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2025年8月の記事 4件

<菊地成孔の日記 2025年8月25日記す>

 腰こそ鍼灸とストレッチで元に戻ったが、喉がまだ酷く、というか医者が「菊地さんねえ、今、コロナ禍なんですよ」と言ったのには、流石にほんの少々は驚いた。発熱しないコロナ、軽いインフルエンザ、しつこい百日咳、結構きつい咳喘息、謎の寒暖差や湿度差(つまりエアコン起因の)をアレルゲンとするアレルギー性鼻炎、等々、今、耳鼻科と内科が大儲けのようだ。先日、精神科に薬を貰いに行ったらムッチャクチャ空いてて、元分析医に「神経症の人もお盆は休むんですかね?」と言ったら「うーん。それは休むでしょう。先祖の霊魂が帰ってくるんですからねえ」「敏感になりますよね、具合悪い人の方が、そういうのに」「っていうか、コロナが流行ってるでしょう。喉痛くなると心療内科どころじゃなくなるんですよ」「はははは」とか言っていた所だった。    結局、一日中寝る(下手したら食事も取らず)。という、ワーカホリカーの天国というか地獄というか、贅沢の極まで行ったのはイベント後1日だけで、2日目には食事と排泄には起きたし、3日目からは猛然とアクセルをイワせて、コロンボ本を1日に2話ずつレビューを書き(嘘、それは理念に過ぎず、まだ日に1話ペース!しかし面白いので読んでほしい。というか、上下で合わせ技のデザインになってるんで、下巻を買って面白かった人には上巻を買い直してほしい。というかそもそも「刑事コロンボ」を全部見てほしい。それがスタートラインなので。これからはそういう時代だ)、ストレッチやスクワットも再開し、そしてワシントン講和条約に調印5時間後、日米安保条約(ゆっきゅん君とのプライベートスーパースター)に単独でサインした吉田茂こと菊地成孔に対し「あれは間違っていなかった」と自分に強く言い聞かせる毎日(もう新音楽もなんもなく「プライベートスーパースターにやられました」「とてもすごい良い!」といった反響でPCが爆発しそうなので。そんなに好きか青春っぽいロックが笑。そうか、好きか笑)。  

<菊地成孔の日記 2025年8月22日記す>

 僕が電影と少年CQの2人から、直接、活動の終了を聞かされたのは、ちょっと前までビブグルマンを持っていた銀座の優れたワインバー「ラ・ヌガ(まあ、あれですよ「シノワ」のカジュアル店です)」でのことだった。    僕が彼らの世代の話を、正しく伝わるように書いたり話したりするのは難しい。苦言を呈しているように聞こえかねないからだ。例えば彼らは、何を食わせても飲ませても「うわー!超うまいっすねえコレ!」とか絶対に言わない。僕はそこが好きだ。孫が好きな感覚に相違ないと思われる。    彼らはそれを「ハッピーエンド」と呼ぶことにした。古来、音楽活動をしている組織の活動終結は「解散」を始め(「解散」は「バンド活動の終了」を直接指す言葉ではない。一時的なジョブの終了を指す、元々軍事用語だった筈のこの言葉が、いつ、あらゆる文化的な集団の活動終結を指すアナロジーとして指名されたか=最初に「解散」したバンドは何か?僕は知らないけれども)、「卒業」とか「散開」とか、色々なワードが付与されてきたが、それらは全て「解散」に従属的な、即ち漢字二文字だったので「ハッピーエンドするんです」と言われた時、事実よりもすごい驚いてしまい、ボルドーの赤でちょっと咽せたまま「ハ、、、ごほ、、、ハッピーごほ、、、失礼、ハッピーエンドですか。なるほど」と言った。ゆっきゅん君はボルドーグラスが面白いほど似合っていた。  

<菊地成孔の日記 2025年8月10日記す>

 さっきまで長崎の方々が<我々で最後にして欲しい>という、誤解を恐れずに言えば、人類史上で最強のパンチラインを繰り出しておられ、長崎で投下 / 使用の歴史を終え、北朝鮮で拡散が終わったとする(絶対に終わらないが。現在地球上の核弾頭数は、冷戦が今よりキワくて、核弾頭テクノロジーが今より牧歌的だった頃の7万とかいう、馬鹿げた数字から比べると、2万とかに落ちている。あくまで「核弾頭数」は。しかし、軍産学一致体制の確立により、核開発や核利用=平和利用も軍事利用も併せ、参入企業の数は桁違いに上がっているのである。最終的には<地球に核弾頭1つ>の世界が来た後、<地球上から核弾頭は無くなりました>という時代は来る可能性がゼロではない。弾頭を飛来物に搭載し、目的地で爆発させなくても良くなる可能性があるので。カッコ内が長くてごめん今さならながら)ならば、文字通り、核兵器の歴史は地球をぐるっと一回りして、至近距離にスタートとゴールがあったことになる訳だ。    が、いずれにせよあと4~5日すれば、終戦記念日がやってきて、年に一度の祭りのように、南方戦線、独ソ戦のスターリングラード市街戦、等々、「どれだけ戦争が悲惨であるか」を発信し、我が国ではその「強い酒」である戦争の記憶(そのほとんどが特攻隊と南方)のチェイサーとして甲子園球児、の爽やかさが添えられている。旧日本軍のあらゆる意匠が施されているのが甲子園球児であることは間違いない。    坊主頭とか行進とか、ラッパの応援とか、制服とか、誰でもわかるやつではない。例えば今をときめきメモリアルの大谷翔平が「二刀流」という時、野球音痴(単なる音痴も兼ねる場合がある)は、「え?野球って、ピッチャーでも打順って回ってくる、、、よね?」的な軽い「?」状態になる。    「え?違うの?」ぐらいに思った人、いたでしょ今笑。<大リーグが>じゃなくて、プロの野球というのは、ピッチャーには打順は回ってこないんですよサブカルばっかりの皆さーん。もう無くなりますよサブカルチャー!!今のうちマッチングアプリで次を探しておいてください!!   

<菊地成孔の日記 2025年8月7日記す>

 野暮用とは言ったもんで、粋な用事なんてない。初詣に行けたのもギリギリだったのだが、その後も野暮で無粋な用事(勤労のことですよ)ばかりが続き、もうどうせくたばり待ちの人生だし、ちったあ粋な事でもしたらよかろうにとも思うのだが、もうこの国全体、というか、人類全体が粋であることを停止してしまっている現在、それはつまり、浴衣と草履とカンカン帽ぐらいは持っているし、旨いかき氷を出す団子屋も近所にある。    エロいことでさえ良いのだ。例えばうら若き女性に猿轡、お縄をかけて部屋の真ん中に転がし、それと街の喧騒を肴に冷やした焼酎をぐい呑みでやるとか。しかしそんなものは全てもうコスプレに過ぎない。粋のコスプレも老人のコスプレも無惨だ。というか、20世紀のコスプレはもうやめた方が良い。1920年代に19世紀のコスプレイヤーは山ほどいた。彼らは皆無惨だった。2020年代に20世紀のコスプレをしても、それは100年後の無惨に決まっているのだ。    とか何とか、60過ぎたら怪我や病気に恵まれ、体の自由もどんどん奪われて行く中、生まれ持ってのワーカホリックがやや重症化していることに気づき、しかしワーカホリックの始原はおそらく直立猿人からだろうと思われ(直立したので、忙しくしていないと落ち着かなくなったのである。簡単な話だよね。チンパンジーの真似をすればわかる。労働なんかする気がなくなる)、幸にして20世紀のコスプレではないのでセーフ。    とまれ粋にだって通時性はあろうと言うもの(しかし、「共時性」って、ソシュールとユングで術語の訳語が全く同じって良いのかね?と未だに思っているのだけれど、これこそ20世紀だよね)、粋の現在地はどういったものか? <そんなことは考えてわかるものではない>とか言いそうでしょ。全然違うのである。しっかり考えるべき話なのだ。しかし分からない。うーん。あれかな。これかな。  

ビュロ菊だより

「ポップ・アナリーゼ」の公開授業(動画)、エッセイ(グルメと映画)、日記「菊地成孔の一週間」など、さまざまなコンテンツがアップロードされる「ビュロ菊だより」は、不定期更新です。

著者イメージ

菊地成孔

音楽家/文筆家/音楽講師 ジャズメンとして活動/思想の軸足をジャズミュージックに置きながらも、ジャンル横断的な音楽/著述活動を旺盛に展開し、ラジオ/テレビ番組でのナヴィゲーター、選曲家、批評家、ファッションブランドとのコラボレーター、映画/テレビの音楽監督、プロデューサー、パーティーオーガナイザー等々としても評価が高い。

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