• このエントリーをはてなブックマークに追加
<菊地成孔の日記 2023年6月9日 午後1時記す>
閉じる
閉じる

新しい記事を投稿しました。シェアして読者に伝えましょう

×

<菊地成孔の日記 2023年6月9日 午後1時記す>

2023-06-09 18:00
  • 31

      「生まれて初めてづくしの旅の話(最終回)」 


 

 いつもペペトルメントアスカラールのステージMCで言うように、嫉妬と自慢はいけない。これは満州鉄道の警備員というバイトを、生涯で僅か6年間だけやった以外は、ずっと板前で、死ぬまで板前だった父親が、唯一遺したウィズダムなので、一生忘れないだろう。嫉妬すると、やがてされるようになる。自慢すると、やがてされるようになる。その結果どうなるかといえば「自慢が過ぎると前から」そして「嫉妬が過ぎると後ろから」「刺されるから」。という話だ。



 

 このウィズダムがあのクソ親父にしては良くできているーー



 

(推測だが、きっとこれは、僕の守護神である、父方のお爺ちゃんからクソ親父に伝えられたものを、クソ親父が、さも自分で身につけたみたいな顔で僕に授けたのである。やはりお爺ちゃん=胃癌で、四十六で亡くなったが、大変なカリスマ持ちで、陽気な正義感で、彼にどれだけ抱腹絶倒のエピソードがあったか、僕は、出入りの魚屋とか酒屋、近所の店の大旦那たちから嫌という程聞かされた。銚子市が、東京大空襲の残し球をばら撒かれて焦土と化し=歓楽街から駅舎が見たという、特に歓楽街の人々はメンタルがダウンした。お爺ちゃんは、なんとかやっと食用の馬が一頭、市場に届いた時、屠殺させずに、家のタンスに仕舞い込んであった、セレモニー用の軍服と軍刀の鞘だけ下げ、古物商から買った戦国時代の兜を被って、馬にも魚網やら何やらで作った行進用の衣装をこしらえ、それに乗り、歌を歌い、鞭で指揮をとりながら、歓楽街から商店街へと続く焦土を行進し、街の人々はゲラゲラ笑ったり泣いたりしながら、何百人も付いてきたそうだ。そして行進が終わると、お爺ちゃんは馬にキスをいっぱいしてから、解体し、内臓も綺麗にやって、行進についてきた人々のために馬鍋を作った。戦後、界隈いちの大店になった酒屋の店主は「丁稚奉公の頃だったが、後にも先にも、馬があんなに美味いと思ったことはない。ナルちゃんが生まれるずっと前に亡くなったが、寝る前には必ず、お爺ちゃんに話しかけてから寝なさい」と言って一葉の写真をくれた。元、廓の女将だった老女は「お爺ちゃんは、トンボが切れてね=バク宙ができる)そこらの通りで船方でもヤクザでもない普通の人たちがよ、喧嘩したりすっと、近くまで行って、「やめろー!」って、でっけえ声で叫んでね、孫悟空みたいにトンボ切ったよ。そうすっと、誰だって大笑いになってよ。喧嘩してたことなんか忘れちまうだよ」と、目を細めていった。どう考えてもお爺ちゃんはキチガイだったと思う笑)



 

 ーーのは、「嫉妬はされてもするな」とか「自慢はされてもするな」とかいう、セコく、ありきたりな教えではない事だ。「自慢は前から刺され、嫉妬は後ろから刺される」というのは、原理に属することだと思う。



 

 なので、後ろから刺されるリスクを承知で、滅多にしない自慢をするが、僕は角川春樹に、直接「成孔、伊勢神宮なんて観光地だぜ。それよりお前よう、天河神社知ってるか?あそこで護摩炊くときはもうお前よう、夜中から炊き始めて朝まで炊くんだよ。もう若けえヒッピーがいっぱい来てて、全員マッパだよ。マッパ。それで、片っぱしからフリーセックスしちゃうんだ。ほんとだぜ。すんごいんだよお前、成孔よう。うっはっはっはっは」と言われ、肩を組まれてビールを注がれた男だ。



 

 僕は「いやあ角川先生(頭を思いっきりしばきながら「先生はやめろ!」と叫んだ)、痛ってー。フリーセックスとかトランスとかには僕興味ないんですよ。お伊勢さんは、天照大神を祀ってある、全国の神道のネットワークの、プロトコル作ったような中心地でしょう。先生が(頭を思いっきりしばきながら「先生っていうなバカ!」と叫んだ)痛ってー。おっしゃるように、観光地ですけど、それ言ったら最初から観光地ですよ。観光地が聖地ってえのが、良いんじゃないですか?」と言った。 



 
この記事は有料です。記事を購読すると、続きをお読みいただけます。
ニコニコポイントで購入

続きを読みたい方は、ニコニコポイントで記事を購入できます。

入会して購読

この記事は過去記事の為、今入会しても読めません。ニコニコポイントでご購入下さい。

コメント コメントを書く
他21件のコメントを表示
userPhoto 菊地成孔(著者)

>>24

 いやあ素晴らしいですね!どんどんやってみてください!

No.28 17ヶ月前
userPhoto 菊地成孔(著者)

>>25

 ご入会ありがといございます!あと、ピアノは、どうみても「ちゃんと演奏」してないです笑

No.29 17ヶ月前

>>8
軽いノリで言って申し訳ないです。

動画アップうれしいです。
ピアノ演奏を見ていると、ついつい足元が気になってしまいました。ぱっと見balenciagaかなと思ったのですが、スニーカーには疎く分かりませんでした。是非、教えていただければ…。

No.30 17ヶ月前
userPhoto 菊地成孔(著者)

>>30

 REVOLTと言う、ラン / ウォークに特化したメーカーですね。ニューバランスは境内の砂利道とかぬかるみとか歩くので、ホテル内は履き替えていました。

No.31 17ヶ月前
userPhoto 菊地成孔(著者)

>>31

 ちょっと調べたらイタリアのメーカーで、「ラン&ラナーキー(ランとアナーキーの接続語でしょうねこれは)アティテュード」とそこら中に書いてあります。そっちがメーカー名かもしれません。リボルトって言うのも、まあ、革命や反逆のことなんで、そういう感じなんでしょうね。B-2ndにあったんですよ笑

No.32 17ヶ月前
userPhoto 菊地成孔(著者)

>>32

 ココでした笑

 run of
https://run-of.com/en/


No.33 17ヶ月前

>>33
お手間を取らせて申し訳ありません。
お答えして頂きありがとうございます。
イタリアのメーカーなのですね。なるほど。。
どこかで見たことあるようなのに、見たことのないデザインで気になってしまいました。

話が逸れてしまうのですが、色々なメディアで見掛ける度に服装でがらりとイメージが違い、この人って何してる人なんだろうと思ったのが、菊地さんに興味を持つきっかけでした。
6月以降に続く活動楽しみにしています。

No.34 17ヶ月前

>>27
いやあ、うっかりしてました笑。

No.35 17ヶ月前

ふたたび個人として?(新音楽制作工房は別として)ツイッターの国に降り立っておられたのですね。
日記を読み終えてようやく、あれ?ツイッターの件、新音楽のアカウントの話ではないっぽいぞと理解して検索し
ましたが、完全に乗り遅れておりました。(結果的によかったのかもしれませんが笑)

No.36 17ヶ月前
userPhoto 菊地成孔(著者)

>>36

 あれは代表職として、とっくに始めています笑。ツイッターやってる。とはいえないようなもんですけどね。「岸辺」という文字が入るといろんな数が100倍になるんで、もううんざりですあれも笑(サイトを作って辞める予定)

No.37 17ヶ月前
コメントを書く
コメントをするにはログインして下さい。