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【ボクタク】烏賀陽著『元原子力安全委員会委員長、班目春樹氏の証言』をめぐる対談【烏賀陽弘道×開沼博】
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【ボクタク】烏賀陽著『元原子力安全委員会委員長、班目春樹氏の証言』をめぐる対談【烏賀陽弘道×開沼博】

2013-07-31 23:00
    第四回『ボクタク』烏賀陽弘道著『元原子力安全委員会委員長、班目春樹氏の証言』をめぐる対談

    INDEX

    ■イントロダクション


    ■『斑目インタビュー』実現の事情


    ■斑目さんが「もっと話したかった」こと


    ■原子力行政は変われるか


    ■報道2.0の可能性


    ■当事者たちの物腰から見えてくるもの


    ■ニッポンの職業記者たちへ


    ■時代は「王・長嶋」から「野茂・イチロー」へ

    ********************


    ■イントロダクション


    烏賀陽弘道著『元原子力安全委員会委員長、班目春樹氏の証言』をめぐる対談


    東日本大震災という未曾有の災害。その本質をまったく別のものに変えてしまった福島第一原子力発電所事故に、独自の視点から切り込み続ける烏賀陽弘道が行った、原子力安全委員会の最後の委員長となった斑目春樹氏へのインタビュー。開沼博がその舞台裏を掘り下げる。


    ◎この対談について

    ・この対談は、2013年4月4日にニコニコチャンネルの生放送で配信された対談です。当日の内容は、Youtubeにもアップされています。

    こちら(http://youtu.be/TgseIbGsqRA)からご視聴いただけますので是非ご覧下さい。

    ・対談のベースになっている記事は、下記のwebサイトよりお読みいただけます。

    JBPRESS 烏賀陽弘道・連載『元原子力安全委員会委員長、班目春樹氏の証言』
    http://goo.gl/oVGlw


    ◎対談テキストについて

    ・対談内の人物表記は、(U)烏賀陽氏、(K)開沼氏 と表記しています。

    ・対談内容のテキスト化において、口語部分等内容の一部修正をしています。

    ・今回、表紙などEPUBの形式が変わっています。ご了承ください。


    ◎対談音声の聞き方について

    ・今回は対談音声はありません。テキストとYouTube動画にてお楽しみください。


    ◎推奨環境について

    ・『ボクタク』のePubファイルは推奨環境として、下記のリーダーでの動作確認を行っております。 (※各URLよりダウンロードできます。)


      *Readium【Windows】 http://goo.gl/6eN8k

      *Murasaki【Mac】 http://goo.gl/i0tLh

      *iBooks【iPhone・iPad】 https://ssl.apple.com/jp/apps/ibooks/

       (※またはitunesの検索機能から「iBooks」で検索ください。)


    ********************

    第四回『ボクタク』烏賀陽弘道著『元原子力安全委員会委員長、班目春樹氏の証言』をめぐる対談

     

    烏賀陽(U)
    開沼(K)


    ■『斑目インタビュー』実現の事情

    K「はい後半です、よろしくお願いします」

    U「よろしくお願いします」

    K「後半は烏賀陽さんの、JBPressサイトで烏賀陽、班目で検索すると出てくるであろう、4回シリーズの班目春樹元原子力安全委員会長のインタビューを取り上げます。いろいろと但し書きがあって、まず、班目さんの部下というか教え子に当たる(東大大学院教授の)岡本さんという人がインタビューをした本があって、それを(烏賀陽さんが)読んだからだったという話だったんですけども、読んでみて、そこで何か足りないなとか、この角度で突っ込みたいなってのがあったと思うんですけど」

    U「そもそも(本を読まなくても)インタビューしようと思っていたんですよ。というのはですね、当時3.11の時に首相官邸の中にいて、住民避難を決める場面とかに関わった人ってそんなに沢山はいないんです。せいぜい菅直人首相、官房長官、官房副長官、原子力安全委員長、安全保安院の人がパラパラ…みたいな、そんな感じで全部で10人いないんですよね。だったら全員総当りしちゃえ、みたいな感じで待ってたんですよ。誰か応じてくれる人がいないかなと。そうしたら班目さんの本が発売されて…『証言 班目春樹』というすごい名前なんですけど、ご本を出されたということは、何か仰りたいんだろうなと。つまり、取材を申し込んだら喋ってくれるかもしれないって希望が出てきたんですね。たまたま新潮社からの出版でしたんで、僕も新潮社から本出したことがあったんですよ。その時の編集者に連絡を取って、これ、話をつないでもらえるだろうか、と言ったらですね、上手くつながって、何の障害もなく斑目さんも受けてくださった。って話ですから、僕にとっては何の困難も問題もなく、夜回りとか何もしていないわけですよね。普通に電話してメールしたら出てきてくださった、ってことで、そういう苦労話が何もないんです。準備段階では」

    K「なるほど、これ最初に聞いちゃう質問じゃないかもしれないんですけど、(烏賀陽さんが記事を)書いて、斑目さん後悔してますかね」

    U「うーんとね、新潮社の担当編集者は、斑目さんの機嫌が悪いって、随分心配されてたんですよ。何を心配されていたかというと、海江田(元経産)大臣の悪口をさんざん仰ってましてね。それを、後から撤回したいと仰ったんですよ、斑目さんが。だけど、僕はそれはジャーナリストとしてできませんと、ジャーナリストに話すということは千人一万人読者がいる前で話したと同じことで、口から出たことをね、後から中に戻すことはできませんよと。まして事前にそれを介入しようとするっていうのは、(言わば)検閲なんで、むしろそっちの行為の方が問題だと思う、という風に突っぱねたんですね。それで機嫌を損ねちゃって、紹介してくれた新潮社としては筆者を怒らせちゃったわけなので、向こうは困っちゃうわけですね。で、僕は一計を案じて、海江田さんにちょっと個人的に連絡を取ってですね、個人的にというか…別の取材であったので、あの、こういう風に斑目さんが仰ってる、書いてる、出てるけれども、ご本人は口が滑ったというか、ちょっと暴言だったということで、心を痛めていらっしゃると伝えたら、海江田さんもそんなことは心配しないでくれと仰ったんで、新潮社に電話して、海江田さんは大丈夫だと、知ってますと言ったら、じゃあそれは大丈夫でしょうと、新潮社も機嫌を直して、で、斑目さんにも電話したんですよ。海江田さんはそんなに怒ってないと。むしろ今でも、班目先生のことは優れた学者だと思ってますよ、と仰ったんでそう伝えたんですね」

    K「なるほど」

    U「それでも斑目さんは、まだすごく怒ってて『いや君そう言うがね、海江田さんは私のことあんなにひどく書いてて…』って言うから、なるほどこれは、要するに僕に怒ってたというよりは、海江田さんにどうもカチンと来てたみたいです。海江田さんの本の中に、確かにそういうくだりがあるんですよ。斑目さんが、非常時に家に帰ってお風呂に入って寝てたと。それで自宅に電話して呼び戻したと。そしたら、みんなが二晩完全徹夜でヨレヨレになってるのに…二晩じゃないとか、そこはまあ議論になってるんですけど、斑目さんがこざっぱりした格好をして首相の執務室に入ってきて、悪びれもせずに座ったので、大したものだと思ったって、すごく皮肉たっぷりに書いてるんですよ。それを斑目さんはけしからんと言って怒ってるわけ」

    K「なるほど。いつ頃でしたっけ、家に帰ったのは」

    U「僕はね、もうメルトダウンしてるのに家帰って風呂入って、っていうのを(斑目さんは)全否定するんだと思ってたんですよ。『家には帰ってない』と言うのかなと。と思ったら、帰ったと仰るんですね。3月12日が明けて、13日の午前1時に帰ったと仰ってるんですよ」

    K「理由があるんですね」

    U「何かこう、動脈硬化の薬を飲んだっていう話だったので、いやあ大変ですね、って言いながら、そんなの奥さんに持ってきてもらえば…って思いながら聞いたんですね。だけどまあ、斑目先生はお風呂に入っても、気持ち悪くしてしょうがなかったと。いや、しかしメルトダウンしてると知ってるのにお風呂とか…僕も考えるんですけれども、そこで先生と議論してもしょうがないので、そうですか、と(受け止めました)。で、風呂には入れたんですか、と聞くと、入れましたと言う。それは良かったですね、とか言って、そのまま書くわけですね。そんなちょっと間抜けなくだりがいっぱい出てくるんですよ」

    K「うんうん、なるほど。しかしお風呂とか思っちゃうんですかねぇ非常時に。官邸の中にそんな施設ないのかな。水とか使えましたよね、(その時の)東京では」

    U「そうそうそう。官邸には、首相執務室にはね、シャワーもあるんですね。菅総理にシャワー使わせてくださいって言えばいいのに、って、まあそれは冗談なんですけど、斑目さんはそういう部分では割と正直に答えてくれた。だから、斑目さんにインタビューした時に、この人は記憶違いがあるかもしれないけど、基本的に嘘は言ってないなと思ったのは、認めると格好悪い話でも自分から言ってたんですよ。家帰って風呂入って寝てたら首相に怒られて、また呼び戻されたとか。あるいは、ここでは私は誤解してたと、ベントが進んでいると誤解してたと。何の根拠もなく誤解したって、自分のミスをね、自分から進んで3つぐらいまだ明らかになってない話を認めたんですよ。だから、この人は嘘は言ってないどころか無防備だなって感触はあったんです。斑目さんのインタビューを終えた時に、このインタビューは結構明け透けというか、あまりにも事実に近いことが出てるって確信、確証があったんですね」

    K「なるほどなるほど。そういうやり取りの中で、記事にもありますけれども、いくつかメールで後から問い直していると(いうことですね)。いろいろ聞きたいことって他にもあると思うんですよ。何でわざわざメールでした質問の中で洗い出されたんでしょうか」

    U「事前に班目さんに聞くべきことってのを…僕は、紙のノートで取材に行くんですけど、見開きの左側に聞くべきことをリストアップして、その右側に答えを書いていくわけ。聞くと(チェックして)潰していくわけですよね。ところが、班目さんのインタビューは思った以上に今まで知らなかった話ってのがボコボコ出てきたんですよ。僕が一番びっくりしたのは、ベントは上手くいってるっていう風に完全に思い込んでいたっていう話ですよね。で、その後で聞き直した話っていうのは全電源喪失、班目さんがね、福島第一原発が、電源がゼロになったのはどの時点なのかってのを思い違いしていたということなんですよ」

    K「ははあ」

    U「そういう新しく出てくる事実を、ええええ?!っていうのを必死に追いかけて、あっ、これはああだったし、ここの時点ではここまで分かっていたんだし、ってテトリスみたいに並べ替えるんです。それを頭の中でやってるうちに、そういえばこのノートを見ると、班目さんが、最初インタビュー開始5分後には『私は福島第一原発の現地に行くまで全電源がゼロだっていうのに気が付きませんでした』って言ってるんだけれども、インタビュー10分15分目では、それは前の日には気が付いてた、って話が出てくるんです。これ矛盾してないか?って話ですね。そういう風に事実をすべて網ですくった後に(見直してみると)、イカもエビもタコもワーッと入ってて、より分けてみたら、あれ? 何で伊勢海老が福島の近郊でって話があったりする。で、後でなぜ伊勢海老が獲れたんでしょう、って聞くわけですよ。そういうのはどうしても出ますね。とにかく今回みたいな大漁豊作のインタビューはね、知らなかった事実ってのが山ほど出てくるインタビューってのはね、その場ではどうしても追いつかなかったものってのが出てくるんですね」

    ********************

    ■斑目さんが「もっと話したかった」こと

    K「なるほど、それはあれですかね。本人もあんまり整理がついてないんですかね。それまでにも相当喋ってるはずですよね。事故調なり、いろんな所で」
     
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