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沙耶の唄のお話
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沙耶の唄のお話

2015-12-30 18:59
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沙耶の唄について感想、考察、妄想いろいろ。


ネタバレ全開の記事なのでご注意ください。また、各エンドの呼称については正式な名称が分からないため、ネット上でよく見られる呼称に沿っています。ちなみに初プレイ後に再度プレイしてから書いています。耕司ENDだけは時間とメンタルの都合で再プレイはまだしていません。


各ENDについて


【病院END】 
 沙耶と郁紀二人の恋が悲恋として終わってしまうエンディング。最も切ない終わり方であると思う。郁紀を治してしまえばまた孤独な状態に戻ってしまうと分かっていつつも彼のためを考え、治す方法を見つけ進言する沙耶が健気でとても切ない。郁紀が今の状態のままならずっと自分だけを見てもらうことができるのに沙耶はそれをしなかった。自分はプレイ時、沙耶というキャラクターは人外の存在でありながら、あまりにも人間らしく、また人間を理解しているという印象を受けた。
 このエンディングには、始めの選択肢で元の生活を取り戻したいと答えると進むことになるが、その時の郁紀の受け答えはほぼ反射的にそう答えてしまったという印象を受ける。現に、その後郁紀は悩み、沙耶に言葉を掛けようとするが、それは沙耶自身により阻まれてしまう。おそらく、反射的に言葉と出てしまうということは郁紀の心の何処かには元の生活を取り戻したいと言う願望があるということであり、それを感じ取った場合沙耶は郁紀と別れる決意をしていたのではないか。郁紀のことを愛するが故に自分のせいで彼がおかしくなっていくことを恐れ、また、人間としての生活を送らせようとしたのだろう。
 郁紀を治し彼の前から消えてしまった沙耶だが、エンディングのラストシーンではなんだかんだ寂しくなって会いに来てしまう。可愛い。ここでの扉越しの携帯電話によるやりとりは本当に見ていて胸が締め付けられるようだった。自身の姿も声も晒すことを恥じらう沙耶はどうしようもなく乙女で、沙耶が作中で一番かわいいシーンってここなのじゃないかと思うほどでもある。
 エンディングテーマの「ガラスのくつ」はこのエンディングに非常にマッチしていると思う。沙耶は愛する人のためを想って魔法を自ら解いたのである。


【耕司END】
 
1つめの選択肢で"もういらない"を選択するとその後も物語が続く。この選択肢はいわばより人の道を踏み外していくかの転換点であるように感じた。その後の郁紀はこれまでと比べ、厄介物になる友人たちを自ら排除しようという意思が強まり、人を殺すことへの躊躇いも徐々になくなっていく。
 この物語の面白い点の1つはそういう人の価値観から見たら狂っている部分と、沙耶と郁紀二人の愛の生活が見事に同居して描かれているところにあると思う。邪魔者を消す算段を建てる郁紀が沙耶の知恵を借りようかと思うが、自分でなんとかして男らしいいいところ沙耶に見せようと思うところ等は隣り合わせの微笑ましさと狂気を感じてなんだか面白く思ってしまう。
 また、このエンディングでは郁紀の親友耕司の視点から描写が多く。触れてはいけない怪異に触れてしまうことになるが、大切なものを取り戻すために戦いを挑む人間の視点が描かれている。郁紀にとってはかけがえなのない存在である沙耶も、耕司から見れば親友を狂わせた化け物でしかないのである。触れるべきではない存在のことを知ってしまい、ただ1発だけの弾の入った拳銃を常に枕元に置いている耕司の結末はとてもクトゥルフ系のホラーらしく、ジャンルサスペンスホラーの本作において自分が唯一ホラーらしい終わり方をしたと感じたエンディングである。
 死に際、必死に郁紀へと近づき最後まで繋がって死んでいった沙耶の愛情と、それを見てついには自分がなにも取り戻せなかったことを悟った耕司の絶望を同時に見た時の気持ちはとてもやるせなかった。ここでのシーンは耕司の視点であるため、沙耶の姿や声は人間のそれとして描写されていないが、そんなことは関係なく彼女のこれまでのことを見ていると素直に可哀想だと感じたし、液体窒素を掛けられショットガンで破壊されるのを見た時はディスプレイを叩き割りたい気持だった。


【開花END】
 
本作のエンディング3つには特にこれがTRUEエンドであるといった決まりはないが、あえてどれか一つをTRUEとするのならば、自分はこのエンディングを推したい。開花シーンのCGは素晴らしく綺麗だったし、沙耶自身の生物としてのルーツも明らかになり、少し切ない終わり方であるかもしれないが、たしかな満足感もまた得られた。
 沙耶の種族のことや、なぜ沙耶はあんなにも女の子なのかという理由が奥涯教授の記録から明らかになるが、沙耶の侵略者としての性質、繁殖という本能、人間は恋愛をすること、これらが混ざり合って生まれた沙耶という少女。この物語はSFであり、ホラーであり、そして彼女の恋い焦がれたラブロマンスであったとたしかに思う。
 奥涯教授は沙耶に対し父親のように接しており、沙耶が自らを女としたように彼もまた父性に目覚めていたのではないかと思う。遺言において娘が恋をし、その先の答を見つけることを願うさまは父親としての愛情を感じた。素の状態の沙耶を教育し愛した奥涯教授はまさに狂人の鏡ともいえる人物であろう、彼の記録や想いと重ねて見ていくと沙耶の開花シーンは嫁に行く娘を見るような気持ちを抱くこともできる。その結果現在の人類の世界は滅びを迎えてしまうわけだが、まあそれはそれこれはこれ。自分はこういったただ誰かのためだけに世界を巻き込むような話が好きなのかもしれない、もちろん主人公やヒロインを好きな場合に限るが、世界は滅んじゃうけど二人が幸せならいいか! とかそういうやつである。
 このエンディングでは若干急展開なこととあまり多くを明示しなかったことで自分の中に2つ疑問が残った。1つめは「結局沙耶はどうなったのか」である。開花シーンの印象を率直に捉えれば死んでしまったと考えるのが自然と思えてしまいとても悲しい。明確に死んだと言われているわけではないが、"悲しいほどに軽くなった躯"、"最後のプレゼント"という表現や、その後泣く郁紀などのことを考えるとそうなのではないかと。生きている説で考えるのならば、種子を飛ばし種の書き換えを終えたあと再び目を醒ます。躯が軽くなったのは単に出産を終えたからと前向きに考えることもできる。初めは沙耶という個が失われてしまったらたとえ住みやすい世界になっても残された郁紀が可哀想だと感じたが、沙耶は全て分かっていたからこそこの答を出したのではないかと今では思う。現在の地球上、人間社会にはどうやっても二人の居場所は存在しない、今のような生活を続けていてもいずれ限界、終わりは訪れてしまう。もし、沙耶がその身一つで惑星を征服してしまえるような、もしくは完全に人間社会に溶け込んで生きていけるような生物だったらよかったであろう。しかし、それはできず現状の危うさ、そして終わりの訪れた時の郁紀の末路、全て理解し考えたからこそ沙耶は頑張ることを決めた、そう思えてならない。でも、やっぱり二人一緒に並んで生きていけないのは悲しいので、個人的には公式サイトの沙耶の「おかえり」に繋がる説を推していきたい。
 2つめは「変異後の世界はどうなったのか」である。こちらに関してはほとんどが憶測や想像になってしまうが、まず、郁紀にとっては周りが綺麗な世界に見えるようになる。書き換えが行われ沙耶の眷属になったものたちがどう見えるのかは分からない。元々のその人の姿に見えるのか、ミニ沙耶なのか、沙耶っぽい面影のある人なのか。また、郁紀自身も他の人間同様書き換えを行われたのかであるが、沙耶は郁紀だけは元の姿で残しているのではないかと思った。もしそうなっても不可抗力だが、あの沙耶が無断で郁紀の体を改造するとはどうも考えにくいからだ、そうなると郁紀は周り眷属たちから奇異の目で見られてしまうような気がするが、その辺りは沙耶がちゃんと細工を施しているはずだ。新しい世界での郁紀の立ち位置を彼女がどういったものにしようとしたのかは分からないが、それでなければ沙耶と郁紀のためだけの世界足り得ないであろう。
 自分はこの開花ENDについて考える中で、魔法陣グルグルにおける"恋するハート"を思い出した。恋の情熱に胸を焦がし愛が世界を覆うというところに共通点を感じた。世界にもたらす結果は、いいようもないほど異なるがそこがまた面白くもあり、だからこその"世界を侵す恋"なのだろう。


沙耶というキャラクターとその他の印象深いシーンについて


【沙耶】
 本作のヒロイン。異世界よりの人ならざる存在。
 沙耶については元々ゲームをプレイする前から人外の存在であることは知っていていたし、むしろそこ目当てでプレイしたので沙耶が作中である程度非道な行いをするであろうことは予想していた。はたして、沙耶はたしかに酷いこともしていたが率直な感想としては思っていたのよりも何倍も良い子で乙女だった。彼女は人よりも高次の存在でありながら常に郁紀のことを第一に考えていた、だからこそ自身の与える彼の変化に恐れ、時に身を引き、彼が望めばどこまで連れ添い、全てをあげたのであろう、人ならざるものでありながら、どこまで人らしく女の子らしい彼女だったからこそ。
 沙耶は本作の主要登場人物の中で唯一自身の視点となるシーンを持たない。つまり沙耶の視点でプレイヤーが物語を見ることはなく、沙耶の心の声が明確に描写される機会はないのだ。そこで、再プレイ時は沙耶の心理を考えながらプレイした。


【食事を見られちゃったシーン】
 
食事を郁紀に見られ焦る様が可愛らしい。沙耶はきっと自分の食事を郁紀に見られたら拒絶されると思っていたのだろう。郁紀の家へ行くことに迷いがあったのも、自身のことを知られて拒絶されるのを恐れたが故の迷いだったのかもしれない。さっき狩り殺した人間を食べていたシーンなのに二人だけの世界になるとえらく微笑ましいやりとりに感じてしまうのが倒錯的でお気に入りのシーン。沙耶は自身の行いで人間の常識の範疇から外れることは、郁紀には見せないように配慮していた。しかし、郁紀自身が沙耶の領域に踏み込んでいくさまは彼が狂っていくのを感じさせると同時に、これで二人一緒に○○できるよかったね! といった感想を抱かせるのである。


【鈴見のおっさんにレイプされるシーン】
 
ある意味で一番の衝撃シーン。正直レイプされた原因は沙耶の自業自得なのだが、理屈の問題ではなく「おっさん許せねえ」と思ってしまった。その後郁紀との絆を再認するなかで、沙耶は自身の郁紀への恋を理解できたのかなと思う。それまではある意味恋に恋する状態だったともいえるかもしれないし、だからこそすぐさま郁紀の脳を治せることも切り出したのではないかと感じた。 
 エロゲーについては詳しくないが、レイプされた原因が自業自得なヒロインなんてそうそういない気がしてならない。


【瑶をペットにするシーン】
 
沙耶の黒いところ全開。瑶をああしたのは瑶が郁紀と恋人になるのかどうかの微妙な関係を持っていたことが気に食わなかったからなのだろうか。しかし、ペット化した瑶と郁紀の性行為には寛容であるのが面白い。沙耶にとってその辺りは感情論より理屈で、沙耶は恋人で瑶はペットだからということなのだろう。
 人間の彼女で例えるならエロ本を見つけても怒らないタイプ。それはそれ、これはこれ。


結局このゲームって純愛モノなの?


 本作について、よく沙耶の唄は純愛ストーリーだという声を聞く。正直なところどういうものが純愛モノというのか正確には分からないので確固たる理由づけはできないが、プレイしてみての直感としてはたしかに純愛ストーリーだったと思う。「あの二人には他に選択肢がなかったからああなったのであった」という意見もあるが、自分はあの二人に他の選択肢があっても他者に流れることはないと感じた。結局は感じ方の問題になってしまうが、病院ENDのあとの沙耶はやろうと思えば他の人間の脳を弄ってまた郁紀としたような関係を築けるかもしれないが彼女の純情さゆえにそれをするとはどうしても思うことができない。
 また、郁紀が沙耶の真の姿をも愛すことができるなら…という話で、これはなかなか難しい問題だと思う。実際、自分の感想としては郁紀が沙耶の真の姿でも愛せると100%言い切れる自信はない、彼自身作中でかつての友人たちをその五感が原因で嫌悪するに至っているからだ。もし、それができた場合郁紀は奥涯教授並みの狂人になったことになるのかもしれないが、その狂いをもって愛の世界に戻ることもまた純愛なのかもしれない。
 結局のところ、自分の感想としては沙耶から郁紀に対する愛が一番の純愛だったのではないかと思う。また、二人の関係は純愛であり共依存でもあったと思う。


おまけ ありそうだと思ったけどなかったEND

①沙耶の機嫌を損ねて殺されるEND
 →プレイ後だと、あるわけないよねごめんと思う。

②郁紀の脳を治したあと沙耶が人間(もしくは人型)になるEND
 →これができれば一番のハッピーエンドな気もするけどできないのね。
  そう考えるとニトブラの沙耶は本編の沙耶にとっては理想的な形なのかもしれない。

③郁紀を肉塊にして一緒に暮らすEND
 →割と上手くいきそうだけど、結局本編での逃避行とあまり変わらない? だからこそ    沙耶は郁紀に惑星をあげたのかも。


まとめ
 
全体の感想としては、本当にやってよかったと思えるゲームでした。自分的には沙耶と郁紀にかなり肩入れしちゃってるところがあるので感想とかもかなりそっち寄りになってると思いますが、郁紀の友人や先生などもみんないいキャラだと思います。再プレイ時はなんだかんだで日常を壊されてしまった彼らにも同情しました。なので耕司の最期で(耕司もいいやつだったのにな…)とか感傷に浸って直後に沙耶の開花シーンでその耕司を殺した側に感情移入するみたいな忙しいプレイをしていました。あと、沙耶は本当に可愛かったです。この手のゲームを初めてプレイした自分がいうのもなんですが、割と本気で理想のヒロイン像なんじゃないかと。こんなにいろんな要素が同居してそれらが一丸となって魅力を発しているキャラってなかなかいないです。エロゲーでありながら作中唯一のヒロインを務めているだけはあるなと思いました。

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なんだろう。沙那ってバイオのエヴリンみたい。
35ヶ月前
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心のこもったレビュー見せてもらえてありがとう
非常に価値のある作品だと思っているので嬉しいです。沙耶の主人公への言葉と曲がとても良く、ほんとにヤバイです。

ただ、主人公の知覚で不快でない存在を増やして主人公を助けたい沙耶が、瑶を嫉妬から体だけ変える設定を入れて沙耶という種の社会的人格を貶める必要は無かったと思うのでそこは設定に受け入れていません。




1ヶ月前
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