天皇陛下の「お気持ち」表明を受けて(3) そもそも天皇とは何なのか? 祈りを捧げる天皇
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天皇陛下の「お気持ち」表明を受けて(3) そもそも天皇とは何なのか? 祈りを捧げる天皇

2016-08-13 21:16
    < 目 次 >
    (1) 天皇陛下から国民への御相談にどう答えるか?
    (2) そもそも天皇とは何なのか? 日本の権威を担う天皇
    (3) そもそも天皇とは何なのか? 祈りを捧げる天皇 ←いまココ
    (4) かつては戦争も引き起こした天皇の譲位
    (5)’ 嫡出子継承を守る英国、男系継承を守る日本 [9/10改訂]
    (了) 伊藤博文たちが考えた天皇の譲位問題と、最後に私見
    ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

    天皇が捧げる祈り

    天皇には、権威の担い手だけでなく、祈りを捧げるという重要な役目があります。
    宮内庁のホームページ によると、天皇は次のような宮中祭祀を行っています。

    1月 1日
     四方拝 早朝に神嘉殿南庭で、天皇が伊勢神宮、山陵、四方の神々を遥拝し、
         年の災いを祓い、豊作を願う年中最初の儀式
     歳旦祭 早朝に宮中三殿(賢所、皇霊殿、神殿)で行われる年始の祭典
         皇室ならびに国民の繁栄と農作物の豊作を皇祖・天神地祇に祈願される 小祭※
    1月 3日
     元始祭(げんしさい) 年始にあたり、三殿で、天皇が皇位の大本と由来を祝し、
               国家国民の繁栄を祈願される 大祭※
    1月 4日
     奏事始(そうじはじめ) 年始にあたり、掌典長が伊勢神宮と宮中祭祀のことを
                天皇に申し上げる行事
    1月 7日
     昭和天皇祭 昭和天皇が崩御された日に皇霊殿と陵所で行われる 大祭※
    1月30日
     孝明天皇例祭 孝明天皇が崩御された日に皇霊殿と陵所で行われる 小祭※
    2月17日
     祈年祭(きねんさい) 三殿で行われる五穀豊穣祈願の祭典 小祭※
    春分の日
     春季皇霊祭(しゅんきこうれいさい) 皇霊殿で行われる先祖祭 大祭※
     春季神殿祭(しゅんきしんでんさい) 神殿で行われる神恩感謝の祭典 大祭※
    4月 3日
     神武天皇祭 神武天皇が崩御された日に皇霊殿と陵所で行われる 大祭※
     皇霊殿御神楽 神武天皇祭の夜、特にお神楽を奉奏して神霊を慰める祭典
    6月16日
     香淳皇后例祭 香淳皇后が崩御された日に皇霊殿と陵所で行われる 小祭※
    6月30日
     節折(よおり) 天皇のために行われるお祓いの行事
     大祓(おおはらい) 神嘉殿の前で、皇族をはじめ国民のために行われるお祓いの行事
    7月30日
     明治天皇例祭 明治天皇が崩御された日に皇霊殿と陵所で行われる 小祭※
    秋分の日
     秋季皇霊祭(しゅうきこうれいさい) 皇霊殿で行われる先祖祭 大祭※
     秋季神殿祭(しゅうきしんでんさい) 神殿で行われる神恩感謝の祭典 大祭※
    10月17日
     神嘗祭(かんなめさい) 賢所に新穀をお供えになる神恩感謝の祭典
                この朝、天皇は神嘉殿で伊勢神宮を遥拝される 大祭※
    11月23日
     新嘗祭(にいなめさい) 天皇陛下が、神嘉殿で新穀を皇祖はじめ神々にお供えになって、
                神恩を感謝された後、陛下自らもお召し上がりになる祭典。
                宮中恒例祭典の中の最も重要なもの。
                天皇陛下自らご栽培になった新穀もお供えになる。 大祭※
    12月中旬
     賢所御神楽(かしこどころみかぐら) 夕刻から賢所でお神楽を奉奏して
                      神霊を慰める祭典 小祭※
    12月23日
     天長祭(てんちょうさい) 天皇のお誕生日を祝して三殿で行われる祭典 小祭※
    12月25日
     大正天皇例祭 大正天皇が崩御された日に皇霊殿と陵所で行われる 小祭※
    12月31日
     節折(よおり) 天皇のために行われるお祓いの行事
     大祓(おおはらい) 神嘉殿の前で、皇族をはじめ国民のために行われるお祓いの行事

    毎月1、11、21日
     旬祭(しゅんさい) 掌典長が祭典を行い、原則として1日には天皇陛下がご拝礼される
    毎日
     日供の儀(にっくにのぎ) 毎朝、清酒、赤飯などを供える
     毎朝御代拝 当直侍従が、賢所、皇霊殿、神殿を天皇に代わって拝礼する

    ※大祭 天皇陛下ご自身で祭典を行われ,御告文を奏上される
    ※小祭 掌典長が祭典を行い、天皇陛下がご拝礼される

    この他、1月17日には阪神淡路大震災発生日、6月23日には沖縄県慰霊の日、8月6日は広島原爆の日、8月9日は長崎原爆の日に当たって捧げられる黙祷、3月11日の東日本大震災追悼式、8月15日の全国戦没者追悼式のおことば等も、天皇陛下による祈りです。

    宮中祭祀の中の最も重要な新嘗祭

    さて、天皇にとって、これらの祈りの中で最も重要なのは11月23日の新嘗祭です。

    新嘗祭とは、飛鳥時代の皇極天皇の御代(西暦 642年-645年)に始められた祭儀で、神様の恵みによって初穂(新穀)を得たことを感謝する収穫祭にあたります。天照大御神はじめとするすべての神々へ、天皇がその年に採れた五穀(稲・麦・粟・稗・豆)の初穂をお供えして、天皇も自ら初穂を食して、その年の収穫に感謝する祭りです。

    人類は食物を食べなければ生きていけないため、もし飢饉にでもなったら、多くの民が飢えに苦しみます。だからこそ、1月1日の四方拝、歳旦祭でその年の豊作を祈り、11月23日に新嘗祭でその年の収穫を祝う、五穀豊穣を祈願することが、天皇にとって最も重要な役目となっているわけです。

    中国でも、少なくとも清王朝までは、皇帝にとって五穀豊穣の祈願は重要なことでした。

    中国皇帝には、社稷(しゃしょく)を祀るという役目がありました。
    社稷とは、土地神を祭る祭壇である「社」と穀物の神を祭る祭壇の「稷」の総称であり、天壇・地壇や宗廟などとともに、中国の国家祭祀の中枢でした。社稷の歴史は古く、周王朝(紀元前1046年頃-紀元前256年)にまで遡ります。

    古代中国では、土地とそこから収穫される作物が国家の基礎であると考えられており、村ごとに土地の神と五穀の神を祀っていました。やがて王朝が発生するようになると、天下を治める君主が国家の祭祀を行うようになり、社稷を祀ることが皇帝の役目となったわけです。

    世界は祈りに溢れている

    唐突かもしれませんが、宗教に触れる際には大事なことなので先に言っておきます。私は無宗教(Irreligion)ですが、無神論(Atheism)ではありません(注2)

    そんな立場の私が言うのも何ですけど、非自然科学的なものの地位が低い日本においては、
    ”祈り”がかなり軽視されているように思います。

    しかし、世界は祈りに溢れています。

    例えば、カトリックのローマ教皇は1年間に次のような典礼を行っています(ローマ教皇フランシスコ2015年ミサ・その他典礼祭儀 より)。

    1月 1日 神の母聖マリア祭日ミサ
    1月 6日 主の公現祭日ミサ
    1月11日 主の洗礼祝日ミサと乳児の洗礼式
    1月25日 キリスト教一致祈祷週間閉幕の晩の祈り
    2月 2日 世界奉献生活の日ミサ(主の奉献)
    2月 8日 ピエトララータ小教区の大天使聖ミカエル教会へ公式訪問ミサ
    2月14日 新枢機卿親任式
    2月15日 年間第6主日新枢機卿と共同司式ミサ
    2月18日 灰の式の祭儀
    3月 7日 オグニッサンティ小教区公式訪問ミサ
    3月 8日 小教区公式訪問(神の母聖マリア教会)ミサ
    3月13日 ゆるしの秘跡
    3月29日 枝の主日ミサとお告げの祈り
    4月 2日 聖香油ミサ
    4月 2日 主の晩さんの夕べのミサ
    4月 3日 主の受難の祭儀
    4月 3日 聖金曜日・十字架の道行き
    4月 4日 復活の聖なる徹夜祭ミサ
    4月 5日 復活の主日ミサ
    4月12日 アルメニア典礼によるミサ
    4月26日 復活節第4主日ミサと司祭叙階式
    5月 3日 平和の元后聖マリア教会(オスティア小教区)公式訪問ミサ
    5月12日 国際カリタス総会開会ミサ
    5月17日 列聖ミサとアレルヤの祈り
    5月24日 聖霊降臨の主日ミサ
    6月 4日 キリストの聖体祭日ミサ
    6月12日 黙想指導司祭たちとのミサ
    6月29日 聖ペトロ 聖パウロ使徒祭日ミサと新主都大司教へのパリウム授与式)
    9月 1日 世界環境保護の祈願日ことばの典礼
    10月 3日 第14回通常シノドス開会前晩の祈り
    10月 4日 第14回通常シノドス開会ミサ
    10月18日 年間第29主日ミサと列聖式
    10月25日 第14回通常シノドス閉会ミサ
    11月 1日 諸聖人(祭日)ミサ
    11月 3日 直近1年間に帰天した枢機卿・司教の追悼ミサ
    11月 9日 司教叙階ミサ
    12月 8日 いつくしみの特別聖年開年ミサと聖なる扉開扉
    12月 8日 無原罪の聖マリアへの表敬
    12月12日 グアダルペの聖母記念日ミサ(ラテンアメリカのためのミサ)
    12月13日 待降節第3主日ミサと聖なる扉開扉(聖ヨハネ・ラテラン大聖堂)
    12月18日 カリタス・ホステルの聖なるドアの開扉とミサ
    12月24日 主の降誕(祭日)夜半のミサ
    12月27日 聖家族祝日ミサ
    12月31日 神の母聖マリア前晩の祈りとテ・デウム

    記事の分量を考慮してカトリックだけを挙げていますが、プロテスタントにもキリストやキリスト教での出来事にちなんだミサがあります。また、カトリックもプロテスタントも、キリストが復活したのが日曜日であったことから、日曜礼拝の習慣を持っています。

    一方、イスラム教では、毎日5回(夜明け、夜明け以降、お昼、日没から日がなくなるまで、夜)、メッカに向かって祈りを捧げるサラートを行うのが決まりになっています。イスラム教では、ムハンマドがメッカに無血入城したのが金曜日であったため、金曜日は1日5回のサラートのうちの1回はモスクで行うことが推奨されています(金曜礼拝)。

    仏教では、一日は朝のお勤め(寺院であれば住職が仏壇の前で読経する)から始まります。また神社でも、一日の始まりは、朝拝(本殿の戸を開き、神前を整えて、お供えをし、祝詞を上げる)からです。

    世界には、キリスト教徒が22.5億人、イスラム教徒が15億人、ヒンドゥー教徒が9億人、仏教徒が3.8億人いると言われています(百科事典「ブリタニカ」年鑑2009年版より)。宗教によって祈りの対象も異なりますし、その祈りの内容も異なってきますが、これだけの規模の人々が、祈りに重きを置く生き方をしていることは知っておいた方がいいでしょう。

    天皇の祈りは不要なものなのか?

    天皇に関わる言論も自由な日本では、「宮中祭祀など止めてしまえばいい」という意見も多く聞かれます。しかし、世界は、宗教や哲学など人文科学的なものの比重も大きく、自然科学的ではないから無くして良いというのは短絡に過ぎます。

    日本で聞かれた人はほとんど居ないと思いますが、キリスト教の強い国では、次のような有名なアンケートがあります。

    ダーウィンの進化論を支持しますか?創造論(注1)を支持しますか?

    VisionCritical社が、2009年7月1日から同9日に行ったアンケート、英国で2,011人、カナダで1,009人、米国で1,002人の成人に質問した結果は、

         進化論支持  創造論支持  確信がない
    英国    68%     16%     15%
    カナダ   61%     24%     15%
    米国    35%     47%     18%

    これはアメリカ人が無学だからこうなっている訳ではありません。

    創造論支持派には、医者もいれば、大学教授もいますし、創造博物館を建ててしまうほどの資金力もあります。だいたい米国はGDP世界第一位の経済大国で、自然科学・宇宙・ITとあらゆる分野で世界を牽引する科学立国である訳で。にもかかわらず、創造論支持が進化論支持を上回るぐらい、信仰の比重が大きいわけです。

    「宮中祭祀など止めてしまえばいい」という人には、ぜひ、金曜日のモスクや日曜日の教会で、「お前たちが信じる宗教なんて、ぜーーーんぶ無意味だ!」と叫んで袋叩きにされていただきたいところです。もっとも、モスクや教会に通う信仰心の篤い方々の場合は、袋叩きにするよりは、神を理解できないことを哀れんでくれそうですが。

    (つづく)
    ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
    (注1)創造論とは、旧約聖書『創世記』の冒頭にある神による天地創造を信じる立場です。
    1日目 暗闇がある中、神は光を作り、昼と夜が出来た
    2日目 神は空(天)をつくった
    3日目 神は大地を作り、海が生まれ、地に植物をはえさせた
    4日目 神は太陽と月と星をつくった
    5日目 神は魚と鳥をつくった
    6日目 神は獣と家畜をつくり、神に似せた人をつくった
    7日目 神は休んだ

    創造論では、人類も恐竜も神が創造して同時代を生きていたが、恐竜は先に絶滅して人類は生き残った、という考え方をします。


    (注2)私程度の科学知識では、神が居た方が世界を合理的に説明できるため、神は居るけど特定の宗教は支持しないという無宗教の立場を採っています。

    例えば、地球で最初の生命が誕生する瞬間は、神が居た方が私には理解し易くなります。

    地球由来にしろ地球外由来にしろ、炭素・窒素・水素などのありふれた原子が結びついて簡単な分子になり、簡単な分子から高分子が合成されてアミノ酸になり、さらにアミノ酸からタンパク質になる。ここまで、有機化合物の化学反応だから解ります。

    問題はその先、「じゃあ、アミノ酸を撹拌してたら生物になるのか?」という話です。まだ化学実験室で、そのように作られた人工生命体の話は聞きません。

    人工生命体が実験室で生まれる日がいずれ来るのかもしれません。けれども、「タンパク質の器ができた時に、神が生命を吹き込んだ」と説明された方が、私には腑に落ちます。そこに神の介在があれば、生物がパソコンを作り出す人類にまで来ることだって解り易くなります。

    だから、神は居ると思けど無宗教という立場を採っています。
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