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ネット選挙は日本のサイバーレッスン
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ネット選挙は日本のサイバーレッスン

2013-07-03 14:00

     週刊アスキー本誌では、角川アスキー総合研究所・遠藤諭による『神は雲の中にあられる』が好評連載中です。この連載の中で、とくに週アスPLUSの読者の皆様にご覧いただきたい記事を不定期に転載いたします。 ネット選挙は日本のサイバーレッスン

     グーグルの創業者たちはリンクを“投票”と考えた。フェイスブックの“いいね!”も投票のようなものだ。ネットと選挙の向こうに何がある?

    ネット選挙は日本のサイバーレッスン

    '08年大統領選のMy.BarackObama.comは、ネット選挙を語るうえで記念すべきサイトだ。ご覧のとおりローカルな応援組織を作るためのツールまで提供している。グーグルによれば、オバマは、この選挙で1800本の動画をYouTubeにアップロード、運動期間の最終3日間には52本の番組がアップロードされたという。ネットは、まだ選挙の一部なのだとは思うが、'12年の選挙でも、フェイスブックの“いいね!”数、ツイッターのフォロワー数、YouTubeの“Like”数のいずれもで、オバマがロムニーを圧倒したと伝えられる。

     選挙の七つ道具というのがあるそうな。選挙管理委員会から交付される、選挙事務所標札、拡声器表示板、自動車・船舶表示板、街頭演説用標記旗、選挙運動員用腕章、個人演説会用立札、乗車・乗船用腕章だそうで、七つ道具というよりそれに貼るステッカーみたいな感じだ。ネット選挙になったということは、選挙サイトに貼るベリサインのサーバー証明書なんかが、八つ目の道具になるんでしょうか?

     およそ、選挙とサイバーというのは縁がなさそうな気もするが、米国の大統領選挙に関しては、戦後すぐからコンピューターにまつわるエピソードにいろどられている。1952年の大統領選では、最初期の商用コンピューターであるUNIVAC Iが、CBSテレビの選挙番組に登場した。投票直後、UNIVAC Iは、スタジオにいた専門家たちとはまったく異なる予想結果を出す。あまりに外れた数値のためテレビ局はそれを修正して伝えたが、開票が進むにつれてUNIVAC Iの予想どおりのアイゼンハワー候補の大勝利となったのだ(注1)。

     コンピューターの利用目的のひとつは、国勢調査やオペレーションズリサーチなど統計的な部分だったので、要するに「AKB総選挙の予想でビッグデータが活用された」なんて話の60年も前から、こんなことが行なわれていたわけだ。

     ネットと選挙の関係といえば、'00年の大統領選から大いに注目されるようになるが、'08年のオバマ候補が、ネット活用のスタイルを作り上げた。オバマは、数クリックで募金できる選挙サイトや大量の動画メッセージ、ソーシャルメディアをフル活用して選挙を戦ったが、そのメディア戦略の立役者とされるのが、クリス・ヒューズという人物だ。彼は、フェイスブックの4人の創業者のうちのひとりで、'07年に、すでに注目を集めていた同社を去ってオバマの応援に身を投じた。米国のネット選挙は、超一流だということだ。

     クリス・ヒューズは、オバマの選挙のあとも、NPOと慈善団体のためのソーシャルメディアである“JUMO”を立ち上げるなど(グーグルが買収)、社会システムとネットのかかわりに関心が高いと言われる('12年に同姓婚したと発表してニュースにもなった)。

     世界のネット人口は、国連ITUの昨年10月の発表では23億人だそうだ。同じ10月には、フェイスブックのCEOザッカーバーグが、同サービスのリアルユーザーが10億人に達したと言った。ネットは、もはや“バーチャル”という言葉が似合わないということだ。たったいま、オバマ大統領は、中国からだとするサイバー攻撃に対処することが最大の課題だとしている。NHKのニュースがあまりにサラリと伝えるので現実味がないのだ。ネットと現実のバランスが変化しかけていることを認識するのにネット選挙がよい機会になるといいと思う。それよりも選挙というものが、現実社会における壮大な“ゲーミフィケーション”(ネット業界で注目されるゲームの活用技術)みたいに見えてしまうのは私だけか?

    ●週アスPLUS転載時の追記
     角川アスキー総合研究所では、ネット選挙に関して「立候補予定者・政党のネット活用状況ランキングを発表」しています。また、参議院選挙後には、ネット選挙の状況と選挙結果に関する分析を行ない発表する予定です。以下、関連リンクをご覧ください。
    http://weekly.ascii.jp/elem/000/000/154/154669/
    http://ir.kadokawa.co.jp/topics/20130628_nckas.pdf

    注1)『計算機がコンピュータと呼ばれた時代』(C&C振興財団編、アスキー刊)参照

    【筆者近況】
    遠藤諭(えんどう さとし)
    株式会社角川アスキー総合研究所 取締役主席研究員。元『月刊アスキー』編集長。元“東京おとなクラブ”主宰。コミケから出版社取締役まで経験。現在は、ネット時代のライフスタイルに関しての分析・コンサルティングを企業に提供し、高い評価を得ているほか、デジタルやメディアに関するトレンド解説や執筆・講演などで活動。関連する委員会やイベント等での委員・審査員なども務める。著書に『ソーシャルネイティブの時代』(アスキー新書)など多数。『週刊アスキー』巻末で“神は雲の中にあられる”を連載中。
    ■関連サイト
    ・Twitter:@hortense667
    ・Facebook:遠藤諭

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