週刊アスキー1/20号 No1011(1月5日発売)掲載の特集『Internet of Things(IoT)は本当に宝の山なのか!?』は、2015年最注目のビッグキーワード“IoT”を解説する記事。現在、ラスベガスで行なわれている“CES2015”でも続々と登場しているIoTの製品。その言葉の意味だけではなく、何がすごいのか、どんなことができるのか、IoTのつくる未来までを紹介している。 約365兆円になるIoT市場の本質

 ただ言葉の意味だけではなく2020年には約365兆円市場になるとも言われている“IoT市場”の本質は何なのかを、ジャーナリストの西田宗千佳氏に『途方もない数のセンサー、約365兆円になるIoT市場の本質』という題で寄稿いただいた。

約365兆円になるIoT市場の本質

↑IDC Japan調べでは、IoTは2020年に約3兆400億ドル、300億個機器の巨大市場になると言われている。

■どこまでがIoTかで市場規模が決まる
 多くの企業がIoTに期待を抱くのは、その市場規模が非常に大きいと予測されているからだ。2020年には約365兆円、デバイス数で300億個もの巨大さになる。なぜ、ここまで大きいのか。それはIoTの定義が曖昧で、あらゆるものをこの市場の中に組み込んでしまっているからだ。小さな機器がネットにつながったものをIoTと定義するのであれば、エアコンからコーヒーメーカー、温度計やカギに至るまでがIoTになる。

 ここではある程度きちんとした枠を考えてから可能性を想定してみたい。筆者が考えるIoTの定義は、「人の操作が必須でなく、動き続ける」、「センサーを活用しており、他の機器やサービスにその情報が届いて活用される」ということだ。

約365兆円になるIoT市場の本質

↑2014年1月の“CES2014”でインテルが公開した、IoTのスマートコーヒーカップ。コーヒーの温度をネットへ送信。

 IoTが脚光を浴びる理由は、我々がスマホを使い始めたことと無関係ではない。スマホでどこでも情報を得られるようになったということは、色々な場所の情報を得たいとなる。これから天気がどうなるのか、店のどの席が空いているのか、家でペットがどう過ごしているのか。どれも、情報を取得するセンサーが、ネットを介してスマホとつながる必要がある。“どこでも情報が得られる”ようになった結果、“どこでもどんな情報でも得たい”という方向に人の欲求が拡大していく。ほんの10年前まで、我々は通販の荷物が今どこにあり、いつ家に届くかを確かめることすら難しかった。だが今や「どこにいても自分の荷物のありかがわかる」ようになった。だからこそ「世界中にセンサーがばらまかれる」状況が必要になってきた。これこそが、IoTの本質であり、市場規模が大きくなる理由だ。

■網の目状になってエリア全体をカバー
 IoT機器の数が劇的に増えると予想されるもうひとつの要因は、「世界中にセンサーをばらまく」ためだ。それにはインターネットと補完しあうネットワーク構造が必要である。IoT機器にWiFiやLTEのモジュールを搭載すれば、直接インターネットへアクセスはできる。だが、その数が膨大なものになると、ネットワークは破綻する。街角で交通状況を確実に把握したい場合、数十メートルごとにセンサーが必要になる。仮に5平方キロの街に10メートル間隔でセンサーを置くとすると、25万個のセンサーが必要だ。

 そこで機器どうしが通信し合い、網の目(メッシュ)状のネットワークを構成し、起点の機器がまとめて通信をする形態が考えられている。「数百メートル先の道路で突如起きた事故渋滞を、目視できない状況でもリアルタイムで把握」することが可能になってくる。こうした機器は、インテルやグーグルなどはもちろん、日本国内でも村田製作所などが研究を進めている。

約365兆円になるIoT市場の本質

↑村田製作所が開発中のメッシュネットワーク型デバイスは手のひらサイズの無線機器。相互に通信し、広大なエリアをカバーする。

 街全体に張り巡らされたIoTネットワークをスマホや自動車、家庭から利用するようになるとすれば、必要とされる機器の数は“数億個”単位ですら生ぬるい。そうした理想的なIoTの姿が実現するには、10年単位での時間を必要とするため、まだまだ夢物語のレベルである。しかし、そうした世界の可能性を信じる人々が増えてきたからこそ、IoTの市場規模はこれほどまでに大きい、と考えられているのだ。

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