株式会社グラニ 代表取締役 エグゼクティブプロデューサー
谷 直史
'77年生まれ。愛知工業大学 工学部 建築工学科卒業後、29歳まで建築業界にて設計士を務める。オンライゲームを深くプレイしていくうちに、自分も運営する側に回りたい、自分ならもっとおもしろいゲームを創れる!という思いから、30歳で上京。'11年に株式会社GMS(現株式会社gloops)に入社し、プロジェクトマネージャー&ディレクターを務める。'12年、同社を退社し、株式会社グラニを設立。『神獄のヴァルハラゲート』は累計登録者数180万人(2014年7月現在)を超え、"GREE Platform Award 2013"にて、2度目の総合大賞も受賞している。
速水:『神獄のヴァルハラゲート』のユーザー数は、いまどのくらいいるんですか?
谷:180万人(2014年7月現在)くらいです。
速水:これがグラニさんにとって最初の作品になるわけですか。やはり時間も労力もお金もかかっているんでしょうね。
谷:いえ、それほどかけてないですね。ブラウザーゲームってそんなにコストがかからないんです。
速水:起業は2012年ですね。グラニを設立され、『ヴァルハラゲート』を翌年頭にリリースされて。何人くらいのエンジニアでつくられたんですか。
谷:最初はエンジニアが2人か3人でのスタートでした。途中から増えていって、リリース時には関連している人がたしか全部で15人いた気がします。
速水:だけど、会社を起ち上げて、最初のタイトルでいきなりドーンとヒットしたわけで。これは、かなりレアなケースなのでは?
谷:レアだとは思いますね。でも僕が、こういうふうにつくって出せば、これだけの売り上げはいくという感覚がもうあったので。
速水:前職や前々職の経験や手応えなどを生かして。
谷:そうですね。
大学入学時はなんの目的も目標ももっていなかった
速水:ゲーム関係以外の仕事をされていたこともあるとか。
谷:はい。29歳までは、建築業界にいまして。大手の建築系企業で、建具、ドアやシャッターなどの施工図といわれる図面を設計したりしていました。大学も建築学科を出ているんですが、うちの父親が建築系の人だったので、漠然とそっちに行った感じです(笑)。自分は絶対にこれがやりたい、これになりたいという目標がなかったので、適当に大学を卒業して適当に就職して、大好きなゲームをずっとやって生きていければいいかなくらいの気持ちでした。なので大学の講義は全然おもしろくなかったですね。
速水:建築の講義が?
谷:はい。なんの目的も目標もなかったので。そんななか、いわゆるネットワークビジネスという存在を知り、これはすごいチャンスだと思い、本気でやろうと。結果的に約2年間休学しましたね。上手く流通をつくると永続的に収入が得られるというのが売り文句のビジネスですが、やはり難しくて。このときにお金を稼ぐことの難しさ、流通の仕組みを知りましたね。あとは携帯電話の併売店みたいな仕事やパチプロみたいなこともしました(笑)。
速水:だけど2年間も休学して、そういう仕事を本気でやるというのも、思いきりましたね。
谷:ハハハ。でもうちの父親が寛大で、やりたいなら思いっきりやってみろというスタンスでしたので。結果的には大見得切って休学したもののうまくいかなかったので、復学して。
速水:じゃ、その携帯電話ビジネスかネットワークビジネスが成功していたらいまはなかった。
谷:かもしれないですね(笑)
次は世界でも大ヒットするゲームをつくりたい
谷:それで次の目標としては一発屋じゃなくてちゃんと2本、3本当てれるぞというのを証明することと、あとはチームですね。自分といっしょに人生をかけていいものをつくっていこうという強固なメンバーを集めていこうと。それで2本目も『大戦乱!!三国志バトル』という大ヒットコンテンツを出せて、順調は順調だったんですけど、問題があって。
速水:なんですか?
谷:自分のチームをつくるというほうがうまくいかなくなって。がんばって育てた人材は育つとほかのチームに異動になったり、また一から育ててくれと新入社員が入る。まあ、ここまでは組織なので当たり前なんですけど、育てた人材が競合他社に転職したりもして、なんだか僕の労力が他社をよくする感じになっちゃって。
速水:なるほど。そういうこともあるんですね。
谷:それと僕が当初味わった、結果を出しても評価されないという理由で辞めていく社員も多かった。この評価制度を変えようと、進退をかけてがんばってみたのに見直してはもらえなくて。そうなるとそこに所属していても、いいチームをつくるという目標は達成できないので、辞めることにしました。
速水:そうでしたか。
谷:やっぱりいっしょにつくっているメンバーが同じ方向を向き、同じレベルで話ができて刺激しあって仕事ができるということが、いいサービスを生むことにつながる。そういう時間が積み重なっていけば、振り返ったとき、いい人生だったと思えるんじゃないか。この考えを実践するために自分で会社をつくるという結論に至った感じです。
速水:自分のチームをつくりたくて、というのはおもしろい話ですね。ちなみに、世界にも興味は。
谷:ありますよ、もちろん。
速水:システムが世界に受け入れられたら一気に大きいマーケットになる可能性がありますよね。
谷:そうですね。まずは国内で僕のゲームを知らない人はいないというくらい知名度を上げていきたいですが、同時に海外も視野に入れています。
速水:最後に告知などがあれば。
谷:『ヴァルハラゲート』のおかげで、優秀な人材、資本、ノウハウが揃ってきました。さらに優秀な人材を増やして、国民的大ヒット、世界でも大ヒットするゲームをつくりたい。いまようやく仕込み始めたところです。
速水:それが、いよいよ谷さんの100%をつぎこむものに。
谷:そうかもですね。本気で超ヒットを狙います!
今回の聞き手
速水健朗(はやみずけんろう)
'73年11月9日生まれ、石川県出身。編集者・ライター。著書に『ラーメンと愛国』(講談社刊)、『自分探しが止まらない』(ソフトバンク刊)ほか。
http://www.hayamiz.jp/
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