶり出した上で隔離してっていうやり方で。これはどんなワクチンよりも強いです、このやり方は。

    山路:報道で、そのシノバック、中国製のワクチンってその有効性がモデルナなんかに比べるとだいぶ低いという。

    小飼:そうなんですよ。ワクチンに頼らざるを得ないのであれば、これは残念だったねだったんだけど、確かに中国製のワクチン頼りだった諸外国はけっこう大変なことになってるんだけど、中国自体ワクチンに頼らなくてもいいじゃんと言う。

    山路:だけど、これ、仮にあまり効き目がなかったとして、それで封鎖してロックダウンをしてうまくいってるとするじゃないですか。他の国と行き来をもっと盛んにしようって、再開させようってなった時に、それってすごい困らないですかという。

    小飼:ワクチンパスポートみたいなことをやりたいって言った時、じゃあシノバックは打ったことになりますかって言った時に、なんか一波乱ありそうだよね。今回ワクチンパスポートみたいなものをやろうって言った時に、一つ問題になるのは、こんな何種類もいっぺんにワクチンが出てくるって言う事はあんまなくって(笑)。そもそも、もともと地味なものである上に、あんま儲けが出ない部分でもあるので。大抵、ある種のワクチンっていうのは一社独占的になるんだよね。しかたがなくっていう。ところが今回、何種類出てるんだ、mRNAだけでも、

    山路:2社あって。

    小飼:2社あって、アストラゼネカがあって、スプートニクがあって、知らなかったんだけど、スプートニクって、ロシア製のやつなんだけど、二度打つんだけど、一度目と二度目と成分が違うのね。

    山路:へええ。

    小飼:で、なんでそんなことを知ったかって言うと、スプートニクライトというのが出たらしくて、それは何かって言うと、なんか一度目のやつを増量したやつみたいで、一回でもジョンソンアンドジョンソンみたいにある程度効くと、だから一回打ちのやつもあるんですよね。

    山路:なんかネーミングがでもいろいろすごいよな(笑)、スプートニクライト。へええ。面白いっすね。あとワクチン絡みでもう一つ、このニュースなんですけど、アメリカのほうでワクチンを盗んでそれを販売してた薬剤師の男が懲役120年食らうかもよみたいな。

    小飼:何州だっけ?

    山路:何州だっけ。ちょっと州の名前、ぱっとわかんないんですけど。

    小飼:アメリカのニュースの場合は、ちょっと州を抑えておいてもらわないと。

    山路:ちょっとパッとここには出てないですね。これ、しかし、

    スタッフ:記事を確認したところ、アメリカ、シカゴの薬剤師が逮捕されましたと書いてあります。

    山路:シカゴ、イリノイ州か。

    小飼:イリノイか。

    山路:なるほどね。

    小飼:都会州だな。

    山路:それぐらい、なんかこう重い刑罰になる可能性があると。

    小飼:まぁでも、アメリカの司法がそうなってるからというので、単純に累積犯の場合は、懲役も累積されるケースなのかもしれないけども。

    山路:この人は本物のワクチン接種証明書盗んだらしいですけど、偽造のやつがすごい流通してるらしいですね。

    小飼:ああ、いっぱい出ましたねっていうのか、Craigslistに、

    山路:なんていうか、掲示板ですね。

    小飼:そうそうそう。

    山路:もうそこで買えるんだ(笑)。

    小飼:そうそうそう。

    山路:まぁそれが大多数ってわけでもないから、全体のとこにはそんなに影響はないのかもしれないですけども、でもアメリカの感染者増えてるとこ見るとシャレにならん感じがありますけども。

    小飼:再び全世界のトップですね、new casesで見ると。

    山路:ああ。

    小飼:でも凄いですよ、今日本4位。

    山路:感染者で見ると。

    小飼:昨日の段階で。

    山路:もうちょっと多いかもしれないですよね。他の国の検査の基準で言ったら。

    小飼:そうなんだよね。なんか検査数が2桁少ないんだよね。人口あたりにすると。

    山路:つくづく、本当によくわかんないですけど、1年半以上経って、何でこんなに検査のリソースがないんだろうっていうのは、本当に何かいろいろ説明されても納得がいかないんですけどね。

    小飼:お互いに足の引っ張り、足の引っ張り合いって言うのおかしいけれども、検査抑制したっていうのあれは本当に一体何なんだ! もうあれはもう、完全に悪手だよね。

    山路:データがそんなんではきちんと取れないみたいな話。

    小飼:だけれども、まだデータが揃ってないうちから、自主的ロックダウンをしたっていうのは本当によくって、たとえば、ここで手を打つと感染が止まるっていうのをどこで手を打つかって言ったら、一人のところで手を打つのと、1万人のところで手を打つっていうのは、だいたい同じくらいの手間暇なんですよ。なんだけども、それでだから変わる数っていうのは、ぜんぜん違うわけですよね。1のところで止めたとしたら、たとえば1万のところに止める前に、1のところで止めたら、1万人助かるわけでしょ。だから、早めに手を打つっていう、手を打つのがいかに早いのかっていうのが一番大きなファクターなんですよね。伝染病の場合。

    山路:コロナの場合、デルタ株以前と以後のあたりで、フェーズがめちゃめちゃ変わっちゃったような感じもあって、ちょっと対策しづらかったんかなとも。

    小飼:ただ、こう言うのもなんだけれども、全世界的に終わってないのだから、ちゃんと次に備えなければいけないっていうのは、どの国もそうなわけです。どの国も、今まで一年半の時間があったわけですね。その間、何をしてたかっていうことですよね。

    山路:ドイツなんか、ドイツでしたっけ、イギリスでしたっけ、イギリスだったか、ボランティアの打ち手を養成したみたいなのあったりますよね。

    小飼:そうそうそう。

    山路:そういう形でいろいろできることはあったはずなんだけれど。

    小飼:でも日本もvaccinationのスピードだけはまあ、でもなかなかのものと言っても、やっと4割か。

    山路:まぁあと、コロナに直接関係ないんですけど、このコロナ関連で良かったニュースとしては、モデルナがHIVワクチンの臨床試験を始めたそうですね。

    小飼:だから、ありとあらゆるワクチンを、けっこうお手軽、お手軽って言うのもなんですけれども、早く作れちゃうっていうのは画期的なとこですよね。

    山路:もうなんか臨床試験初めて、インフルエンザももう始めてたんだったかな、インフルエンザのmRNAワクチンですね。

    小飼:もうじつは本来のアプリケーションで。

    山路:これはすごいことになりそうなんで、言われてましたけど、本当に動き出すとなかなか感慨深い、1年半の時間をどう使ったかって言うのが、なんか、日本政府のやったことと(笑)。

    小飼:オリンピックやることにね。

    山路:何かリソース食われちゃった感じがあるよなぁ。

    小飼:食われちゃったんじゃなくて、食わしたんですよ、それは。

    山路:そうですね(笑)。

    小飼:それはもう人間が決めたことなので。

    山路:ただまぁほんと、HIVワクチンの話みたいに希望はありますよという。

    「公文書ないので将来検証できません」(コメント)

    山路:あ、公文書の話題出てきたところで、ついでにこれ行ってきましょうか。1万5000枚の話。これか。リンクがこれは。

    小飼:(コメントを見ながら)あります、今日、明るい話題あります。

    山路:ちょっと特殊かもしれないですけどね(笑)、明るいと言うには。
     で、入管の事件、これ、ひどくないですかと。

    小飼:黒塗りにするのであれば、こういうのがあるのであれば、全域公開っていうオプションはあるんだっけ? だから、そもそも黒塗りが許されるっていうところが、これ、黒くない部分ってあんの?

    山路:タイトルは黒くなかったそうですね。

    小飼:これを本当に、ちょっとふざけて、あまりにちょっとふざけてるので、こういう時に公務員を訴える法律があったと思うんだけど。

    山路:特別公務員陵虐なんたらみたいな。

    小飼:そうそうそう。それで訴えたいぐらいなんだけれども。

    山路:これ、どうなんですか、文書がないって嘘つかれるよりはマシって感じなんですかね。

    小飼:いや、マシではないです。ちゃんとこれ、確か手数料15万円だか取ってんだから。

    山路:マジでか(笑)。

    小飼:でもこれ、明らかにある意味きちっと塗りつぶしてないよね。だからこの部分はどうしても見せられないので仕方なく伏せますよっていうのが黒塗りの意味だから、いちいち内容を吟味しなければいけないけど、これどう見ても吟味できてないよね。

    山路:さらにそこで突っ込む、訴える余地があるかもしれない。

    小飼:そう、だから訴えられるんですよね、実は。だからこれは確か異議申し立てはできるはずです。

    山路:これ、本当ちょっと、真剣に展開を見守りたいと言うか。それによって何かできることがあったら、協力したいところですよね。

    小飼:世界的に、恥ですな、これは。

    山路:本当にアムネスティとから何か言われるのん違いますか。

    小飼:アムネスティというよりも、北朝鮮にすらツッコまれそうだよね。

    アフガニスタン米軍撤退の背景と「重要性の低下」

    山路:北朝鮮にか(笑)。本当に恥ずかしいなんか奴らだな、もうほんと上から下まで。
     じゃあ最近の話題で特にでかい、国際ニュースのほう、行っときましょうか。アフガニスタンすね。これは何か、

    小飼:大きいの来たというのか、なんと言えばいいのかな、でもやっぱりこうなったのではあるんだけど、それがよりによって8月15日というのが。

    山路:あーなるほどね。

    小飼:もちろんまだ、米軍も避難民の護衛のために、未だカブールに展開してはいるんですけど、大統領が逃げちゃった以上は。

    山路:これ、いろいろ言われてますけど、バイデンが撤退を判断したこと自体は何か、私が自分がバイデンだったらアフガニスタンから撤退しただろうなぁと思ったんですよ。

    小飼:もっと早く撤退するべきだったろうけれども。そもそも、こんなダラダラ続いた理由って言うのはなんだったんけと。本当に、アフガニスタンの場合は、本当に成り行きで行っただけなのか、でもあれかな、いちおう民主化をサポートするためという大義名分はあったのかな。

    山路:そもそもはまあビンラディンをかくまったっていうことからだったわけですよね。

    小飼:でもさらに遡れば、

    山路:アフガン戦争?

    小飼:そうそう。アフガン戦争があって、さらに遡れば、イギリスと帝政ロシアの地政学的な争い、いわゆるグレートゲームの舞台だったわけですよね。

    「代理戦争の場だった」(コメント)

    小飼:これは僕も、アフガニスタンのことというのは本当に自分でも驚くぐらい、申し訳ないぐらい知らないんですけれども。そもそも何で、ユーゴスラビアみたいにバラバラにならなかったんだろうっていうのは一つありますよね。

    山路:アフガニスタンとしてまとまってる。

    小飼:そう。だから、アフガニスタンっていう国も、イギリスのおかげで便宜上できたみたいな国なわけですよね。イギリスは、インドということで、今で言う、インドだけではなくて、パキスタンにバングラデシュをくわえたところというのが、まるっと植民地にしてたんですけども。そのすぐ北がアフガニスタンで、でも属国に従ってたんですね。属国にしたくて、だからそこにいる王族を、

    山路:傀儡政権にしようと思ってた。

    小飼:そうそうそう。でも、一方で、そこにイギリスに居座られると、ロシアとしては面白くないわけですね、位置から言っても。そこで、インド側から、今だとパキスタン側からですけども、と、北から、ロシア側からの圧力のかけあいっていうのがずっとあったんですけど、まだこの頃はアメリカはいなかったんです、蚊帳の外だったんです。
     アメリカが関わりだしたというのは、やっぱりソ連がアフガニスタンに軍隊を送って、オリンピック、アメリカがモスクワオリンピックをボイコットしてとかあの辺の時ですけれども、その時には、いっぱい武器を送り込んだわけですね、パキスタン経由で。その時は冷戦の一環だったんですよね。まあでもそれで、ソ連崩壊しました、ソ連軍も撤退しましたっていうふうに言ったら、まあ内戦状態になって。で、その時の内戦状態の時というのは、アメリカはほっぱらかして、ほぼ放置プレイだったんですよね。まあ徐々に、タリバンがアフガニスタンを、全部を支配するようになってきたんですけど、でも何でこの段階でユーゴスラビアみたいにならなかった? というのが、まず一つ疑問としてあるんですね。

    山路:そもそも国っていう意識がみんな希薄だったから、逆に。

    小飼:でも逆に、逆にその程度には国という意識はあったのかな。今の、タリバンの声明とかっていうのも、まずアフガニスタンという国に尽くすことだみたいな声明があって、あの辺一帯はアフガニスタンだという、一つの国だという認識はしてるんですよね。民族的にはけっこうユーゴスラビア並みに分かれてるんですね。一番多いのは、パシュトゥン人ってされる、パキスタン寄り、側に多くが住んでる人たちですけど、それでも4割ぐらいなんですよね。セルビアとクロアチアぐらいの別れ方をしてもおかしくないのに、丸々一国とか。

    山路:宗教が同じだったからですかね。

    小飼:イスラム教だから?

    山路:イスラム教のスンニ派でみたいな。

    小飼:いや、でも、だとしたら何でパキスタンと一緒にならないのっていう。

    山路:そうですね。

    小飼:そうですよ、民族的にもパシュトゥン人ってアフガニスタンだけではなくて、パキスタンのほうにもいて、でも結局ビンラディンも米軍に補足されて殺されたのはパキスタンですからね。アフガニスタンではないんです。本当に、全く意味がなかったんです。ここまで無意味に軍隊を貼っつけておいた例っていうのはないんじゃないか。

    山路:ベトナム以上の失敗みたいな。

    小飼:手を引きたがってたっていうのはもう確かなんですよね。でも、オバマの時には却って、

    山路:増派しましたよね。

    小飼:増派したんですね、民主化を手助けするって言う口実で。まあでもオバマの頃は、イラクから米軍のプレゼンスを減らしたくて、それで手いっぱいだったのかもしれないですけども。

    山路:もしもなんかアメリカうまくいってない例、やたら目に付くような、ベトナムそうですし。

    小飼:本当に、もうここまで飼い犬に手を噛まれまくっている、

    山路:イランもそうだし。

    小飼:大国ってないです。そう、そうです、お隣のイランとかっていうのはもうあれじゃないですか、アフガニスタンの前の最大の失敗例と言えば、もうイランだったわけですよね。

    山路:というか、成功したのは日本と。日本は一応成功。

    小飼:日本ぐらいじゃないかな。まあ限定的な成功って言うと、チリも入るのかな。左派政権が誕生したのをCIAがクーデターでひっくり返して。

    山路:何でこんなにアメリカって失敗するんすか。

    小飼:まあたいていの場合、大国が傀儡国家を作ると失敗はするんですけども、でも確かにアメリカの失敗しまくりというのは、イギリスのそれと比べても目立ちますよね。

    山路:イギリスはしっかり植民地を作ったじゃないすか。

    小飼:しっかりでなくて、しっかり植民地を植民地のままに留めておいたっていうのが正しい言い方だな。

    山路:インドだったりとかオーストラリアだったりとか。

    小飼:そうそう。あくまで植民地なわけですよね。

    山路:アメリカの関与の仕方はそうではなくって、

    小飼:もう少し、なんと言えばいいのかな、正義を押し付けようとしてますよ。

    山路:彼らが信じる正義を。

    小飼:そういうことです。だから、イギリス人よりはよっぽど説教臭い人たちではあります。

    山路:その地域の実情とかを無視して、自分たちのやり方を押し付けようとして。

    小飼:でも基本的に、やり方というのは同じで、その地域の偉いやつを見つけて、そいつに鼻薬を嗅がせて、傀儡にするっていう手口は同じなんです。手口はイギリスもアメリカもというよりも、世界の歴史を見ていると、大抵の大国が大抵の小国を傀儡国家にする過程っていうのはみんなそうなんですよね。だから、そこの支配階級を、あるいは半支配階級を、有力な半支配階級を、リソースを与えて、武器とか軍資金とかを与えて、革命を起こさせて。で、新しく支配者になったら、そのまま傀儡として置いとくと。いうのは同じなんですけど、それにしても、もうアメリカ、ここまで。

    山路:下手くそすぎますよね、何か。あと手を出すメリットの見極めが甘いというか、アフガニスタンってそんなに手を出して……。

    小飼:アフガニスタンは本当によくわからない。本当にアルカイダが居候してたからという、口実としては。

    山路:それこそ前のニコ生でも言ったけど、資源とかもぜんぜん美味しくないからっていう話は散々してたじゃないですか。

    小飼:アメリカの場合は、すでにお手付きのところばっかしだという。要するに、他の国が傀儡国家を運営してたところというのを引き取る形になったと言う。ベトナムとかもともとフランスでしょ。アフガニスタンも、もうこう言うのもなんですが、イギリスから引き取ったようなものですから、間接的な形で。

    山路:イランはちょっと違うかもしれないですけどね。

    小飼:いや、でもイランもそうなんですよ。

    山路:あ、そうなんですか。

    小飼:理由として、まあでもイランの場合は、要らんどころか石油がどっさり出るところなので。

    山路:本当に単純な利権でもあったし。

    小飼:イランの場合というのも、単なるもう傀儡国家ではなくて、かなり入れ込んでたんですよね。友好国として入れ込んだんですよね。どれだけ入れ込んでたかって言ったら、米軍以外にF-14を買ったのはイランだけです。まぁ日本はF-14のかわりにF-15を買いましたけども。でも、単なる傀儡国家ではそんな手に入らないものですね。
     だからどれくらい凄いことかって言ったら、台湾とか売ってもらえませんからね。

    山路:そうか、その辺りのがあるから、『エリア88』にもトムキャットが出てくるのか。

    小飼:そうなんですよ。それだけ入れ込んでた所に、革命を起こされたわけですよね。

    山路:しかし、逆にじゃあなんで日本だけうまくいったんすかねっていう。あまりにもそんな、特殊事例として取り上げても意味がないのかもしれないけど。

    小飼:僕の答えというのは、もうすでに日本は列強だった、列強でかつ国民国家だったんですよ。国民国家だった。

    山路:その時点でか、支配の以前に。

    小飼:アメリカの支配のやり方と言うのは、アメリカだけではないんですけど、特に目立つやり方というのは支配層にリソースをぼんと渡して、これで統治しなさいと。なんでひっくり返されるかって言うと、使い込んじゃうんですわな(笑)。うん。なので、別の言い方をすると、アメリカの失敗例っていうのは全部トリクルダウンに頼ろうとして、トリクルダウンしなかったからなんですよね。

    山路:今回はアフガン撤退失敗のやつなんかでも、アフガン軍が自分達では戦おうとしなかったみたいな事をウジウジ、バイデンが言い訳してましたけど。それなんかってのは結局、国民国家になる前に手出されちゃったってところもあんのかな。

    小飼:そうそうそう。

    山路:日本とかはそれ以前に国民国家になって、国としての意識もはっきりあったりしたから。

    小飼:そうなんですよ。アメリカがいようがいまいが、いい悪いは置いといても、また列強に戻ってたでしょう。
     だから日本はアメリカ抜きでもけっこう、列強に戻るだけのポテンシャルがあったんですね。なんでアメリカの支配が成功したかではなくって。
     アメリカの数少ない成功例ではないの、アメリカ抜きでけっこううまくやってたんですよ。ただ、日本がそうなった遠因はあれですからね、開国してくださいの、マシュー・ペリー提督のところまでありますからね。だからあれで開国してなかったら、他の国と、たとえばPhilippinesとかと同じような経緯になったかもしれないですけど。でも、それ以前から、けっこうな、江戸時代から割と列強ではあったんですよね。

    山路:これよくその発展途上国なんかの話で、中進国の罠みたいな話ってあるじゃないですか。

    小飼:そうだ、キューバも飼い犬に手を噛まれた例じゃないか、いくつあるんだよ。本当に石投げれば当たるって言う感じだよな。

    山路:これ、結局、早めに国民国家になれたかどうかみたいな違いだったりするんすかね、そうなると。

    小飼:けっこう大きいんじゃないかな。

    山路:その領域を一つの国として、そこの人がまとまった意識持ったところが、バスに乗れた国ってことになるのかなみたいな。

    小飼:でもそれ言うと、イランというのがけっこう興味深い国で。今でこそイランって呼んでますけれども、ペルシャですよ。だから、そうです、昔の大国があったところです。アレクサンドロスに蹂躙されるまでは、あの辺一の大国だったわけですよね。今でも大国ですよ。

    山路:そのなんか大国としての意識をまだ持ち続けてるところなのかな。

    小飼:というのとはやっぱちょっと違うんですよね。
     逆にあれかな、産油国になっちゃったから、そっちに行ってないのかな。でも、こう言うのもなんですけれども、産油国でかつ工業国っていうのは、少ないんですね。皮肉にもアメリカとロシアがそうです。産油国にして工業国。

    山路:ほんとだ(笑)。ほんとだ、改めて言われるとそうですね。

    小飼:で、イランとイラクはそのポテンシャルがあったのに、そうなり損ねちゃったんですよ、なり損ねて「いる」かな。

    山路:まだポテンシャル的にはあると。

    小飼:うん。だけれども、やっぱりアメリカが手なづけようとして、手を振り払われたわけですよね、イランも。

    山路:これ、今後アフガニスタンどうなっていくと思います?

    小飼:どうなっていくというよりも、逆に、何と言えばいいのかな、Great Gamesで、ロシアとイギリスで取り合いしてた頃っていうのは、アフガニスタンの地位って高かったんですよ。でも今は、主要産業何ですかつったら、ケシです。はい、ポピーです。

    山路:ケシって作るの簡単そうですよね。

    小飼:アヘンですっていう。っていうふうになっちゃったと思います。なんでだと思います? 明らかに重要性下がってるんです。

    山路:それはもう軍事的なことの、そこを侵攻する必要がなくなったから?

    小飼:地政学的な価値が相対的に下がってるんですよ。もしもっと高いのだとしたら、こういうのもなんですけれども、アメリカもソ連も、まだあった頃には、もっと真面目に統治しますよ。単に占領するんじゃなくて、統治しますよ。なんでだと思う?

     
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