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　丹生谷発言は僕も読みました。あの頃、あらゆる「モノ言う人々」に、言葉を搾り取るぐらい「言わせた」松本ですが、僕がもっともインパクトを受けたのは、根本敬で、例のあの筆致で松本の少年時代を漫画で描いて、松本は極貧であり、二宮尊徳よろしく、下を向いて「りんごが一個、りんごが一個、りんごが一個」と、怨念のように呟いている、という奴で、それが麻原彰晃の、仏教的な念仏＝題目＝反復される言葉、の原点である。というモノでした。空腹を満たしたい時に、林檎を一個一個数える、というセンスは、根本敬が、あらゆる毒性に対して、「あたって苦しむ快感」を求める、生真面目なマゾヒストであると強く感じたモノです（ちょっと前風に言うと、それを「拗らせた」のが村崎百郎でしょうね）。根本敬から吉田豪に。という選手交代が、クリーニングなのか何なのかわかりませんが、仲良しなんで名前で言うと豪ちゃんの結離婚は、「現代的な交代劇があろうと、ポジションはポジションなのだな」とも思いました。

　そもそも、「ノストラダムスの予言が当たらなかった」「２０００年問題が起こらなかった」という絶妙のタッグ（このタッグかなり絶妙だと思うんですよね）を退けたことで、いわゆる世紀末的な現象が起こらなかった、とでもするような自主規制が（要するに、普通に「オウムと震災が日本の世紀末」とするのは容易いのに。また「オウムは２０世紀末の＜学生運動＞だった」という、特にすげえ、とかではないけれども、普通に思いつきそうなラインも、徹底的に自主規制された気がします）、現代の、ご指摘にある「無反応」や「セルフではないリストカッティング依存」の、そもそものスタートだった気がしています。

　「あんなに、いたずらに、無軌道に、デフレぐらいにばら撒かれていた」８０年台の「毒」が、いつから、何を契機に規制対象に逆転したのか？ということを考えるに、やはり２０世紀末のオウムと震災を＜世紀末的＞と言えなかったこと、が起点であるとすると（それが起点であること自体は、まあまあどうでもいいんだけど）僕今、生活していて、すごく「渋谷系」の再燃を感じるんですよね、日記文中にある「９０年代ナットデッド現役組」みたいな。

　んで、何でもそうなんですけど、周回や反復は、当事者と非当事者の複合体になるので、要するに「憧れせ世代」の営みは良いんですよ。憧れなんで、でも今、たとえば地下アイドルさんとかが渋谷系的になったとして、邪気なく普通に喜ぶ人々の中には「当事者世代（４〜５０代）」がいるわけで、ちょっと僕、彼らに移入するのキツいんですよね笑。

　それは自主規制によって、ギミック以上の、玩具でもスピリットでもあった「毒」を毒消した人々なのに関わらず、胸を張って「毒はいけない、だからみんなで解毒剤を買って振り撒いたんだ」とかじゃなく、「え？別に消毒も解毒もしてないんですけど」というアティテュードのまま、現代人にバトンをパスしてしまっているからで、彼らはアレクセイゲルマンを観ていないでしょうし、ゴルバチョフからエリツィンからプーチンへの流れすらさほど帰納しておらず、ベルリンの壁が壊れたことしか心に焼き付けてない、大人でも子供でも親でも子でもない人たちで、ご指摘の通り、病院で吸入器を当て、死にゆくアメリカ人のSNSを見たからパンデミックを深刻に思うとか、ガザで死にかけている子供たちを見て、イズラエルとパレスティナの問題に向き合うとか、要するにインパクトで動くだけの人たちなわけですが、僕が「ユニセフ組」と呼んでいる黒柳徹子やオードリーヘップバーンや藤原紀香などともまた違う、嫌な感じの諧謔精神が引くほどの正論とくっついている、という、まあデザインみたいな」話ですけれどもね。